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マイケル・ジャクソンの実現しなかった最後のツアーのリハーサル風景をまとめたドキュメンタリー映画「This Is It」のDVDが昨日(1月26日)発売されました。公開中は話題になった映画でしたが、時間がなくて見に行けなかったこともあり、うらんかんろは発売されたばかりのDVDを早速買って、昨夜観ました。(※ご参照→ 急死の報を聞いて記した09年6月26日の日記 )
見終わってまず強く感じたのは、このツアーに賭けるマイケルの思いです。当たり前ですが、リハに取り組む情熱・意気込みは、ただ凄いの一言です。天才と言われたマイケルですが、その陰で努力を惜しまなかった人であることもよく伝わってきました。実現していたら、きっと歴史に残るステージになっていたでしょう。感想はいろいろありますが、思いつくまま記してみます。 ◆超厳しいオーディション 冒頭、このツアーに参加するダンサーをオーディションするシーンが出ます。応募してきたダンサーの数が半端じゃないことにまずびっくりしました。その数はいったい何百人いるのかという感じ。数がたくさんいるから70~80人くらいずつ舞台に上げて、マイケル自身も審査に立ち会い、絞り込んでいきます。 当たり前ですが、マイケルのツアーに応募してくるくらいだから、みんなうまいのです。そうして選び抜かれたダンサーたちは、当然ですが身体能力が抜群で、踊りが段違いでうまいのです。アメリカのショー・ビジネスの世界の底力や、そこで勝ち抜く競争の厳しさを垣間見た気がしました。 ◆すべての動きが、まるでダンス マイケルは「素晴らしい歌声・歌唱力と、作詞作曲の能力と、ケタ外れに上手いダンス」という3つの天賦の才能を与えられました(できなかったのは楽器くらいでしょうか?)。改めて思ったのはとくにダンスの才能で、この人は普通の人間ではなかったということです。 踊っていない時でも、マイケルは、歩く一歩、一歩、手の上げ下げなど体の動きのすべてがダンスになっているのです。きっと、頭や手や足がすべて、無意識にそういう風に動くように、体の底から染みついているのです。これもおそらく「天から与えられたギフト」なんでしょう。 ◆音づくりへのこだわり 映画を観るまではステージでのマイケルは、音づくりに関してはおそらく、ツアーを仕切る音楽プロデューサー(またはディレクター)に任せているんだと思っていました。しかし、リハの風景をみると、テンポや音量、アレンジやコードにもかなり口を出しています。ベースシストの弾き方を、びっくりするくらい上手い「口(くち)ベース」で真似してみて、「こんな感じでもっとファンキーに弾いてくれ」と言ったシーンには笑いましたが…。 演奏家としてはマイケルより練達の人たちはいっぱいいる訳ですが、やはりそこは「キング・オブ・ポップ」です。マイケルが「こうしてくれ」「こんな感じで」と言うと、「分かった」と従っています。やはりツアーを最終的に仕切ったのはマイケルだったのです。 ◆いいステージにはカネがかかる このツアーのステージ・セットには凄いお金がかかったということが分かります。ステージ後方にはLED(発光ダイオード)のディスプレーを配して、そこに曲に合わせて最新技術でいろんな映像を流すのですが、「スムース・クリミナル」では、映像中のマイケルがディスプレーから飛び出してきたら、生身のマイケルだったなんていう演出も考えていたようです。「スリラー」は3D映像で新たなコンセプトでショート・フィルムを撮り直していました。 映像だけでなく、シルク・ド・ソレイユばりのアリーナの空間を目一杯生かした、大がかりなパフォーマンスもあれこれ考えていたようです。全体として言えるのは、1曲、1曲のアレンジや演出を、マイケルも含めたスタッフで想像以上に一生懸命ディスカッションして、緻密に作り上げようとしている真摯な姿が印象的でした(正直言って、もっとスタッフ任せでいい加減につくっていると思っていました)。 ◆環境問題への強い思い 「アース・ソング」(1995年発表)という曲のバックでは、新たにつくった環境問題への取り組みを訴えるアマゾンの熱帯雨林の映像が流れます。熱帯雨林はやがて焼き尽くされ、ブルドーザーで押し潰されます。マイケルはメッセージでこう言っています。「次世代の子どもたちのためにも、この地球の環境を守りたい。誰かがやってくれるだろうではだめなんだ。僕ら一人ひとりが何かをしなくてはいけないんだ」と。 巨額のギャラを稼ぎ出すショー・ビジネスの世界にどっぷりはまっていながら、そんなカッコイイことだけを言うのは偽善者のように聞こえますが、実際にマイケルがこれまで成し遂げてきたチャリティの実績を考えた場合、決して偽善とは思えません。彼は結構真面目に次世代のことや地球環境のことを考えていたに違いないと、僕は信じます。 ◆あまり見せなかった素顔 「初めて舞台裏を見せた」というのがこの「This Is It」のウリでしたが、実際観てみると、素顔と言ってもあくまでステージかステージの周辺に限ったマイケルです。素顔のごく一部を見せたに過ぎません。また、映画は個人的な記録として撮られていた映像をもとに作られた訳ですが、いくら「個人的な記録として」とは言っても、撮られているのは分かっていた訳ですから、カメラをまったく意識しなかったということはないでしょう。 だから、この映画の素顔のマイケルは「本当の素顔」なのかと言えば、それは大いに疑問です。ステージやその周辺だけでなく、もっともっと舞台裏、例えば楽屋や自宅、移動中の車内などでの素顔のマイケルを観たかったと思うのは、僕だけでしょうか。映像や音楽も演出も素晴らしい内容だったのですが、そういう意味では物足らなさを残しした映画でした。 いずれにしても、マイケルのような唯一無比のアーチスト、ミュージシャンはもう当分は出てこないでしょう。観れば観るほど、彼がだんだん人間とは思えなくなってくる僕がいました。やはり、マイケルは神が地上に使わした天賦の才能だったと信じて疑いません。そして、彼を誤って死なせてしまった専属医師を恨まずにはおれません。ソロで初来日した1987年、大阪球場で観た彼の生パフォーマンスは今も忘れられませんが、それを思い出すのは、今となってはとてもつらいと言うしかありません。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/01/30 04:30:29 PM
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