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2016.03.06
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カテゴリ:書籍
呼び覚まされる霊性の震災学

呼び覚まされる霊性の震災学

 タクシードライバーたちが体験した幽霊現象は、事実上、無賃乗車という扱いになっている。(10ページ)
著者・編者金菱清=著
出版情報新曜社
出版年月2016年1月発行

本書のタイトルに「霊性」とあるが、けっしてオカルト本ではなく、東北学院大学のゼミ生たちが綿密なフィールドワークの結果をまとめた論文集である。
この 5 年間、メディアの光が当たらない被災地の現実を取材し、私たちが生と死の狭間で何を感じるのか、ありのままを報告している。
学生たちの文章は、失礼ながら、稚拙な論理構成で読みにくいと感じる部分もあるのだが、それを補ってあまりある被災地の生の声と、当の学生たちの故郷に対する熱意が感じられる良書である。

最初に、石巻や気仙沼の多くのタクシードライバーが体験した幽霊現象を取材する。
タクシードライバーのひとりは、「最初はただただ怖く、しばらくその場から動けなかった」(5 ページ)というが、いまでは「また同じように季節外れの冬服を着た人がタクシーを待っていることがあっても乗せるし、普通のお客さんと同じ扱いをするよ」と語る。このドライバーは、震災で娘さんを亡くしているという。
論者は、この現象について、絶望から畏敬が生まれたと結論づけている。

津波を受けて骨組みだけの無残な姿になった南三陸町防災対策庁舎を取り上げ、震災遺構を残すかどうか、遺族の心の移り変わりを取材する。論者は「負の遺産のシンボルである原爆ドームの永久保存にも 20 年という歳月が必要であった(65 ページ)として、「時間は人びとの認識と心情の面で変化を与える。外部のさまざまな人びととの交流や環境の変化、供養という節目などがご遺族に変化をもたらしている」という。

津波で墓地が流されてしまった中浜の人びとは、「(新しく造成された)お墓と(流された墓地の後に建てられた)慰霊碑という異なる場でご先祖様に対して祈っている」(81 ページ)。「遺骨が見つかっていないために、まだ元のお墓のあった場所にご先祖様の存在を感じる人もいる」というのだ。
「震災後、避難所や仮設住宅、お年寄りや子どもに復興のスポットライトが強烈にあたるなか、夫も子どももいて、家も流されなかった「普通のおばさん」は蚊帳の外におかれ、焦燥感と虚無感に苛まれ」(97 ページ)、うつ状態になった母親がいる。
たった 9 人で、672 人のご遺体を土葬し、再び掘り起こして荼毘に付す作業に従事した民間葬儀会社がある。「掘り起こしの現場で一番大事にしたのは、厳粛なイメージから懸け離れた“笑い”であった」(113 ページ)という。
「東日本大震災での消防団の犠牲者数は、岩手県で 119 人、宮城県で 107 人、福鳥県で 27 人、計253 人となった。同 3県の消防本部の職員の犠牲者は 27 人だった」(128 ページ)という。論者は、「消防団には明確な「目的」と「価値」がある」(145 ページ)としたうえで、「この恨底が崩れない限り、彼らは再び現場へと向かうだろう」と結論づけた。

本書を執筆した学生は、高校 3 年の春に震災を体験したという。
当事者が書いた文章は主観的になりやすいという原則は当てはまらない。むしろ、客観的であるはずのマスメディアの方が偏っているのではないかと感じさせるほど、本書の調査は客観的で、微に入り細を穿っている。
本書を執筆した学生の皆さんは、このフィールドワークを忘れることなく、社会に貢献できる仕事に就かれんことを祈っている。また、今後遭遇するであろう艱難辛苦にあっては、ご遺体を掘り起こしていた葬儀会社を思い出し、笑顔で前へ進んでいってほしい。
そして、震災に見舞われた全ての皆さん、私たちは常にあなた方の側にいます。どうか、あきらめないでください。







最終更新日  2016.03.06 18:36:20
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