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2019.01.26
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カテゴリ:書籍
ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ

ブロックチェーン 相互不信が実現する新しいセキュリティ

 管理者を信頼しないとプライベートチェーンは成立しないが、管理者が信頼できるのであれば、わざわざシステムをブロックチェーンで組まなくてもよいケースが多いのは、これまでに述べてきたとおりである。(231ページ)
著者・編者岡嶋 裕史=著
出版情報講談社
出版年月2019年1月発行

著者は、情報ネットワークや情報セキュリティが専門の岡嶋裕史さん。ビットコインなどの仮想通貨で使われている「ブロックチェーン」の原理と、メリット/デメリットについて解説した入門書である。
ブロックチェーンも人間が作った技術である限り、万能ではない。システムとしては非常にプリミティブなもので、Winny に劣る部分もある。ブロックチェーンが適用できるのは、管理者不在で参加者全員が信用できないような状況で、けっして変更・削除しないデータを蓄積していく場合。ただし、データが極めて小さいものに限られる。また、原理的に、リアルタイム・トランザクション処理はできない。
逆に、管理者が明らかな業務系データの蓄積や、プログラムやコンテンツの配信には不向きである。銀行が取引履歴をブロックチェーンにすることもナンセンスだと感じた。電子マネーのようなリアルタイム決済もできない。
また、ブロックチェーンへの攻撃が無意味であることは、少なくともその内部で市場原理が働いていることを前提としており、もしも経済戦争のようなコストを度外視した国家レベルの攻撃が行われるとしたら、意外に脆いのではないかと感じた。
本書は、技術者向けというより、ブロックチェーンの適用分野を見極めるためのビジネス書という位置づけでとらえておいたほうがいい。巻末に技術書の紹介があるので、興味のある方はそちらも併読していただきたい。

第1章では、マウントゴックス社やコインチェック社の事件を取り上げるが、これは本筋とは関係ない。
第2章でハッシュ関数、第3章でハッシュと共通鍵・公開鍵暗号方式の関係や電子署名、タイムスタンプ証明書について解説する。これらの基礎知識がある人は読み飛ばして構わない。
本題は第3章から始まる。まず、ブロックチェーンと Winny の違い。ブロックチェーンは、すべてのチェーンを格納し続けているので、あまり大きなデータを格納することはできない。それでも「2018 年段階でビットコインのブロックチェーンのデータ量は 100GB を超えている」(121 ページ)という。Winny のようなコンテンツ配信向きではない。
ビットコインでは、「自分のトランザクションが記録されたブロックの後ろに、5 つのブロックがつながれば、ほぼそれが正統なブロックチェーンに育ったと見なせる」(171 ページ)というルールがある。トランザクションの成立には 10 分を要するから、リアルタイム決済は苦手である。
また、ナンスを計算するために、莫大な電力が浪費されている点も見逃せない。「現時点で 2.55 ギガワットの電力を消費している。これは 3.1 ギガワットを消費するアイルランドと同等の規模」(194 ページ)という。

第5章で、岡嶋さんは、「『すべてのシステムがブロックチェーンに置き換わっていく』といった言説は、多分に夢想的である」(198 ページ)と前置きした上で、ブロックチェーンのメリットとデメリットについて整理する。
たとえば、「映像やソフトウェアの配布などに利用しよう、などという用途には不向きである」(217 ページ)、また、トランザクションの成立に 10 分を要するから、少額決済にも不向きである。「この種のシステムを導入している店舗は、トランザクションが承認されていないことを承知で客にモノを売ってしまう。それで、後から『あのトランザクションは不正だった」ということがわかり、代金を取りっぱぐれることがある』」(211 ページ)という。
「一度動き出してしまった管理者不在型の自律システムを止めることは非常に難しい」(201 ページ)ため、システムのバージョンアップも難しい。バージョンアップのために用意されたハードフォークを実行するには、大きなリスクを伴う。

岡嶋さんは、「誰も信用できない、でも世界中と繋がっていて誰でも参加できるという」という状況で、「その環境下で信用を生み出そうとし、それに成功している点が尊い」(236 ページ)と説く。そして、「特定の分野において、ブロックチェーンは素晴らしいソリューションである。社会を変える可能性すら秘めているだろう」(240 ページ)と結論する。






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最終更新日  2019.01.26 12:27:58
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