カテゴリ:小説
これは、大正のはじめに、ふるさとから逃げ出すように北海道へ渡った家族の物語です。
主人公とわは、わずか2歳で北海道へ行き、想像を絶する苦労をしながら成長していくのですが、結局生きるということは運命に流されるしかないもの。自分で変えられるものではないという、諦観に満ちた人生を送ります。 私は、この、女性の一代記を読んで、まるでnhkの朝のドラマみたいだという印象を受けました。 別にそれが悪いと言ってるんじゃないですよ。 小学校卒業と同時に家族のために奉公に出て一生懸命働くけなげさ。奉公先の家族や使用人仲間との会話から、世情を学び自分なりの考えを持つに至る賢さ。びっくりするような出来事が起こって振り回されるわけではありません。ただ、運命を正面から受け止めて、淡々としている強さ。 そんな古典的とも思える展開に、こんな時代もあったんだと素直に思える感じがするんです。 日本で田畑を持たない農民や農家の次男三男たちが、ブラジルやハワイに楽天地を求めて移住するという話は、今までにも本やテレビで何度か接してきました。 ブラジルやハワイへ渡った人たちも、たいへんな苦労をされたことは繰り返し読んだり聞いたりしています。 が、私は北海道の開拓民の話は、何も知りませんでした。 電気もガスも家も畑も何もありません。 小屋は建てても、入り口には戸もありません。 畳や布団なんて言わずもがな。そこへ、知床の厳しい冬が襲いかかります。 恐ろしいとしか言いようがありません。 どちらが苦しくて、どちらが楽なんてことはないに決まっていますが、 ブラジルやハワイは、少なくとも暖かかったはずだもの。 今、大寒波とやらがやってきて、九州と言えども連日零下の寒さです。 外出するときは、コートにマフラー、手袋。 家ではヒーターつけて、晩ごはんは温かいお鍋、お風呂で温まって毛布にくるまって眠りましょう。 それでも、会う人会う人ごとに、「寒いですねえ。」「早く暖かくならないかしら。」 そんな毎日なんで、この本を読むとその過酷さがいっそう身にしみるんですよね。 ただ私の場合、この本の前に読んだ本「弥勒」が、もっともっと過酷な状況の話でした。 何しろクーデターの起こった外国で、反乱軍に捕らえられ、人間の尊厳すら意味を失うくらいの経験をする話です。それに比べたら北海道の開拓民といえど、優しい家族もいるし、気にかけあう隣人もいて、人間の大切なものは決して失ってはいません。 だからマシじゃない、と言ってるんじゃないんですけど・・・ 前に読んだ本の後遺症が、まだ残ってるなあと思いつつの読書になってしまいました。 ところで、さっき「地の果てから」で検索して、あちこち見ていたら、乃南アサさんの「ニサッタニサッタ」は、この本の主人公とわの孫の話なんですってね。 いやあ、驚きました。 確か、ネットカフェ難民になってしまった男性が北海道で再生していく物語だったと思います。北海道のおばあちゃんも出てきましたよ。 2年くらい前だったので、忘れてしまいましたが、読後感のすがすがしい物語でした。 そっちももう一度読んでみましょう。 こうやって、読書の興味がつながっていくって、実に楽しいですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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くまさん555さん
>今頃になってしまいましたが… >ことしもよろしくお願いしますf^^ >ぱぐらさんがしてくれる >いろんな本の紹介を楽しみにしてます!!! ----- ありがとう! 私もくまさんの本の情報、楽しく読んでいますよ。 読書メーターのほうでも、よろしくね。 (2011.01.31 21:32:09)
ちょうど今「地の果てから上」を読み終えたところです。
北海道に先住民のアイヌがいることも知らないで移住していったんですね。 「ニサッタニサッタ」「弥勒」ご紹介ありがとうございます。 (2011.02.20 18:44:14) |
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