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2013.07.23
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カテゴリ:書籍



人類哲学序説

人類哲学序説


 人類哲学というものは、いままで誰にも語られたことがありません。人類ではじめて、私が人類哲学を語るのです。(3ページより)

著者・編者梅原猛=著
出版情報岩波書店
出版年月2013年04月発行

著者は、哲学者の梅原猛さん。縄文時代から近代まで、文学・歴史・宗教等を含めた幅広い考察を行っており、「梅原日本学」とも呼ばれている。

冒頭で、「人類哲学というものは、いままで誰にも語られたことがありません。人類ではじめて、私が人類哲学を語るのです」(3 ページ)と紹介する。かつて、名だたる思想家・哲学者を批判してきた梅原さんの面目躍如といったところか。すごい自信である。
人類哲学を語るにあたり、西洋文明を批判する必要があった。しかし、その梅原さんをして、「私は 20 年ほど前からその問題について考え続けてきたが、西洋哲学の巨匠たちを批判する勇気をなかなか持てなかった」(210 ページ)という。
契機となったのは東日本大震災だ。梅原さんは、「東日本大震災が起こったことによって、私は西洋が生み出した科学技術文明を基礎づける西洋哲学を批判しなければならないと思った」(210 ページ)という。
そして、「現在考えてみて、西洋哲学がはたして人類哲学であると言えるでしょうか」(11 ページ)と問題提起する。

梅原さんは「禅で日本文化を説明するよりもはるかに幅広く、多くの日本文化を、この「草木国土悉皆成仏」(天台本覚思想)という思想で説明できる」(15 ページ)と考えているという。「草木国土悉皆成仏」は天台宗の天台本覚思想であり、人間だけでなく動物や草木にも仏性が備わっているという考え方のこと。インド仏教や西洋哲学にない日本独特の思想だ。

梅原さんは、手始めに、現代科学技術文明の思想的バックボーンであるデカルトを批判する。
有名な「我思う故に我あり」の「われ」は純粋知性です。しかし、純粋知性というのものは、「実は身を離れた幽霊だったのではないか」(67 ページ)と指摘します。
身体は、自然(=「神」と言い換えてもいい)が与えたもうた存在であるにもかかわらず、そこから離れた純粋知性なるものを基盤にした結果、科学技術文明は自然を支配する方向へ進んでいきました。

次に、近代哲学の巨人であるニーチェとハイデッガーを批判する。
「ニーチェは、神は幻想であると言います。神は、弱い人間が強い人間に復轡するためにつくった幻想である、と。しかし、もしそうであるのならば、その神に代わるべき人間離れした超人もやはりまた、幻想なのではないでしょうか」(96 ページ)。
「ハイデッガーについて言えば実存哲学も、人間中心の哲学であると言わざるを得ません」(114 ページ)。さらに、ヘルダーリンに憧れギリシャへ訪れ失望したハイデッガーに対して、「ハイデッガーはドン・キホーテのような存在なのではないかと私は思います。」(119 ページ)とやりこめる。

中盤では、西洋近代文明がヘレニズム(ギリシア文明)とヘブライズム(ユダヤ文明)から生まれたことを解説します。
梅原さんは、旧約聖書を引用し、「人間は神の似姿であり、神は自らに似せて人間に理性を与えた。そして、理性を与えることによってすべての動物の支配権を与えた」(125 ページ)と指摘し、これがデカルトの思想を暗示するものだと言います。西欧人では当たり前すぎて気づいていないことだろう。日本人ならではの視点である。
また、古代エジプト文明がヘレニズムやヘブライズムに影響した可能性について、エジプト研究家の吉村作治の説を引き合いに出している。古代エジプトにおいては死んであの世に行くバーと、この世にとどまるカーという 2 つの魂がある。「このカーこそが、プラトンのイデアの原形なのではないか」(146 ページ)というのです。
さらに、古代エジプト文明では太陽を大切に神格化したが、ヘレニズムやヘレニズムではそれを行っていない。その理由は明示していませんが、これは自然を軽視しているあらわれではないかと指摘する。

終盤では再び「草木国土悉皆成仏」に話を戻し、鎮守の森にあらわれているように、日本人は「森の思想」を持っていると指摘する。一方、西洋文明については、「森は文明の敵であり、木を伐り森を倣嬢することによって文明が始まるという思想に導かれています」(197 ページ)だという。
最後に、西洋思想は「自利」であり、日本の思想は「他利」だと整理する。そして、「私は、このような自利と他利の調和を説く思想こそが、近代西洋的な人生観に替わって、人類の思想になる必要があるのではないかと思うのです」(204 ページ)

最近の天文学で「人間原理」という用語を目にする機会が多い。この宇宙の定数が今の値に決まったのは人間に都合がいいからだとする説である。自利の極地である。
西洋思想とは「中2病」なのではないか。
一方、「森の思想」「他利」というと、ジブリのアニメを連想して良い気分ではない(私はジブリアニメが嫌いである)。
そこで「自利と他利の調和」となるわけだが、じつに老獪な言い方だ。梅原さんは答えを用意したわけではない。それは私たち現役世代が考えるべき事だと、暗に示している。
騙されたと思って、それに応じた生き方をしてみようか。










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最終更新日  2013.07.23 21:33:17
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