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ラスタ・パスタのレレ日記

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2006年07月11日
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テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:音楽:CD
渡辺香津美の完全アコースティック・ギター・ソロ・アルバム第3弾
「ギター・ルネッサンスIII<翼>」の最初の1曲目の

「Over the Rainbow(虹のかなたに)」を病院の帰りに電車の中で聴きながら、本当に、渡辺香津美のアコースティック・ギターが心に沁みた。

いつも、いろんな音楽に感動しているが、こんなかたちで、自然に音楽が胸の中にす~っと入ってきて心に沁みたのは、初めてかもしれない。

Guitar Renaissance III [翼]
渡辺香津美/ギター・ルネッサンスIII<翼>
渡辺香津美/ギター・ルネッサンスIII<翼>

私事なので、ブログには書かないでいたのだが、バンコク・ジャカルタから帰国したすぐ後に、父が心不全をおこし緊急入院をした。

実は、父はずいぶん前に、心筋梗塞をおこしており、心臓のバイパス手術をしている。その後、かるい心不全などを何回か起こして、バルーン手術も経験しているが、今回は、動脈が数箇所詰まっており、バルーン手術もリスクが高くて出来ない状態だった。

そして、ぼくにはある種の後悔もあった。
はじめて父が心臓手術をした時、ぼくは当時勤めていた会社の上司に、
「今日は父の手術があるので早退させてください」と言ったところ、

「(病院に)行ってもいいけれども仕事をちゃんと終わらせていけ」と言われた。

当時のぼくは、まだ青二才だった。上司の言葉を真に受けて、仕事をしてから病院に行った。本当は、上司の言葉は、「病院にすぐいってもいいけれども、あとからちゃんと仕事をしろ」という意味だったのかもしれない。
または、そうではなくても、ぼくは上司の言葉を無視して病院に直行すべきだった。
また、ぼくはなぜか、「自分の父に限って死ぬようなことはない」というへんな理由なき確信もあった。

ぼくが病院にかけつけた時はもう手術は終わっており、ICUから出てきた父に会ったのだけれども、手術を受けている本人もそうだけれども、

手術が終わって、ICUから出てくるまで、病院に付き添っていた母は、ひとりで、どんなに心細く不安な気持ちでいっぱいだったろうか、とその時気が付いたのだ。手術する場所が場所だけに、相当なリスクをあったと思う。

そういうことに、自分の気持ちがいたらなかったことをすごく後悔し、自分の未熟さに恥じた。
手術に付き添うというのは、患者本人のためだけではなく、家族の不安や心細さをすこしでも和らげる、という意味があることを。

そして、その時以来、心に決めていた。こんど同じ様な大きな手術があるときは、絶対に付き添って母の不安を少しでも和らげようと。


今回は、その最初に手術を受けた病院が、受け入れ態勢が出来ているので緊急入院してもいい、という了解を得て、救急車でその病院まで行ってもらった。
自宅からはかなり遠い距離の病院だが、当時の担当医が今は教授になっていて素晴しい担当医のチームを作ってくれた。

手術の当日、すなわち今日の早朝、病院に着き、父の顔をみて話をしていると、看護士がやってきて、父の血圧をはかり、手術用の服に着替えさせ、お尻に麻酔薬を打つための注射をしていった。

そして、病室のベットから移動用の担架に移された父は、そのまま手術室に運ばれていく。

母は父に「頑張ってね」と声をかけた。ぼくはだまって、父の足を握り締めた。

今回の手術の方法とリスクは、事前に担当医から何回も説明を受けた。詳しく説明を受ければ受けるほど、心配が増えていく。しかし今は、病院も、医師もきちんとインフォームド・コンセントを行い、父と母の同意書を取り付けてから手術にのぞんだ。

手術は長い時間がかかることが予想されていた。
手術が無事終わるのを待つ間、ぼくは、母の気をまぎらわすために、いろんなモノを用意していた。何冊か買ってきた文庫本を母に渡した。

母は本を読んでいるようでもあり、読んでいないようでもあった。ぼくも本を読もうとしたが、全然頭に入ってこなかった。

持ってきた携帯DVDプレイヤー(これは、手術後、父が少し元気を回復したときのために用意したのだが)で、ハリーポッターの映画を見ようとしたが、母もぼくも全然、映画を見る気になれなかった。

音楽DVDをかけてみたが、母がとても聴きたいような音楽ではなかった。
こんなものが、母の気をまぎらわすとは思えなかったが、持ってきたウクレレに布をかけて,ミュートし、1-2曲、軽く弾いてみた。

ほかの患者さんがいなければそのままウクレレを弾けたけれども、他の患者さんがいるので、おきな音は出せなかった。

結局、携帯用DVDは、FMラジオ・チューナー付きだったので、NHKのFMで、クラシックを聴きながら、雑談したり、新聞を読んだりして時間を過ごした。

そんなことをしているうちに、多少母の気持ちはまぎれたと思う。
しかし父が手術室に入ってから数時間過ぎた頃から母の落ち着きがなくなってきた。

今回、執刀してくれる医師は、すごく腕のいい医師だと聞いていたし、担当教授も最初の手術からその後の父の経過も知っているので、大丈夫だという気持ちをぼくは持っていた。でも母はやっぱり心配だったのだろう。

