熊本市の化血研は18日、ボツリヌス毒素を届け出をしないまま運んでいた
ボツリヌス毒素を0.1ミリグラム以上運ぶ時は、公安委員会への届け出が必要
ボツリヌス毒素は致死率が高く、生物兵器テロに使われる恐れがあることから

40年以上にわたり血液製剤などを不正に製造していたことが問題になっていた製薬メーカー「化血研（一般財団法人 化学及血清療法研究所）」が、今度は、必要な届け出をせずに致死率の高いボツリヌス毒素を運んだ疑いがあり、厚生労働省が立入検査に入りました。
ボツリヌス毒素は、致死率が高く生物テロに使われる恐れがあるとして、運搬には都道府県公安委員会への届け出が義務付けられている。

ボツリヌス毒素は、人間が知っている限り自然界で最強の毒素とされている。
具体的には、ボツリヌス毒素の致死量は、体重70kgの人に対して毒素を吸入させた場合、0.0000007g（0.7マイクログラム）と考えられている。
ボツリヌス中毒の症状は、筋肉の麻痺を引き起こし、意識は最後まであるが、身体が動かず重症では呼吸筋を麻痺させ呼吸ができなくなり死に至る。

ボツリヌス菌自体というよりは、菌が出す毒素が危険である。ボツリヌス菌は自然界に普通に存在し、土のなかにうようよいる。ただ、空気中に飛び回ることはない。というのも、菌には好気性菌と嫌気性菌が存在する。ボツリヌス菌は空気を嫌う嫌気性菌の代表格でもある。そのため、私たちは日常生活を普通に生活している限り被害にあうことはまずないだろう。

1984年に熊本県で製造された真空パックの辛子蓮根により11名が死亡した食中毒事件があった。これはボツリヌス毒素が原因だったが、真空パックということで、空気がない状態だからこそ繁殖してしまった例である。

からしれんこんによるボツリヌス中毒事件の概要 - 国立感染症研究所 感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/iasr/CD-ROM/records/05/05702.htm

化血研は日本で唯一ボツリヌス中毒の薬を作っている会社である。
実は一般に医療としても使われている。例えば、まぶたの激しい痙攣や多汗症の方に対して、神経毒として機能するため薄めて打つことで神経、筋肉の痙攣を止める作用がある。それを更に発展させたものが美容であり、美容整形でシワ消しなどで使用されている。シワというのは、筋肉の動きを弱めてシワを消すことができるという考え方からだ。

自然界にはとてつもない危険な毒が存在するが、人間はそんな危険な毒すらもいいように使っている。ただ、あまりいい加減なことをすれば毒にやられてしまうからこそルールは守らなければならない。

血液製剤やワクチンの不正製造に関しても、国の未承認の方法で製造されていたわけで、今回も普通に届け出すればいいことをなぜこのようなことが起きるのか、根本的なモラルの崩壊がある。
前回の血液製剤などの不正製造の件で内部調査を行い、毒を早めに出そうということで問題が発覚したのだろう。

・食中毒を起こす微生物　ボツリヌス菌 - 東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/boturinu.html

・ボツリヌストキシン - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ボツリヌストキシン

・ボツリヌス症とはどんな病気か - goo ヘルスケア
http://health.goo.ne.jp/medical/10PD1200

人体に危ない細菌・ウイルス　食中毒・院内感染・感染症の話

発売日：2014年04月 著者／編集：小林一寛 出版社：PHP研究所 サイズ：新書 目に見えない微生物が、私たちの身の周りにたくさんいて、食と健康の鍵を握っている。私たちの身体の安全も人体常在菌によって守られていた。その構図が、いま崩れようとしている。身近な食べ物である卵が、安全なものとは言えなくなっている。無害であった人体常在菌が害となり、人を襲う。奇跡の薬と呼ばれた抗生物質が、多剤耐性菌の登場で効かなくなっている。身近なペットから危ない菌が出ている…身を守るための処方箋とは？

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