『ゴールデンスランバー』
出演 堺雅人さん、竹内結子さん、吉岡秀隆さん、劇団ひとりさん 他仙台市内で行われた、首相凱旋パレード。同じ日に、大学時代の友人・森田(吉岡)に呼び出された青柳(堺)は、車の中で森田から「お前、オズワルドにされるぞ」と警告を受けます。オズワルドとは、かつてアメリカ・ケネディ大統領暗殺の容疑者に仕立てられたという悲劇の人のこと。訳もわからないうちに爆発音がし、青柳の姿を見つけ、二人の車に向かって拳銃を発砲してくる警官。「逃げろ。とにかく逃げて、生きろ」というもう一つの森田の言葉を胸に、青柳の逃走劇が幕を開けます・・・・。簡単に言ってしまえば、無実の男が逃げに逃げまくるこの映画。このタイトルは、ビートルズのアルバム、『アビィロード』の中の一曲です。『黄金のまどろみ』という意味とは皮肉にも、うたた寝から目覚めれば状況が変わってしまっていたという目にあってしまうのが、主人公の青柳。窮地に迫られてるにもかかわらず、そのお人よしで人畜無害な性格はそのままなところが凄いです。それが彼の良いところで、また、何も持たない彼の唯一の武器でもあるわけですね。大学時代の友人や、勤務先の同僚など、人々に触れ合いながら続く逃亡劇。いろいろな人達がからんでくるのですが、中でも好きなのは、マスコミ各社が青柳の父にインタビューを迫るシーンです。「あんた達が、息子の何を知ってるんだ!!」とばかりに、マスコミに噛み付く父。・・・かっこいいですね。本当に、心の底から自分の息子を信じている、そして誇りに思う親の姿です。現に、立派な息子さんだと思いますけどね。私も、あんな親になりたいものだと思いました。逃亡を続けていると、辛いこと悲しいことも数々あります。それでも、どこかホッとするのは、青柳と大学時代の友人と過ごした日々の回想。ホッとする・・・というのはおかしい表現かもしれませんが、今の青柳という人物の人柄がよくわかりますし、彼を囲む3人の友人がとっても温かいんです。どこか温かい記憶と、ままならない現実の絶望感のコンストラストが絶妙で。一番大好きなのが、ラストのシーン。「ああ、そういうことか」・・・最初から観ている人なら、そう思うことでしょう。「友人って、いいなぁ」、と思える映画でした。観て良かったと思いますよ。・・・そういえば、この映画を観てしばらくしてから、「夜のお茶会」のお誘いメールが来たんですよね。観たのが先月下旬、メールが届いたのが先週ですから。それこそ、10年以上会っていない友人達です。最近、観る映画、読む小説が、後々に自分の状況に似てくるような気がします。無意識に私自身が私の中で近い未来を示唆していて、無意識にそれを自分で察知して選んでいるのでしょうか?・・・不思議なこともあるものです。(犯罪者に仕立て上げられたくないですけどね(笑)。でも、昔の友人に会うと言った意味ではちょっと近いかな?)