第二十八話「仲良し」

とある森の中を行く一同。
アメ「あ……波の音だ。」
アメモンがふともらした一言に、一同は歩みを止める。
ゲンキ「波? じゃあ、海が近いって事か?」
ゲンキは、アメモンにそう聞く。
アメ「あー、多分……。近いよな、サンダー?」
アメモンは、少し自信が無いらしく、サンダーに確認を求める。
サンダー「…そうなんじゃない? 塩の匂いもするし、風も塩分含んでペタついてるし。」
サンダーは、淡々とそう答えた。
アメ「じゃあ、間違いないな。」
サンダーの答えを聞くと、アメモンは嬉しそうにそう言った。
グミ「本当?! じゃあ、早く行こうよ、アメ!」
グミモンはそう言ってアメモンの手を引っ張る。
アメ「おうっ!」
アメモンはそう答えると、グミモンに手を引かれたままで走っていく。
ゲンキ「あ、待てよ!! モッチー、おれ達も行くぞ!」
ゲンキはそう言うと、モッチーの手を掴んで走り出す。
モッチー「チ~~! ホッパーも行こうッチ~。」
モッチーは、ゲンキに手を掴まれたまま、ホッパーを誘う。
ホッパー「ホパ……ホッパ~!」
ホッパーはそう答えると、モッチーの後を追って走っていく。
サンダー「……あ。………そっち、多分崖だから……」
サンダーがそう言いかけたその時、アメモンとグミモンの悲鳴が聞こえた。
サンダー「…“気ぃ付けろ”って言いたかったんだけど………遅かったみたいだね。」
サンダーは、先程の言葉に続けるようにしてそう言った。
その口調には、焦りも心配も戸惑いも感じられなかった。
グレイ「そういう事ァ先に言ってやれよ。」
グレイも、これまた焦ることも無く、そうツッコミを入れた。そのツッコミに、サンダーはペロっと舌を出した。
ギンギライガー「……取り敢えず、グミモンとアメモンを助けに行くぞ。」
ギンギライガーがそう言うと、一同はグミモン達が走っていったほうへと向かって行った。

一同がその場に着いてみると、そこはサンダーの言ったとおり崖になっており、その下は海が広がっていた。
そして、グミモンとアメモンはというと、何とかゲンキ達に引き上げられていた。
オルト「大丈夫か? 2人とも……。」
オルトがそう話しかけると、グミモンとアメモンはコクリと頷く。
グミ「ってゆ~か~、サンダー。崖があるならあるって~、何で言ってくれなかったのさ~?!」
グミモンは、サンダーにそう問いかける。
サンダー「言ったじゃん。……ちょっと遅かったみたいだけど。」
サンダーは、淡々と答えた。
アメ「先に言えよ! そう言う大事な事はさぁ!!」
アメモンは、サンダーを指差してそう言う。
サンダー「あー……うん、今度からなるべくそうするよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・覚えてたらな。」
サンダーはそう答えた。
アメ「お前な~~~~!!!」
アメモンは、右手をぐっと握りしめ、そう怒鳴る。
頭には怒りマークがたくさん現れていた。
グレイ「まァまァ……。この海はこんなに蒼いんだから、怒ってるなんて勿体ねェだろ。」
グレイは、アメモンを宥めるようにそう言った。
アメ「……まぁ、そうかもしんねぇけど……。」
アメモンはそう言うと、海のほうを向いて海を眺める。それと共に、一同も海を眺める。
…そんな中、崖先には近付きもしない者が2名……。
チョコ「サンダーもゴーレムもおいでよ。海、キレイだよ?」
チョコモンは、崖から少し離れた所にいる2人に気付くと、そう話しかけた。
ゴーレム「ゴー……ゴーレム、ここで、良い。」
ゴーレムは、少し焦ったようにそう答える。
チョコ「そう? そこだと、海、ちゃんと見えないんじゃない?」
チョコモンはそう問いかける。
ゴーレム「大丈夫。ゴーレム、ちゃんと見える。」
ゴーレムはそう答える。
チョコ「そう? なら良いけど……。あ、サンダーは?」
チョコモンは、今度はサンダーに話を振る。
