「容疑者Xの献身」 東野圭吾著
読者には犯人がわかっている。犯人の協力者もわかっている。その協力者は天才で、彼の作り出したアリバイを、警察はどうしても切り崩すことができず・・・。 読者には犯行の経緯などがわかっているわけですから、草薙さんはじめ警察の考察、草薙さんと湯川先生のやりとりなどは、「神の視点」で読むことになります。肝心なところにはたどり着けないものの、それでも推理力ありすぎ、という気はしました。結構綱渡りな感じが。もちろんそのまま話が進むのではなく、事件には大きなトリックが隠されていて、終盤それまでの停滞感が一気にすっとぶという・・・。そして、「献身」という言葉が納得できる。 以下、反転。やけに犯行の日付が出てくるなぁ、とは思ってました。なので、日にちが違うのか? とはなんとなく感じて、でもどうやって時間ずらしたんだろう? とは考えたんです。 正直途中まで、どうしてこれが直木賞だったのだろう、って疑問だったんです。面白いけど、普通に推理小説だなぁ、って。でもラストの「献身」が明かされる部分で、この物語全体の色をふわあ、っと別な色に変えるこの勢い。やられた、と思いました。 一年前にハードカバーで読んでいた友達に、読んでる、って話をしました。友達が、「石神は誰が演るの?」と訊くので、「それがさー、堤さんみたい」と私が言うと、友達は「えー?!」えー、ですよ、私も。そりゃ役者さんなんで、外見だめだめにはできるでしょうけど。私のイメージは、石塚さん(ホンジャマカ)。友達も、そうそう! そっちだよー、って。そしてスマートな印刷会社の社長さんが、ダンカン・・・。大変失礼だけど、せめて逆にして欲しかった、と思うのは私だけじゃないと思う。役の重要性からいったら正しいのかもしれないし、涙誘うかもしれないけど・・・うーん。容疑者Xの献身