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人生朝露

人生朝露

クラウド アトラスと火の鳥 その1。

『クラウド アトラス(Cloud atlas)』(2013)。
今日は『クラウド アトラス(Cloud atlas)』について。

参照:映画『クラウド アトラス』長&超 予告編【HD】 2013年3月15日公開
https://www.youtube.com/watch?v=XPQTWE-uj5k

・・・明日観る予定です。

デイヴィッド・ミッチェル( David Mitchell 1969~)。
デイヴィッド・ミッチェルの原作を元にした長編映画で、アメリカではそこそこ。日本より一足先に公開された中国での興業成績が良かったようなので、日本ではどうなるんでしょうか。この作家さんはもともと比較文学の研究者で、英語教師として8年ほど日本で生活していたそうです。奥さんも日本人。

参照:Wikipedia デイヴィッド・ミッチェル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB

本人は村上春樹からの影響にも触れていますが、原作を読む限りでは、
『クラウド アトラス』(デイヴィッド・ミッチェル著)。 『豊饒の海 春の雪』 三島由紀夫著。
三島の『豊饒の海』に近い感じがします。あと、ボルヘスも入っていますね。構造も読むような小説です。広い意味での東洋思想を活用していることは見てとれます。仏教だけというわけでもないですが。

ま、原作ですらもすでに、
『火の鳥』 復活編 チヒロ。
手塚治虫の『火の鳥』のイメージはあります。
特に共通項としては「業(カルマ)」ですね。これは原作の段階であります。ストーリーの構造も手塚さんの意図と同じものです。

手塚治虫(1928~1989)。
≪第一部の黎明編のつぎは未来編となります。私は、あたらしいこころみとして、一本の長い物語をはじめからと終わりから描きはじめるという冒険をしてみたかったのです。そして、そのつぎの話は、またもや古代に移って黎明編のあとの時代の話となります。こうして交互に描いていきながら、最後には未来と過去を結ぶ点、つまり現在を描くことで終わるのです。それが、それまでの話の結論に結びつき、それが終わると、黎明編から遠い未来までの長い長い一貫したドラマになるわけです。
 したがって、ひとつひとつの話は、てんでばらばらでまったく関連がないようにみえますが、最後にひとつつながってみたときに、はじめてすべての話が、じつは長い物語の一部にすぎないということがわかるしくみになています。なぜなら、人間の歴史に、くぎりや断層などがあるわけがないからです。そのつなぎの役をするのが、狂言まわしの火の鳥ということになっています。
 おのおののエピソードは、どれも生命というものを、さまざまなみかたから描いて問題を定義するようにしました。それだけでなくドラマの描き方も、SFあり、戦争ものあり、推理ものあり、ギャグものありで、バラエティーにとませ、一本調子にならぬようにしています。
 あと何年つづくかわかりませんが、どうか「火の鳥」の評価は全編が完結したあとで、もう一度読みかえしていただいてからのことにしていただきたいと思います。そうでなければ、ご批判に対してお答えすることが困難な場合が多いからです。(『「火の鳥」と私』 手塚治虫 一九六九年一二月記)≫

ソンミ451(sonmi451)。
『クラウド アトラス』に登場する「ソンミ~451(Sonmi451)」は、『火の鳥 復活編』の「チヒロ61298号」と同じ雰囲気を感じます。全体を通しても「黎明編」「未来編」は必要でしょうが、一目で連想するのは復活編でしょう。映画ではどうかはわかりませんが「ユーナ~939」などはロビタの行動によく似ています。

『火の鳥 復活編』より。
≪--ファブリカントたちも我々と同様に夢を見るというのは、本当なのか?
 はい、記録官、わたしたちは本当に夢をみます。わたしはターコイズ色の波の向こう側にハワイが見える夢を見ました。「歓喜」の生活を夢見ました。パパ・ソンに褒められる夢を見ました。姉妹のことを、消費者のことを、リー監督のことを、補助役のことを夢見ました。悪夢も見ました。怒る食事客のことを、フードチューブが詰まることを、首輪をなくして恥ずべき星剥奪を受けることを夢見ました。
 --この刑務所であなたはどんな夢を見ているのか?
 不思議ないくつもの都市、白黒の大地を横切っての追跡劇、灯台での未来の処刑です。看守に起こされてあなたが案内されてくる前にはヘイ=ジュー・イムの夢を見ていました。パパ・ソンでも、この刑務所でも、ゾーン分けされた昼と夜の中で、わたしの夢は唯一、予測できない要素です。誰にも割り当てられず、検閲もされません。夢だけがわたしの本当に所有したことのあるものなのです。(以上デイヴィッド・ミッチェル著『クラウド アトラス』ソンミ~451のオリゾンより)≫

参照:「火の鳥 復活編」と荘子。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5019/

『Blade runner(1982)』。
こういうタイプの人造人間の物語については『ブレードランナー(Blade runner)』(1982)とその原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(Do Androids Dream of Electric Sheep?)』(1968)が真っ先に連想されます。『クラウド アトラス』のファブリカントはレプリカントのアレンジ。そのファブリカントに尋問する描写も『電気羊』ですね。(ちなみに、手塚さんの『火の鳥 復活編』は1970)。

原作者のデイヴィッド・ミッチェルは、禅や俳句についてもいくつか言及していますので、日本の文化を見る場合でも、フィリップ・K・ディックとの共通点があります。

参照:ディックとユングと東洋思想。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5141/

参照:<日本と私の著作>デヴィッド・ミッチェル
http://uraracat.exblog.jp/13798258/

ジョン・ケージと一柳慧。
そもそも、デイヴィッド・ミッチェルが証言していますが、『クラウド アトラス』というタイトル自体が一柳慧(いちやなぎ とし)さんの『Cloud atlas(雲の表情)』からだと言っています。一柳慧さんとは、ジョン・ケージと共に活動した前衛作曲家。オノ・ヨーコの元旦那さんでもあります。

参照:一柳慧 Cloud Atlas (for piano) - 3. Vivace
http://www.youtube.com/watch?v=M7XOPOPzh5k

ジョン・ケージと荘子。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5096/

作曲家一柳慧は語る(動画)――(1) 28日都響《ケージ&一柳慧について》
http://www.tmso.or.jp/j/topics/detail.php?id=340

white room matrix.
『マトリックス』と荘子について、しつこくやっている当ブログといたしましては、ウォシャウスキー兄弟(現在は姉弟)の新作は、避けて通るわけにはいきません。

参照:『マトリックス』と胡蝶の夢。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5102/

マトリックスと荘子 その1。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5053/

マトリックスと禅と荘子。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5054/

あとで推敲します。

今日はこの辺で。


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