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Oct 8, 2005 楽天プロフィール Add to Google XML

演劇評論:『現代演劇の変遷と問題』(その2) 映画、演劇、小説、マンガ等の感想(1537)」
[ 演劇評論 ]    

現在形の批評 #13(演劇評論)


『現代演劇の変遷と問題』(その2)



 演劇界における影響力が減少した唐十郎と鈴木忠志だが、彼らの明暗はやはり無視できない大きな問題である。唐は九七年から〇四年まで横浜国立大学の選任教授を務め、現在は近畿大学の客員教授に就任している。なぜ、大学教授という体制側の最たるポストに就いたのか、それはおそらく唐は少なからず舞台創作に限界を感じており、何らかの打開策が得られるのでは、との思いから引き受けたのだと思う。同じような内容は唐自身も語っている。その結果、〇三年に上演した『泥人魚』で唐は紀伊国屋演劇賞、読売文学賞、鶴屋南北戯曲賞を同時受賞したのである。ここに、常に「演劇とは何か」を考え、そのためには貪欲に新しいフィールドへ飛び込もうとする気負いを感じる。


 一方、鈴木忠志は静岡県へ立てこもってしまった。舞台創作は専ら静岡県舞台芸術センターと海外公演を中心としている。スタニスラフスキー賞を受賞するなど目覚しく活躍する一方、日本での公演が少ないのである。今や鈴木忠志を知ろうと思えばファナテックさにあふれるかつての著書を読むことしかない。そんな彼らの演劇理念が今の若い世代に与える影響力の低下は不可避である。演劇はいくら言説を費やしても実践の場=舞台に勝ることはない。


 結論として言っておきたいことは、今こそアングラ世代の行った軌跡を踏まえる時期ではないかということである。それはアングラの復活を意味するものではない。先述したように演劇と社会状況は密接であるからだ。問うているのはこれまで述べてきたアングラの「思想」である。このままでは演劇はテレビドラマの二番煎じに成り下がってしまう。いや、すでに先述したように80年代以降の小劇場のポップ化現象により演劇はテレビの下位に位置づけられ、「いま」は「テレビ>映画>演劇」の表現階層が重視される順である。演劇をする理由を聞かれた若者の答えが「テレビに出て有名になりたいから」である。単なるステップアップしか考えられていず、「有名願望演劇」とでも呼べそうなものが闊歩している現状には危機感を抱かずにはいられない。


 しかし、発表される作品の傾向が「笑い」か「自分探し」に二分され、演劇でないとならない作品が減少していくのは当然といえば当然である。理由は明瞭である。先に挙げた表現階層順がそのまま私たちにとって身近な存在の順だからである。私自身、テレビドラマを見て演劇まで繋がってきた人間である。少し違ったことは、興味を持った俳優が舞台俳優であり、シナリオを書いたのが劇作家だった点であった。様々なことへの門戸が開かれているのがテレビである。それから演劇の世界へ飛び込むことは大いに結構だが、テレビで出来る事を演劇のフィールドで行うことの不毛性はこれまで述べたことを踏まえればすぐに了解できるはずだ。


 アングラの思想を踏まえるには、まず知らなければならない。唐十郎や鈴木忠志が再び注目されている潜在的な理由もここにあると密かに感じている。彼らは老いる暇はない。これからも突っ走ることが求められている。それが、テレビと演劇を混同し、勘違いなものを世に出さないための一つの処方箋である。


 コントや漫才は「テレビ」でも「舞台」でも目標が「笑い」であるが故に受け入れることは容易い。が、同じ演技であっても「演劇」と「ドラマ・映画」では性格が違う。この論考は演技に特化したものではないので詳しくは論じないが、日常生活における人々・感情を移行させる「リアリズム」では成立しないのが「演劇」であることを記しておく。


 演劇はもはや運動ではなくなったのだろうか。演劇でしか成しえない劇的興奮が感受できる作品はもはや無理なのだろうか。否である。そのためにファッションとしてしか捉えられていない演劇を見直し、アングラの思想を再考する所から出発しなければならない。


引用文献
(注一)鈴木忠志 『騙りの地平』 白水社 1981 pp.112
(注二)鈴木忠志 『騙りの地平』 (前掲) pp.69
(注三)鈴木忠志 『騙りの地平』 (前掲) pp.113
(注四)山口猛『同時代人としての唐十郎』 三一書房 1980 pp.11

参考文献
 扇田昭彦 『日本の現代演劇』 岩波書店 2000


Last updated  Jan 13, 2007 11:12:06 PM
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いい感覚だね。   中村隆一郎さん


Re:いい感覚だね。(10/08)   dramatic criticismさん


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