サンダー「……ベツにどーでも良いよ。おれのこの目じゃ、どうせ海なんか見えないし。」
サンダーはチョコモンから目を逸らし、イラ付いた様子でそう答えると、道の端っこで丸くなった。
チョコ「あ……いや、サンダー。ぼく、そんなつもりじゃ……。」
チョコモンは“しまった”と思いながら、弁解するようにそう言う。
グレイ「……ヤレヤレ。」
グレイは溜息を吐いてそう呟くと、サンダーのほうに歩み寄り、サンダーのすぐ横にしゃがみ込む。
その音に、サンダーはピクリと耳を動かし、そっとグレイのほうを向く。
グレイ「お前さ、自分だけ海が見れないからってそんな拗ねんなよ。」
グレイはクククッと笑いながらそう言って、サンダーを指で突く。
サンダー「……ベツに、拗ねてなんかないよ。」
サンダーはそう答えると、グレイから目を逸らす。
グレイ「な~にが“拗ねてない”だ。あからさまに不機嫌そうな顔してさっ。」
グレイはそう言うと、サンダーを抱え上げ、自分の頭の上に乗せる。
サンダー「グレイ?」
突然の事に、サンダーはそう問いかける。
グレイ「しばらく肩車しててやっから、機嫌直せよ。……な?」
グレイはそう言うと、上(サンダーのいるほう)を向いて、満面の笑みを浮かべた。
肩車?
サンダー「……これ、肩車?」
サンダーは、訝しげにそう聞く。
実は、サンダーの後ろ足は僅かにグレイの肩に届いてなく、
サンダーは完全にグレイの頭の上に乗っかっている形となっていた。
グレイ「あー……。まァ、肩車じゃねェけど……。」
グレイは、困ったようにそう言う。
そんなグレイの様子に、サンダーはクスクスと笑い出す。
グレイ「お、機嫌直ったか?」
グレイは、そう問いかける。
サンダー「うん、直っちゃったみたい。」
サンダーは、笑いながらそう答える。
グレイ「そら良かった。」
グレイは、満面の笑顔でそう返した。
ホリィ「……仲が良いのね。」
ホリィは、優しく笑ってそう言う。
オルト「……喧嘩もするけどな。」
オルトは苦笑してそう言った。
チョコ「でも、喧嘩するほど仲が良いとも言うじゃない。」
チョコモンは笑顔でそう言う。
サンダー「うん、グミモンとのはそれなんだけど、グレイとのは違うから。」
サンダーは、笑顔で淡々とそう答える。
アメ「どう違うんだよ?」
アメモンは、そう問いかける。
サンダー「……グミモンとのは、楽しめるんだよ。でもね、グレイとのは、何かすっきりしないまま終わるし、特に楽しくも無い。」
サンダーは、そう答える。
グレイ「そうか? オレは楽しいけどな~。………お前からかって遊ぶのも♪」
グレイは、ケケケッと笑ってそう言った。
サンダー「グレイ~、このまま頭かじって良い?」
サンダーは、少しイラ付いた様子で(牙を構えつつ)、そう言った。
グレイ「駄目に決まってんだろ! ってか、齧ったりしたら即叩き落とすからな!!;」
グレイが少し焦った様子でそう答えると、サンダーはそっぽを向いて舌をペロッと出した。
ゲンキ「……な、そろそろ行こうぜ、皆!」
ゲンキは、サンダーとグレイの会話が一時中断したのを見計らってそう言った。
チョコ「そうだね。……じゃあ、どっち行こうか、サンダー。」
チョコモンは、サンダーに聞く。
グレイ「あ? 何でサンダーに聞くんだよ?」
グレイは、怪訝な顔でチョコモンにそう問いかけた。
ニナ「ほら、サンダーって未来予知ができるじゃない?」
ニナは、そう返す。
グレイ「あァ……。ケド、それが何だってんだよ?」
グレイはまだ納得がいかないらしく、再びそう聞く。
チョコ「だからね、ぼくらはいつも、サンダーの未来予知で、これから何処に行くべきか見てもらってるんだ。」
チョコモンは、ニナの言葉に続けるように、そう答えた。
グレイ「へェ~……。ちゃんと見えんのか?」
グレイは、頭の上のサンダーを覗き込むようにして、そう尋ねる。
サンダー「……あんまり、自信はないんだけどね。」
