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カテゴリ:書籍
飯田橋にある印刷博物館を訪れた際、コラボ企画として展示されていた小説――川越にある昔ながらの活版印刷所「三日月堂」に出入りするお客さんの心模様を描く第二弾も中編4本――ふわっとした物語なのだが、名刺、銅版画、映画‥‥と、子どもの頃を思い出して、年甲斐にもなく、うるっとしてしまった? チケットと昆布巻き‥‥旅行情報誌編集者の竹野は、学生時代の同窓生の年収が気になる。取材で三日月を訪ねたとき、店主の月野弓子は生活に不安がないのか不思議に感じた。弓子は不安があることは確かだが、「やりきった、と感じるまではやめられないですよ」と語る。弓子の手ほどきで印刷機を動かした竹野は、「いまは仕事、面白いしね」と言えるようになった。 カナコの歌‥‥弓子の母カナコの学生時代のバンド仲間、大島聡子が三日月堂を訪れた。聡子は、カナコが亡くなった頃に疎遠になっていたもう一人の仲間、裕美を訪ねる。カナコの二十七回忌をやろうということになり、三日月堂にカードを発注する。弓子は、自ら印刷したカードを電気に照らすと、文字が紙に刻み込まれた魂みたいに見える――「少しわかった気がします。みんな、こんな気持ちだったんだ、って」。 庭のアルバム‥‥わたしにはなんの取り柄もない。得意なことも自慢できることもない――学校生活に疲れていた天野楓は、夏休みに三日月堂のワークショップに参加した。弓子に絵がうまいと言われて嬉しくなり、自分の絵を凸版にしてカードにした。弓子はそのカードを活版印刷のイベントで販売することを提案する。楓は祖母の家の庭をスケッチしながら、家族の繋がりを見直すきっかけをつかむ。 川の合流する場所で‥‥本町印刷の悠生と大叔父の幸治は、神保町で催されている活版印刷のイベントで三日月堂のブースを訪れる。弓子と楓が活版でカードを印刷したことに感心し、盛岡にある印刷工場で、三日月堂と同じ平台を動かしてみせる。弓子はそれを使って16ページの詩集を印刷する。幸治が「いまのような仕事をするだけなら、平台まで動かすことはないと思う」と問いかけると、弓子は「たぶん、本を作りたいんだと思います」と答えた。幸治は驚き、三日月堂の平台の修理を引き受ける。悠生は突然、弓子を手伝いたいと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.03.05 12:54:01
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