カテゴリ:音楽
スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)と言えば、現代最高のシンガー・ソングライター、アーティストと言っていいだろう。盲目というハンディを感じさせないような素晴らしい歌と曲づくりの才能。40年以上のキャリアの中で生み出された数々のヒット曲のなかには、今やスタンダードになったものも多い。
スティービーのもう一つの魅力は「We Are The World」や「LIVE AID」に見られるような、難民支援などのチャリティへの貢献。大きな救援イベントには、いつも彼の姿がある。目は見えなくとも、彼の視線は常に弱者に注がれている。それは、盲目というハンディに加え、黒人であるがゆえに偏見、差別と闘ってきた彼が、弱者の苦しみをよく理解していることの表れでもあろう。 1950年5月13日、米ミシガン州生まれ。生後まもなく保育器内の過酸素事故が原因で視力を失うが、天性の音楽的才能は、11歳の時、モータウン・レコードの社長ベリー・ゴーディに見出される。そして、2年後の63年、わずか13歳の時、「リトル・スティービー・ワンダー」という芸名で、アルバム「フィンガーティップス」(写真左上)でデビューする。 「フィンガーティップス」からシングルカットされたタイトル曲は、いきなり、全米チャートで1位になるという快挙を成し遂げた。その後も10代の間、「太陽のあたる場所」「アップタイト」「マイ・シェリー・アモール」などのヒット曲を放ち、スティービーは天才少年として注目を浴び始める。 しかしスティービー・ワンダーの名前はこの頃、まだ日本ではほとんど知られていなかった。スティービーの曲がブレークし、その存在が知られるようになったのはおそらく、73年、全米1位となったシングル、「スーパースティション(迷信)」が日本でもヒットしたのがきかっけだろう。 この「スーパースティション」を収めたアルバム「トーキングブック」(写真右上)と、続くアルバム「インナーヴィジョンズ」がともにグラミー賞を獲得。スティービー・ワンダーの音楽への評価揺るぎないものとなり、その名と音楽は、世界のすみずみまで知れ渡るようになる。 その後のスティービーの活躍は数え切れないほど。ポール・マッカートニーと共演した「エボニー&アイボリー」も全米で7週間1位となった。冒頭に記した「We Are The World」(USA for Africa)のほかにも、エイズ・チャリティ曲「愛のハーモニー」ではデイオンヌ・ワーイック、エルトン・ジョンらと共演。ことし8月の「LIVE8」では、フィラデルフィア会場のオープニングアクトをつとめた。 スティービーは日本にも70年代から何度も来日して、コンサートを開いているが、それほどビッグなアーティストでありながら、なぜか僕は、ごく最近まで「生スティービー」を観る(聴く)機会がなかった。そして念願叶って、昨年1月、大阪城ホールでのライブを観た(写真右下=85年発表のアルバム「イン スクエア サークル」。これも世界的に大ヒットしました)。 コンサートは過去のヒット曲中心の予定調和的なものだったが、何度も来日しているスティービーは、「ミンナ、アイシテマース」「オオサカ、アリガトウ」などと日本語も流ちょうに操りながら、優しい人柄もあって、楽しませてくれた(ただ、ピアノはほんとに弾いていたみたいだが、エレピは指を離して、自分で手拍子を打ちながら歌っていたときも音が鳴っていたので、たぶん事前の打ち込みかなぁ…)。 スティービーの曲では、僕は「レイトリー(Lately)」(80年発表=写真左中=「レイトリー」を収めるアルバム「Hotter Than July」)というバラードが一番好き。曲もいいが、歌詞もとてもいい。妻(あるいは恋人?)の心が最近、僕から離れていっているんじゃないかと疑い、苦悩する男の胸の内をうたい、しみじみとしていて、とても味わいある内容。 ピアノの弾き語りでは、僕はこの「レイトリー」のほかに、「サンシャイン(You are the sunshine of my life)」「心の愛(I just called to say I love you)」などを、よく歌うが、スティービーの曲は結構音域が広いので、メロディーはシンプルでも、素人には手強い曲が多い。 ちなみに、行きつけのBAR「M」でいつも僕のパートナーとして歌ってくれるSさんは、難曲の「オーバージョイド(Overjoyed)」がとても上手い。伴奏している僕が聴き惚れてまうほど(写真左下=スティービーを知るための1枚と言えば、このベスト盤がオススメ)。 歌や曲だけでなく、献身的で、誠実な人柄がゆえに、スティービー・ワンダーに僕は惚れ込む。今年4月には、10年ぶりのスタジオ録音の新作アルバム「A TIME 2 LOVE」を発表した。「原点回帰」というのがキャッチフレーズだが、常に進化し続けるスティービーだから、そこはひと味違う原点回帰になっている。ことし55歳という若さ、まだまだ活躍してくれそうなスティービーに乾杯! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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