第三十話「船」

ようやく港町へたどり着いた一同……。
ゲンキ「よっしゃ~! おれの勝ちだ~!!」
モッチー「チ~~……。」
ゲンキは港町へ着くと、嬉しそうにそう言い、モッチーは残念そうに呟いた。
その後ろでは、グレイが疲れきった様子で木に寄りかかっていた。
オルト「……大丈夫か? グレイ;」
サンダー「ったく、長距離苦手なくせに競争なんかするからでしょ?」
グレイ「うっせーな……。後ろから走って追い抜かれたら、追い抜き返したくなんだろ!!」
サンダー「どーせ序盤で力使い果たしちゃうくせに。」
グレイ「………悪かったな;」
グレイは、そういうとプイッとそっぽを向いた。
チョコ「グレイ、走るの苦手なの?」
オルト「いや、短距離だと速いんだけど、何故か長距離だとすぐばてるんだよな……。」
チョコ「へ~……。じゃあサンダーと逆だね。サンダーは長距離のほうが得意だもん♪」
オルト「アイツの場合、単に体力がもってるだけだけどな。」
チョコモンの言葉に、オルトは苦笑してそう答えた。
ゲンキ「さ、港町にも着いた事だし、早速船を探そうぜ!」
ホリィ「そうね。」
ニナ「ところでサンダー。海の向こうって、どこに行くの?」
サンダー「え? あぁ、方角? ちょっと待ってて。今、もう一回未来予知で探してみるから。」
サンダーはそういうと、目を瞑って未来予知を開始した。
それから1分後、サンダーはゆっくりと目を開けた。
アメ「…珍しく遅かったな。」
サンダー「うん……。島の名前とか良く分かんなくって……。」
サンダーは、苦笑してそう答えた。
ゲンキ「で? 行き先はどこなんだ?」
サンダー「えっとね、島の名前までは分かんなかったんだけど、方角的には南のほう。暖かくって、遺跡がいっぱいあった。」
ホリィ「南の島?」
グレイ「それって、“エージ島”じゃねェか?」
一同「エージ島?」
ハム「ムハ、聞いたことありますぞ。確かその島には、珍しいモンスターがいっぱいいるとか……。」
ニナ「じゃあ、目的地はそのエージ島ね!」
ゲンキ「あぁ! エージ島に行く船を探そうぜ!」
ゲンキがそう言うと、一同は船探しを開始した。

