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喉元過ぎれば熱さを忘れるのは日本人の悪い習性。新潟県中越沖地震によって引き起こされた柏崎刈羽原子力発電所の事故は、発生から2週間経った現在も、毎日のように新たなトラブルの実体が確認されている。喉元を過ぎてさえいない。私たち一般人は各報道メディアを通じてしかそのトラブルとは如何なるものであるかを知るすべはない。真相追究するジャーナリズムの熱意と使命感に期待する。
私自身、事態に対する認識を明確にするために、過去4回、この原発事故について書いて来た。ここでまた、その後に明らかにされた事実を確認しておこうと思う。 【1】 17日、7号機排気筒からヨウ素等の放射性物質が大気中に放出されたことを確認。その後も放出は止まず、18日夜までの間に、大気中へ放出された放射能量は約24万ベクトル。放射線量は合計1千万分の2ミリシーベルト(法定公衆線量の限度の500万分の1)。 [原因(東京電力の見解)]; タービン復水器にたまっていた放射性物質がタービンの軸を封じる部分から空気に混入して排気筒へ流出。原子炉停止時に、手動で止めるべき機器が、操作手順の誤りによって、止まらずに動きつづけていた。 【2】 19日、東電は刈羽原発内にある97台の地震計の記録のうち、63台の本震の波形データの一部が消えたと発表した。消えたのは全7機のうち、1号機、5号機、6号機にある地震計の波形データの大半(最大で1時間半におよぶ)。これによって、原子力発電の重要器機や建物がどのように揺れたか等、今後の安全性の解析に影響がでると見られる。ただし解析に最も重要とされる最下階のデータは全機分が残った。 【3】 1号機の原子炉建屋において、消火用配管が損傷。これにより水漏れが止まらず、地下5階に水深40センチまで溜まる。この水は、床に存在した放射性物質で汚染されていた。 その後の東電の調査で、この水漏れは放射性物質がある放射線管理区域に約2千トンが流れ込んでいたことがわかった。 [原因(東京電力の見解)];1号機は固い地盤のうえに建造されていたが周囲は砂の層であったため、地震発生時に約20~30センチの地盤沈下が起った。これによって地下に埋設されていた消火用配管が破裂した。流出した水は建屋地下の電気ケーブル引き込み口に生じた隙間から建屋内に入った。放射線管理区に入ったことで水は放射物質に汚染された。溜まった水は2千トンにのぼると見られる。 【4】 建屋4階にある6号機から、使用済み核燃料プールの放射性物質を含む水が、放射性管理区域から非管理区域を通じて海に流出。 [原因(東京電力の見解)];原子炉建屋内の燃料取り替え機の電線引き込み口(直径8センチ)を伝って、中3階と3階に流れ出たため。ケーブル引き込み口の隙間をふさぐパッキングがゆるんだためと見られる。 【5】 4号機と7号機のプールにおいて、使用済み核燃料が入った囲いの上に水中で器機類を載せる鉄製作業台(重量200キロ)が落下。 【6】 24日、東電は6号機原子炉建屋の天井の可動式クレーン(長さ約35メートルの棒状、重量約310トン)の車軸の継ぎ手部分が破断しているのを確認した。このクレーンは、原子炉内の点検や核燃料交換時に、格納器や圧力容器の蓋を吊り上げるために使用する。地震が起ったとき、このクレーンは原子炉の真上にあった。 車軸継ぎ手が破損しても、クレーン本体は両端のレールに支持されているため、落下の可能性がない(東電見解)とされているが、「想定外」のトラブルつづきで、はたしてこの見解が信用できるものなのか、証拠はない。 【7】 東電は柏崎刈羽原発の3号機の地震発生時の使用済み核燃料プールの監視ビデオ映像(16日午前10時11分11秒以降)を公表した。水が大波となってプールの縁を越えて外に溢れ出る様子が映っている。 【8】 26日、柏崎刈羽原発の4ケ所の放射線区に30トンの雨漏りを確認。4ケ所は以下のとおり(データは7月27日付朝日新聞14版の三浦英之氏の記事による)。 ◆ 1号機のタービン建屋地下2階の低圧復水ポンプ室に約12トンの雨水。 ◆ 3号機のタービン建屋地下1階の南側通路に約0.12トンの雨水。 ◆ 個体廃棄物貯蔵庫地下1階に約17トンの雨水。 ◆ 補助建屋地下1階に約0.47トンの雨水。 【9】 27日、ここにきてもまだ東京電力は真相を隠蔽しようとしていたことが明らかになった。使用済み核燃料プールから水があふれ出たばかりではなく、これまで公表していない1号機原子炉部分の水もあふれていたことが判明した。 