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ジョン・ゴーガンが1989年10月にロサンゼルスで再現されたタークの最終調整を行っていた頃、まったく違う原理で作られたチェスを指す機械が動き出そうとしていた。それはディープ・ブルーの前身にあたるディープ・ソートで(233ページより)
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著者・編者 | トム・スタンデージ=著 |
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出版情報 | NTT出版 |
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出版年月 | 2011年12月発行 |
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1770 年、オーストリア女帝マリア・テレジアの前ででチェスを指す自動人形(オートマトン)「ターク」が披露された。製作者はヴォルフガング・フォン・ケンペレン。彼はこの成功により、宮廷から様々な仕事や地位を与えられた。
その後、タークは、アメリカ大統領ベンジャミン・フランクリンやフランス皇帝ナポレオンと対戦し、彼らを打ち負かした。
もちろん当時の技術で機械が判断してチェスを打つことなどできようはずもない。にもかかわらず、タークは人々を魅了した。
数学者のバベッジもタークと対戦し、負けた。彼はタークには人が入っていることを確信したが、そのトリックを見破ることはできなかった。後年、バベッジは機械式コンピュータを構想することになる。
作家のエドガー・アラン・ポーもタークと対戦し、霊感を得たという。
20 世紀に入り、チェス・チャンピオンを凌ぐ演算性能を持ったディープ・ブルーが登場するが、タークも再現され興業を続けていた。
実際にタークを見たわけではないので確かなことは言えないが、時代背景から考えて、タークがオートマトン出ないのは明らかだろう。だが、タークが大衆を魅了し良い影響を与えるイリュージョンであることも確かだ。
ケンペレンは優れた技術者で有り経営者でもあったので、タークによるプレゼンテーションは、彼の本来持つ能力を発揮できるきっかけとなった。
自分の能力を発揮したいなら、時にははったりも必要であると感じた。