サンダーは、困ったように笑ってそう言う。
グレイ「お前も相変わらずだなァ。…もっと自分の力を信じろって。」
グレイは、苦笑してそう言う。
サンダー「うん……。グレイ、このままの状態で未来予知しても良い?」
サンダーはそう聞く。“このまま”とはつまり、“頭の上に居たままでも良いか”という事だろう。
グレイは、その意を素早く理解すると、快く了承した。
サンダー「ありがと、グレイv」
サンダーは、グレイに軽くお礼を言うと、瞳を閉じて意識を集中し、未来予知を始めた。

それからしばらくすると、サンダーは未来予知を終えたらしく、そっと瞳を開いた。
グミ「サンダー、ど~なった~?」
グミモンは、サンダーのもとに駆け寄り、そう尋ねる。
サンダー「……海、渡ったほうが良いみたいだね。」
サンダーはそう答えた。
ライガー「そうか……。なら、船を捜す必要があるな。」
ライガーは、サンダーの言葉に応えるようにそう言った。
ゲンキ「……じゃあ、港町に行かないとな。」
ゲンキはそう提案する。
スエゾー「よっしゃー! 町の場所なら任せときー! ゴーレム!!」
スエゾーがそう言うと、ゴーレムはスエゾーを掴んで空へ投げ飛ばす。
グレイ「おー、高いなァ……。」
グレイは、投げられたスエゾーを見上げてそう呟く。
サンダー「ホント、毎回毎回あの高さから落ちて、よく無事だよね~。」
サンダーがグレイの言葉に答えるようにそう言うと、チョコモン達は「ね~」と相槌を打った。
グレイ「……受け止めてもらえねェのかよ;」
グレイの言葉に、一同は頷く。
スエゾー「見えたで~! この方角や~!!」
スエゾーがそう言うと、一同は自分の目でも確かめようと、スエゾーの言った方角――南東を見る。
……当然、ゴーレムも共に。その結果、落ちてくるスエゾーを誰も受け止めようとはしない。
スエゾー「受け止めてんか~~!!」
スエゾーは落下しながらそう叫ぶ。それによってゴーレムが構えるが、間に合いそうもない。
……そして、後ちょっとで地面にぶつかるといった時、突然スエゾーの身体が宙に浮いた。
一同「?!」
その光景に、一同は驚く。その状況をよくよく見ると、スエゾーは紫色の光に包まれている。
一同は、この光に見覚えがあった。
チョコ「そっか、サンダー……。」
そう、サンダーの念と同じ光だったのだ。
しかし、一同がサンダーの居るほうを向くと、サンダーは微塵も光を纏ってなどいなかった。
その代わり、グレイの右腕は、スエゾーを包んでいるのと同じ光を纏っていた。
それに、一同は更に驚く。
そう、念でスエゾーを受け止めたのは、サンダーではなくグレイだったのだ。
……一同が驚いていると、グレイはそっとスエゾーを地面に降ろす。
サンダー「反応早いね、相変わらず。」
サンダーは、満面の笑顔でグレイにそう言う。
グレイ「まァな。」
グレイは、自慢げに笑ってそう答えた。
一同「グレイが……スエゾーを助けた……?」
一同は、驚いて目をパチクリさせつつ、そう呟いた。
グミ「わ~、すごいね、グレイ! グレイも念なんか使えるんだ~。」
グミモンは、興味津々と言った感じに目を輝かせてそう言う。
グレイ「……まァ、な。」
グレイは、少し恥ずかしそうに笑ってそう答えた。
ハム「……グレイがスエゾーを助けるとは……。」
ハムは、心底驚いた様子でそう呟く。
グレイ「? だって、仲間なんだろ? オレら。だったら、助けるのは当然じゃねェか。」
グレイはそう言うと、ニィッと笑った。
スエゾー「…あ、あんがとさん……。」
スエゾーは驚きつつも、そうお礼を呟いた。
グレイ「どういたしまして。」
グレイは、柔らかく笑ってそう言った。
ゲンキ「よ~し、それじゃあ行こうぜ!!」
ゲンキの言葉を受け、一同は港町に向かって出発した。


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