原子炉とプールの間で核燃料を移動させる際、二つの施設の水路を繋ぎ、水の中を移動する。地震発生当時、1号機は定期点検を終わって、原子炉内に水を満たしてプールと繋ぎ、核燃料をプールから炉に戻す直前であった。格納容器などの附属施設の蓋も開けられた状態であった。地震が起ったのはこのような作業途中で、地震の揺れで炉の中の水があふれた。点検が終了していなかったので、炉の中に核燃料は入っていなかった。 5、6号機も点検中であったが、これら二つの機は炉内に核燃料を戻した後で、格納容器の蓋をしめた後の地震であった。したがって内部の水はあふれ出なかった。 【10】 4号機の復水器水室で、冷却用の海水を循環させるゴム製の配管(直径2.6メートル)が、復水器に送り込む手前で円周方向に長さ3.5メートルの亀裂が生じ、そこから海水約24トンが放射線区域に流入したことが判明。床の塩分除去には時間がかかると見られる。 現在(30日)までに各報道メディアによって確認された情報をまとめると以上のようである。 これに加えて、原子力発電所の防災状況等について次のように報道されている。 【1】 経済産業省が、今回の地震による原発事故が起ったのを受けて遅まきながら国内原発11社の全55基と日本原燃の消火体制を調査した。結果は、ゾッと背筋が凍るような状態だった。消防常駐隊は日本原燃の六ヶ所村再処理工場に組織されているだけで、原子力発電所には皆無。地元消防署への通報回線は5社に止まる。化学消防車を装備していたのはわずか4社。次のとおり。 ◆ 東北電力:女川原発に1台 ◆ 中部電力:浜岡原発に1台 ◆ 関西電力:美浜原発に1台 ◆ 日本原子力発電:敦賀原発に1台、東海原発に1台 ◆ 日本原燃:六ヶ所再処理工場に1台(常駐の専門消防隊を装備) なお、柏崎刈羽原発では事務棟に緊急時対策室があり、地元の消防署との間にホットラインが設けられていたが、地震によって建物が歪んで扉が開かなくなり、ホットラインが機能しなかった。今後の対策に重要な示唆を残した事態である。ホットライン敷設という、システム処理で済む問題ではない。そのシステムが如何なる緊急時にも機能するような、「支持体」を開発する必要に迫られているだろう。 【2】 22日、経済産業省原子力安全・保安院は、柏崎刈羽原子力発電所に国際原子力機関(IAEA)の調査団を受け入れることを決める。 新潟県中越沖地震によって柏崎刈羽原子力発電所がこうむったトラブルについて、関係者はいずれも「想定外」を繰り返しつづけている。しかし、考えてみるまでもなく、そもそも原子力発電のトラブル・データの蓄積は極めて少なく、すべてが未経験の領域に挑んでいるのである。そのことを日本のみならず世界のすべての人が認識しなければならない。 その点、わが日本の原発業者は国策の上にたつ事業とはいえ、企業目的が優先し、安全面についてはいささかの厳密さも厳格さもないことが明らかになった。おそらく、今回のトラブルが起ってさえ、彼等があたふたしているのは経済産業省原子力安全・保安院に対してどのように取り繕うかという「企業的保身策」にちがいない。それが透けてみえるのは、じつは経済産業省原子力安全・保安院の態度に反映しているからだ。事故直後におこなわれた安全・保安院の新潟県知事とのやりとりは、住民意識とはかけ離れた呆れるほどトンチンカンなもの、と私は感じた。恥知らずとさえ言える。 安全・保安院がいかに怠慢であるかは今回はじめて国内原発11社の全55基と日本原燃の消火体制を調査したという、その事実を見れば分かる。安全・保安院はいったい何をしていたのだ。日本のすべての行政省庁のあの傲慢な態度で、原発業者が真相を言うに言えないような陰険な小突き回しをするだけだっとのではないか。原発の周囲には醜悪な金のバラ撒きが取りざたされ、住民人心の荒廃まで噂されている。そのような風評を耳にしている私としては、安全・保安院の怠慢を知るにつけ、お前たちもまた良からぬ金にまみれているのではあるまいなと、あらぬ考えが浮んで来る。 それほど尋常ではないということだ。国民の安全、世界人類の安全のために働かなければならない者が、それが出来ぬと言うなら、役職を去れ。われわれ国民は、働かない者に無駄飯を食わせるつもりはないのだ。 世界中が、日本の原子力発電所の防災体制を見つめている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 31, 2007 10:15:05 AM
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