日本放送映画藝術大賞ブログより、黄金を抱いて翔べの評価の記事がありましたので、一部お借りしました。
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映画『黄金を抱いて翔べ』を鑑賞・・・・実力派の男たちが躍動する銀行泥棒計画。息を呑む衝撃とパワフルな格闘、金塊と共に翔ぼうとした、幸田の眼差しの先に見えたものは・・・・。
モモの部分を。
こうして、多くの女性客が目当てにしている東方神起のチャンミンが登場。
だが、韓流スターに心ときめかせる暇などない映画であることだけは申し上げておく。
で、このチャンミンがなかなかハマっていて、逼迫した感情がよく出ているし、
劇中では北川が脱藩と表現し、「坂本龍馬じゃないんだから・・・・」とツッコミもあったが、
要するに北朝鮮を脱して、逆に裏切り者として追われている身であったのだ。
しかも、冒頭で射殺した相手は、自分の兄だというからビックリだ。
実の兄が、祖国の命令を受けて、自分の弟を狙ってきたという暗い背景。
そして、兄に殺される前に、先手を打ったということになるが、
貧窮した生活事情を思わせる幼少期の回想シーンも含めて、
彼が背負っているこれまでの生い立ちは、十分に壮絶なものであり、膨らみを見せる。
だが、逆にその暗い影については、もっと掘り込んでもらいたかったというのもある。
銀行に乗り込む前の教会のシーンで受け止める感情もまた違っただろう。
彼はちなみにモモという愛称で呼ばれている。
どこから来たのかわからない、どんぶらこ~どんぶらこ~と川を流れてきた桃太郎。
そんなところから名付けられていて、ちょっと洒落ているなあとも感じる。
誰かに狙われていると、常に警戒しながら、息を潜めて生きている彼が、
何よりも本作全体に立ち込めるハラハラドキドキ感を演出してくれる。
序盤戦においても、何者かに襲撃され、自分のアパートの部屋だけを爆破。
仲間に引き入れようとしていた北川と幸田が救出しようとして、銃撃戦になる。
だが、この爆破によって、やはりコイツは、間違いなくプロだと幸田は確信する。
ひとまず、ジイちゃんの家に転がり込むわけですが、これがまた次なる厄介事を生む。
いきなりのドンパチにビビりまくっている近隣の住民の反応とか、なかなかリアルだ。
だが、この映画、先ほどのチャンミン演じる"モモ"もそうであるが、
何よりも最後に見えてくる主人公・幸田の背景もかなり重要な要素となっているので、
確かに人間ドラマを主軸にしていると言えばありなのかもしれない。
"モモ"がさまざまな奴らから襲われたり、賭博場でボコボコにされたキング(青木崇高)が、
執拗に仕返しをしてきて、何度もヤンキーとヤンキーの暴行の応酬になり、
そこにかなりの尺を割いてしまっているので、肝心の金庫破り自体は、鈍さをも感じる。
でも、逆にこの泥臭さが、個人的には好みでもあった。
洋画のようなスタイリッシュなスパイ大作戦じゃなくて、日本映画らしい泥臭さ。
なかなかええやんか!と思わせたのである。
さらに、本番前夜にモモ(チャンミン)が潜んでいるアパートに、末永たちが狙撃してきて、
鯖寿司を差し入れに来た幸田も銃撃戦に巻き込まれて、二人とも負傷してしまうのだ。
自分でバンバン撃ち込んでおいて、うるさいから文句言ってやったと、
ドテラを着て、近所の人に説明している末永(鶴見辰吾)の凄味は半端ない。
鎖骨のあたりを撃たれて、うめき声を上げる幸田に、モモはモルヒネを打つ。
そのモモもまた撃たれていたが、同じ場所を撃たれたよと言っているが、明らかに違う場所だ。
痛みを堪えて、二人はひとまず、幸田の記憶に残っている吹田の教会に向かい、
失血して血の気が引いてゆき、寒気に震えながら、鯖寿司を頬張り、一夜を過ごす二人。
鯖寿司が食べたいと言っていたモモの約束を果たそうとした幸田と、
幸田の記憶に残る場所へ行こうと促したモモという二人の関係性には、
何とも言えない男臭さと、信頼し合えた友情のようなものをも感じさせる。
ずっと狙われる運命に落ち着く場所を見つけられなかった彼が、
最後に見つけたのが、初めて仲間と呼べる幸田だった。
彼の最期の場所となった教会は、まさに安住の場所となった。
そのまま安らかな気持ちで眠りに就き、
そのまま朝になると、隣に座っていたモモは、冷たくなっていた。
最後に鯖寿司を食べるっていうセレクトが面白いのだが、
やっぱり、モモの背景描写の濃度が低いこともあって、そこまで胸に迫るものはない。
変にケンカのシーンなどが目立ってしまったのが、ここで仇になった。
ちなみに、幸田の方はあとで真実が明かされるので、
この時点では詳細を語ることができないという縛りがあり、仕方ない。
そして、二人がまるで兄弟のように見えたのにも、幸田の背中にも同様の闇があったからだ。
あとは、チャンミンの不思議な透明感と逼迫感が、グッと引き寄せてくれる。
※一応補足。
ひっ‐ぱく【×逼迫】
1行き詰まって余裕のなくなること。事態が差し迫ること。「情勢が-する」「財政が-する」
2 苦痛や危難が身に迫ること。