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2015.12.30
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カテゴリ:書籍
下町ロケット(2)

下町ロケット(2)

 貴船「患者のためといいつつ、私が最優先してきたのは、いつのまにか自分のことばかりだったな。だけどな、久坂君。医者は医者だ。患者と向き合い、患者と寄り添ってこそ、医者だ。地位とか利益も関係なくなってみて思い出したよ」(360ページ)
著者・編者池井戸潤=著
出版情報小学館
出版年月2015年11月発行

著者は、慶應義塾大学文学部・法学部を卒業して、銀行に入行したものの、独立してビジネス書や税理士・会計士向けのソフト監修をしていたという変わり種作家の池井戸潤さん。第145 回直木賞を受賞した『下町ロケット』の続編。
前作でロケットエンジンのバルブ開発と納品の漕ぎ着けた佃製作所の新たな挑戦は、医療分野だ。前作に伏線が張られているが、本書から読んでも楽しめる。

佃製作所の佃航平社長のところに、試作品開発の依頼が舞い込む。依頼料は安く、何の部品なのかも明らかにされなかった。佃社長が人脈を使って調べてみると、それは埋め込み型人工心臓「ガウディ」であることがわかった。開発に成功すれば多くの患者を救い名声が得られるだろうが、失敗すれば多額の賠償金を負うことになるだろう。
開発がハイリスク・ハイリターンというだけではない。その裏で、前作で帝国重工に納めることが決まったロケットエンジンのバルブの開発を進めている新進気鋭のライバル工場サヤマ製作所や、心臓外科学会で対立する貴船恒広・アジア医科大学心臓血管外科部長と一村隼人・北陸医科大学教授。そして、同じ町工場の立場で佃製作所に支援を申し入れてくる株式会社サクラダ。医療機器認可に当たる PMDA という、実在の組織も登場――一癖も二癖もある登場人物たちが、物語を牽引していく。

佃製作所・技術開発部の中里淳は、バルブ開発に携わりながらサヤマ製作所へ転職を決意する。だが、サヤマ製作所で新型バルブの開発は失敗続き。
一方、佃製作所もピンチの連続だ。そんな時、佃航平が語る。「理詰めや数式で解決できる部分は実は易しい。ところが、あるところまで行くと理屈では解き明かせないものが残る。そうなったらもう、徹底的に試作品を積み上げるしかない。作って試して、また作る。失敗し続けるかも知れない。だけど、独自のノワハウっていうのはそうした努力からしか生まれないんだ」(173 ページ)、「スマートにやろうと思うなよ。泥臭くやれ。頭のいい奴つてのは、手を汚さず、椅麗にやろうとしすぎるキライがあるが、それじゃあ、ダメだ」(174 ページ)。

権謀術策をめぐらせたサヤマ製作所にも最後の時がやってくる。
地位を追われた貴船部長は、こうつぶやく。「患者のためといいつつ、私が最優先してきたのは、いつのまにか自分のことばかりだったな。だけどな、久坂君。医者は医者だ。患者と向き合い、患者と寄り添ってこそ、医者だ。地位とか利益も関係なくなってみて思い出したよ」(360 ページ)。
中小企業、大企業、医療者、PMDA‥‥それぞれが矜持を示したとき、物語は大団円を迎える。

同じ製造業に携わるものとして、佃航平の台詞「自分のやりたいことさえやっていれば、人生ってのは、そんなに悪いもんじゃない」(368 ページ)に、胸が熱くなった。どんなに窮しても貧しても、この仕事ができるなら、そんなに悪いもんじゃない!






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最終更新日  2015.12.30 12:57:14
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