――しかし、なかなかエージ行きの船は見つからない。
ゲンキ「ないな~。」
ホリィ「そうね……。」
モッチー「チ~。」
ホッパー「ホッパ~……。」
一同は、それぞれため息を吐いた。
サンダー「…見つからないなら、無理に探す必要ないかもね。」
サンダーは、すこし困ったような表情でそう言った。
ゲンキ「サンダー! 何でそんな事言うんだよ!!」
サンダー「だって、見つからないなら、今は海を渡る時じゃないのかもしれないし……。」
アメ「ケド、サンダーは未来予知して、海を渡らなきゃって思ったんだろ? だったら今が渡る時だろ。」
サンダー「でも、おれの未来予知は確実じゃないもん。」
サンダーは、耳も尻尾もぺしょりと下げて自信なさ気にそう言った。
グレイ「サンダー。海を渡る未来が待ってんなら、船を探すのが、その未来に進むための債務だろ。」
グレイは、そういうとサンダーの頭を優しく撫でた。
サンダー「うん……。そ、かな………。そぅだよね!」
グレイの言葉に、サンダーは元気を取り戻したように、下げていた尻尾と耳をピッと上げた。
チョコ「……やっぱすごいね、グレイ。サンダーの機嫌、あっとゆう間に直せちゃうなんて……。さすがお兄ちゃんって感じだねv」
チョコモンは、落ち込むサンダーをあっという間に立ち直らせたグレイに感心したように、笑顔でそう言った。
グレイ「そうか?」
チョコモンの言葉に、グレイは嬉しそうに頬を赤らめた。
サンダー「でさぁ、グレイ。船探すとして、もっと効率的な事ないの?」
グレイ「はぁ? んなのオレに聞くなよ;」
グレイがそう答えると、サンダーは「やっぱり?」と言って苦笑した。
そんな風に、一同がほのぼのと話していると、ゲンキ達はすこし離れた所に、見覚えのある船が停泊しているのを発見した。
ゲンキ「あれは……!」
そう言ったゲンキの目線の先には、角の生えたスエゾーの像を船首に付けた海賊船があった。
グミ「な~に~、アレ~。海賊船~?」
モッチー「ツノマルの海賊船だッチー!」
モッチーは、嬉しそうにそう言った。
ニナ「つのまる?」
ホリィ「えぇ。私たちの知り合いの海賊なの。」
ニナの言葉に、ホリィは笑顔でそう答えた。
オルト「え、海賊と知り合いなのか?!」
ゲンキ「へへっ、まぁな。」
ゲンキは、自慢げに胸を張ってそう言った。
……などと話していると、船から角の生えた青いスエゾーノ様なモンスターが顔を出した。
モッチー「チ~、ツノマルだッチ~♪」
ゲンキ「あ、ツノマル! 久しぶ――……。」
ゲンキが言い終わらないうちに、ツノマルは船から飛び降りてきた。
ツノマル「久しぶりだがやホリィちゃんvv」
見事ホリィの目の前に着地したツノマルは、そう言ってホリィにキスをしようと迫った。
しかし、ホリィはそんなツノマルを思いっきり殴った。
ホリィ「……久しぶり。」
そんなホリィとツノマルに、ゲンキ達は苦笑し、チョコモン達は驚き固まった。
ニナ「あの……。大丈夫ですか?」
ニナは、ツノマルを覗き込んでそう言った。
ツノマル「大丈夫だがや。それより、お嬢さんの名前はなんていうんだぎゃ?」
ニナ「私はニナよ。」
ニナは、笑顔で答えた。
ツノマル「ニナちゃんか~。どえりゃ~可愛え~がや~Vvv」
ツノマルは、目をハートにしてそう言った。
ニナ「そう? ありがとう。あのね、私達エージ島に行きたいんだけど、乗せて行ってくれる?」
ツノマル「勿論だがや! 2人で愛の逃避行と行こまいvv」
スエゾー「まてや! オレらも一緒に乗せて行かんかい!!」
スエゾーは、ツノマルとニナの間に割り込んでそう言った。
ツノマル「何じゃ、スエゾー。おみゃーさんも居ったんか。」
スエゾー「最初っから居るわ!!」
チョコ「あの……。ぼくらも一緒に乗って行って良い……ですか?」
チョコモンは、ツノマルを覗き込むようにして、遠慮がちにそう聞いた。
ツノマル「ん? おみゃーらは……?」
チョコ「あ、ぼくはチョコモンって言います。」
チョコモンはそう言って礼儀正しくお辞儀をした。
グミ「僕はグミモンだよ~♪」
アメ「オレはアメモンだ。」
グミモンとアメモンは、チョコモンに続くように自己紹介をした。
ギンギライガー「……俺はギンギライガーだ。そして、こっちはホッパー。」
ホッパー「ホッパ~♪」
サンダー「おれはサンダー!」
グレイ「オレはグレイだ。」
オルト「オレはケルベロス一族の末裔、オルトだ。」
ギンギライガー達は、チョコモン達に続くように自己紹介をした。
ツノマル「おみゃーらの新しい仲間だぎゃ?」
ツノマルは、ゲンキ達の方を向いて、そう問いかけた。
ゲンキ「ああ。良いだろ? 一緒に乗せてもらっても。」
ツノマル「そりゃあ勿論だがや。……よし、それじゃあ早速行こまいか~。皆はよぅ乗り込みぃ~!」

そうして、一同はツノマルの船に乗り込んだ。――しかし、何故か一人足りない。
チョコ「あれ? ゴーレムは?」
チョコモンの一言に、一同がハッと気付いてゴーレムを探すと、ゴーレムは港で手を振っていた。
スエゾー「ゴーレム! お前、またそんな事しとるんかい!! はよ乗らんかい!!」
ゴーレム「ゴーレム、行けない。ここで、お別れ。」
ゴーレムは、スエゾーの言葉にも動じず、笑顔で手を振ってそう言った。
ゲンキ「大丈夫だって、ゴーレム! 落ちたらおれがちゃんと助けてやるから!!」
アメ「え……。もしかしてゴーレム、泳げないのか?」
ゲンキの言葉に、アメモンはふと気が付いてそう問いかけた。
すると、ゴーレムはギクッとして固まり、ゲンキ達は無言で頷いた。
グミ「な~んだよ、ゴーレム。たかが泳げないくらいでさ~。」
グレイ「そーだよ。オレもオルトロスも泳げねェんだから、んな考え込む事ねェだろ!」
グミ「そ~そ、モーマンタ~イ。僕だって泳げないもんね~。」
そう言う2人の顔には、危機感も戸惑いもまったくもって見えず、堂々と言う2人に、一同は逆に驚いた。
しかし、そんな2人とは逆に、オルトはちゃんと落ちないように船の中央付近に大人しく座っていた。
サンダー「お前らさぁ、もうちょっと泳げないことに対する危機感とかないの?;」
グレイ「危機感も何も……。オレ飛べるし。」
グミ「それに~、たとえ僕らが落ちちゃったとしても、サンダーがすぐに助けてくれるからモーマンタイじゃ~ん♪」
サンダー「(…もうこの2人助けんのやめようかな……;)」
サンダーは、危機感0のカナヅチ2人を前に、大きくため息を吐いてそう考えた。


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