かなりの長時間の手術を覚悟していたのだが、覚悟していた時間よりは若干早く看護士が「ただいま手術が無事終了しました。ICUにご案内します」と言いに来た。

まだ麻酔で眠っている父の姿を見、教授と執刀医からどういう手術だったかの説明を受け、病室にもどってきた母は、

「あ~、よかったぁ。」とは何度もため息をついて、横になった。
ぼくの想像以上に心配していたのだなあ、と思った。
連日、父の看病のため病院に通っていた母はかなり疲れていたのだと思う。そんなつかれがいっきに出たのかもしれない。

バリバリにこった母の背中と腰を揉んであげた。なぜか、指圧だけはぼくは子供の頃から上手なのだ。

すこしほっとした母にかわって、親戚などに無事に手術が終わったことを知らせ、父が目を覚ますのを待った。

手術が終わって2-3時間しただろうか。再び数分だけ、ICUでの面会を許され、酸素マスクやパイプや管をつながれた父と話した。
意識はちゃんともどっており、何か小さな声で話していた。ぼくには「ありがとうな」という言葉だけしか聞き取れなかったが、さすがに長年連れ添った夫婦、父の小さな声も母にはちゃんと通じているようだった。

まだ父は疲れているようなので、母は「手術はうまくいたそうよ。よく頑張ったわね」と父に言い、まわりでみまもる担当医師のチームにお礼を述べて、病室に戻った。


何か起きてはいけない、というおとで母は病院の宿泊施設に泊まることになった。泊まれるのは家族のうち1名だけ。

僕は、近くのコンビにで弁当を買ってきて、母と一緒に食べ、「よかったね、手術が無事成功して」と言った。

今夜は父はICUの中にいる。母もひと安心したようなので、ぼくは一回、自宅に帰ることにした。

順調に行けば、明日にはICUから病室に戻ってくるだろう。そのくらいの時間を見計らって、また病院に行こうと思う。

ぼくが思っていた以上の、母の心労を思い、自分自身もようやく少しほっとしたので、i Podで音楽を聴いた。

なぜか、渡辺香津美のアコースティック・ギターが聴きたかったので、
彼の最新作、「ギター・ルネッサンスIII<翼>」をかけた。
するといきなり、「Over The Rainbow」が聴こえてきた。
電車の中で、なぜかこの曲が、す~っと胸の中に入ってきた。

心に沁みた。

優しい音だった。ゆっくりしたペースでかなでられるアコースティック・ギター。ジャズっぽいコード。この曲をアルバムの最初の曲に収録してくれた渡辺香津美に感謝した。

あんまりうるさい曲は聴きたくなかった。

次の曲は、バッハの無伴奏チェロ組曲だった。
「Over The Rainbow」からバッハへ。こんな粋なはからいが気に入った。
心がだいぶ落ち着いてきた。

3曲目は、レッド・ツエッペリンの名曲「Stairway to Heaven(天国への階段)」だ。こんな時に、ちょっと考えすぎるとヘンな題名の曲に当たってしまったが、この有名な静かなイントロ~前半部分をアコースティック・ギター1本で表現する渡辺香津美。

「Stairway to Heaven」の後半部分で、曲が盛上がっていくところで、激しく演奏されるアコースティック・ギター。

もう曲がそのあたりに進む頃には、すっかりぼくの心は元気を取り戻していた。

スタンダード曲~クラシック~ハードロックと、
音楽のジャンルをやすやすと超えていく渡辺香津美の幅広い音楽性。
そんな渡辺香津美が僕は大好きだ。

渡辺香津美に、感謝した。よくぞこんな曲順で選曲してくれたことを。
神に感謝した。父の手術が無事うまくいったことを。




渡辺香津美の「ギター・ルネッサンスIII<翼>」
収録曲は、以下の通り。

01. 虹の彼方へ (Harold Arlen)
02. クーラント 無伴奏チェロ組曲第1番BOW 1007より (J.S. Bach)
03. 天国への階段 (Jimmy Page / Robert Plant)
04. クーラント FROM HEAVEN (J.S. Bach)
05. 翼 (Toru Takemitsu)
06. MOMO (Koko Tanikawa)
07. 星影のステラ (Victor Young)
08. シェルブールの雨傘 (Michel Legrande)
09. IF I FELL (John Lennon, Paul McCartney)
10. クレオパトラの夢 (Bud Powell)
11. アストロ・ジャンプ (Kazumi Watanabe)
12. チュニジアの夜 (Dizzy Gillespie, Frank Paparelli )
13. 月の沙漠 (Suguru Sasaki)


ジャズのスタンダード曲(07、12)
映画音楽(08)
武満徹の曲(05)
ビートルズ(09)

そしてバッハ(02,04)
レッド・ツエッペリン(03)

素晴しい選曲と演奏。オススメです♪






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最終更新日  2006年11月01日 21時29分47秒
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