パンダが無事ならそれで良いのか?
今回の四川省の大地震の報道で、まぁ訳のわからん議論が展開されておるけども、今回の震源地である、アバ・チベット族チャン族自治州ブンセン(さんずいに文に川)県の説明がちょっと欲しい。これだけニュースで中国の文句たれたり、同情しながら、その場所のことを知ろうとしないのはいかんです。そういえば、アメリカのCBSでは、聖火リレーの騒動のときに、「で、チベットって地図のどこ?」とデモをやっている人に向けて質問するという、非常に分かりやすいニュースを流していた。参照:Free Tibet, wait, where is Tibet?だいたいね、「リメンバー・パールハーバー"Remember Pearl Harbor"」なんていうのも、当時のアメリカ人がハワイにある真珠湾なんて、誰も知らなかったから "Remember"。すなわち「忘れるな」だけではなくて「覚えておけ」というような意味も強いのよ。アメリカ人っていうのは、そういうところがある。その調子で戦争をやるもんだから、アフガニスタンもイラクもボコボコ(泣)。日本人でも「フリー・チベット!」と叫びながら、チベットも知らん連中はうじゃうじゃおったでしょう。しかし、それではいかんでしょう。四川省というと、麻婆豆腐とか坦坦麺、青椒肉絲に代表される四川料理があるし、三国志の劉備の蜀で有名だし、パンダもいるし、九寨溝もあるからまだいいけど、なかなか少数民族までは目が行かないでしょう。四川省にいるのは、パンダや漢民族やチベット族だけではないので。だいたい「チベット族」は分かっても、「チャン族」って何?という日本人が大半でしょう。というわけで、チャン族。「チャン族」とカタカナで書くから分かりにくいわけで、漢字では「羌族」と書く。おそらく、紀元前から続く遊牧民族の末裔で、太公望・呂尚とか、秦の始皇帝、三国志の馬超なんかも、この部族の血をひいていると言われている。唐の時代には唐の側について、チベット(吐蕃)の侵略に対抗している。後にこの羌族の中のタングートが「西夏」という王朝を建てた。現在は人口30万人程度。参照:Gesanmedo ・チャン(羌)族・中国四川省羌族のご紹介Wikipedia 羌今でも中国の少数民族としてチャン族は近代化の流れに飲まれながらも、自分たちの伝統的な生活を守っている。四川省の山奥でね。この、人口30万人のチャン族から、最近、アイドル(明星)が生まれた。偶然、九寨溝を訪れた観光客が撮った一枚の写真から、ネット上で人気が沸騰。一躍アイドルとなった少女。かわいいっしょ?アルマイナ(エルマイナとも)さんと言います。別名「天仙妹妹」。チャン族の民族衣装もお似合い。少数民族なので、純情なんです。いいでしょ?日本のアイドルにはこういうタイプの人はもういないかも。しかも、彼女はギャラを貧しい子供たちに寄付したり、四川省の水害でも2万元を寄付したりと、性格も大変よろしい。あまりに性格が純粋なので「彼女を商業主義に利用するな」とツッコミ入れられるくらい(こういうのが中国人)。日本ではヤマトナデシコなる希少種が絶滅寸前(日本男児もか)だけど、チャン族には天仙妹妹さんがいる!!参照:中国ネット界の超美少女アイドル"天仙妹妹"、被災地に2万元寄付―四川省 レコードチャイナインターネットが人生を変えた・・チャン族の少女 このアルマイナさんの故郷は、今回の大地震の震源地のブンセン県の隣、理県なのです。現在、彼女のブログは震源地に近い出身ということもあって、アクセスが集中しすぎてパンク寸前。理県の情報は少ないけども、同じチャン族自治県の北川では以下のような状況。「一戸残らず崩れ落ちた」激震地・北川チャン族自治県 朝日新聞(引用初め)四川省成都から北へ100キロの山あいにある北川チャン族自治県に13日、入った。犠牲者は7500人とされ、今回の地震で被害が最も大きい地区の一つだ。 雨の中、逃げてきた女性に出会った。「町は壊滅状態。近所は一戸残らず全部崩れ落ちた。家族も9人死んだ。残ったのは私と妹だけだ」と泣き崩れた。救援活動が進んでいない。「政府は何をしているのか」と唇をふるわせた。 一帯には少数民族のチャン族を中心に約16万人が住んでいる。逃げて来た男性は「少なくとも1万~2万人の行方が分からない」。別の女性は「人が大勢生き埋めになっている。死者は一体何人になるのか」と話した。 北川には整った医療施設がない。けがをした人は、救急車のピストン輸送でふもとにある綿陽市内の病院に運ばれている。病院の1階ロビーや中庭は患者であふれ、段ボールや毛布の上で応急処置を受けるのが精いっぱいだ。 (引用終わり)偽善でも、下心まるだしでも、その日の気分でも何でもいい!彼女の故郷とチャン族を救ってくれ!参照:Yahoo! インターネット募金もちろん、ミャンマーのサイクロンも大事だ!ユニセフ ミャンマー・サイクロン緊急募金情報長い歴史の連なりの中で、漢民族とチベット族の狭間で、貧しくとも素朴なチャン族が住んでいるような場所で、日本のメディアは「耐震強度がどうのこうの」って、それはそれで失礼でしょ? もちろん、豊かになりたい人もいるし、安全な生活もしたい人もいる。でも、彼らには彼らの生き方がある。彼らには彼らの家の建て方がある。それに、今チベット問題で引っ張りだこのペマ・ギャルポさんの論調だと、このチャン族の自治県は「チベット領」にされてしまいそうだけど、それでいいの?チベット問題というと、中国とチベットの問題というだけで終わってしまうけど、こういう人たちの生活も大事。少数民族から生まれたアイドル、アルマイナさんは聖火ランナーになっている。今、相当深刻な状況にあるチャン族の人々にとって、一ヵ月後の彼女の走りを楽しみにしていたはずだったろうにねぇ。やるにしても、やらないにしても、即断する必要はないと思うけど。ちなみに、こちらは坂本龍一とコラボをしていて日本でも認知されつつある、チベット族の、alanさん。この人もいいよな~(不謹慎な)。チベット自治県の様子はまだまだ分からないけど、できる限り救助してもらいたいものであります。いろんな問題があるし、複雑な事情もあるけど、それでも外に向けて発信できるようになっただけでも、中国はまだマシになったと思っております。今日はこの辺で。