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今度、『PEACE BED アメリカ VS ジョン・レノン』という映画があるらしい。去年、FBIが危険人物とみなしていたジョン・レノンについての機密文書を公開したので、その影響かな。
表現の自由に対するアメリカの不寛容さということに関しては、彼の「イマジン」が平和な時には流れていても、戦争が始まると放送禁止になるという矛盾を何度も露呈しているけども、1970年代の初めに、ジョンがベトナム戦争に対する反戦運動を行ったことについて、大統領選に影響すると考えたニクソンが、彼を国外追放することを画策する背景にも迫るらしい。第二次大戦後の1948年以降に巻き起こった「赤狩り」で、チャールズ・チャップリンを国外追放し、ウォルト・ディズニーを容疑者扱いしたというアメリカ内部での極端な反共思想は、何もジョン・レノンの頃に始まったわけではない。 1964年にビートルズは、初めてアメリカに上陸した。ケネディ国際空港に降り立った彼らは、1万人にものぼるファンと報道陣に驚き「大統領かローマ法王でも到着したのか?」などと感想を漏らしたといわれる。リバプール訛りの四人組は「エド・サリバン・ショー」に出演し、この時の視聴率は全米で70パーセントを超える数字を叩き出している。そして、この年にビルボードチャートの1位から5位までのシングルチャートを独占するという前人未到の偉業を果たすことになる。 しかし、当然全ての人々が彼らに熱狂したわけではなかった。 その節目が1966年の一連の騒動。1966年6月29日にビートルズが日本にやってきた。この時の会場が「日本武道館」であったがために、「日本の武道を冒涜し、日本人の青年の伝統的意識を汚す」として右翼団体が猛烈な抗議を行っている。さらに、フィリピンで行われたコンサートの後に、イメルダ夫人主催のパーティーをキャンセルしたため、フィリピン国内で暴動が起こり、リンゴが襲われ、スタッフが負傷するという事件にまで発展している。そして、同じ年の1966年に、ジョン・レノンの「ビートルズはキリストより有名だ」という趣旨の発言がアメリカ南部のキリスト教徒の信仰に厚い地域(いわゆるバイブル・ベルト)の人々の反感を買い、アンチ・ビートルズ活動が起きた。 笑顔で少年が燃やそうとしているのは、「With the beatles」かな。さすがはKKKの本場。 アラバマ州のラジオ局がビートルズの曲を放送するのを中止したことをきっかけに、アメリカ南部でビートルズの曲をボイコットする局が40近くにまで上り、不買運動が展開され、挙句の果てには、集会を開いてレコードを踏み割り、グッズと共に燃やしてしまうということまで行われるようになった。アメリカの話なんだけど、やっていることが「焚書」とか「文化大革命」と変わらんがな。この1966年以降、ビートルズのコンサートは停止される。理由は諸説あるけども、この年の騒動が遠因になっていることは、想像に難くない。 参照: Wikipedia 赤狩り ビートルズヒストリー Wikipedia バイブル・ベルト 「イマジン」にも"Nothing to kill or die for,no religion too"という言葉があるけども、このことからも、ジョン・レノンが宗教について懐疑的であることは明白。"No religion"と言い切った歌なので、これが、キリスト教徒には許せないわけですよ。だからこそジョンは「アカ」というレッテルを貼られる。共産国家が宗教を否定し、弾圧するのは確かだけども、「人を殺すなかれ」という戒律を持つ宗教が、今まで神の名において幾人の罪もなき人間を殺し、現に今も殺しているのか、という疑問を解決してはくれない。今の中東情勢を見て「キリスト教の力で解決できる」とおっしゃる方はあんまりいないと思いますな。 冷戦下のことなので、反共主義に走ることはやむを得なかったとしても、アメリカ国内での強烈な反共主義は、今でも残っている。例えば日本での「電子政府推進計画」というような中長期的な計画も「計画経済的」であるということで忌避される。ま、日本では農協と中国の人民公社の違いを説明できるような人もいないように、日本人には理解しにくい原理主義的な側面がある。これが「反知性主義」とも言うべき流れを生むことにもなるという指摘もある。代表格は今のアメリカ大統領だな。ただし、ビートたけしが何回か言っている「本なんか読むとアカになる」という当時の日本の傾向にも見られるかもしれん。 アメリカ合衆国という国は、世論調査によると、 「人間や生物は初めから現在の姿だった」と考える人が 42% 「人類は1万年前に神によって創造された」と考える人が 45% と、進化論を否定する人がまだまだ多いという宗教国家の側面を持つ。 まだ、ダーウィンは嘘つきだと思われている(笑)。 というよりも、弱肉強食、優勝劣敗、適者生存という生物界の自然競争の原理を、人間社会において最も体現している国家が、進化論すら認めないというのは、ある意味自己矛盾ですわな。ブッシュは宗教的な立場からID(インテリジェント・デザイン)理論を教科書に載せようとしている。日本でも反共主義的な立場から教科書に載せると主張する新聞が一社ある(というか、産経の場合は統一教会の影響かな。生物の教科書を炙ると「文鮮○」の文字でも浮かぶ仕組み(笑))。私は断固として反対致します。ただし、こういった調査と同時に『米国民が詳しいのは「十戒」より「ビッグマック」』などという調査も出るところがいかにもアメリカ。 ここで一つ。だいぶ前に「アトミック・カフェ」を観ましたよ。予め言っておきますが、アメリカの原爆礼賛と、反共思想のためのプロパガンダ集なので、まともな方は観ないように(参照)。 この中で、核実験において被爆することになる兵士たちに「熱(heat)、爆風(blast)、放射能(radiation)のうち、一番どうでもいいのが放射能だ!」と断言するシーンとかは、さすがはアメリカ。ピカッと光ったら伏せろ!というのは、ディズニーの「アイアン・ジャイアント」にも使われたな。 「みんな原爆の心配ばかり~神様のご降臨を忘れている♪神様が降りてきたら~原爆の比ではないよ~♪」というようなエグイ歌がじゃんじゃんBGMとして流れる。「原爆投下によって戦争の終期が早まり、結果として犠牲が少なくて済んだ」という理論に関しては、悔しくても3割ほど同調するのだけれども、この映画で使われている神という単語の多さに驚く。「ヒロシマへの爆弾は~♪きっと神様が兵士達にくださったお返事だ~♪」というような能天気さは、250年間弾圧に耐えた長崎のキリスト教徒に対してあまりにも残酷な歌詞でしょう。 で、この前、ビデオ店で「人間消失」を発見いたしました。原題は「Left Behind」。 アメリカ国内で爆発的人気を博したベストセラーの映画版。聖書に書かれてある預言に忠実にストーリーが練られてあるのだけど、敵役がスラブ系かゲルマン系で北方訛りのようなしゃべり方をするところが、いかにも。小説版は知らないけど、映画版の勧善懲悪のストーリーはかなり無理がありますな。 この物語のテーマの一つが 「聖書」に登場する"Rapture(携挙)"なんですな。 ほとんどのキリスト教徒は信じていないらしいのだけど、今ブッシュに影響力を持つキリスト教右派の中には、ハルマゲドンの前に、神様は敬虔なキリスト教徒だけ生きたまま救い上げて下さる、と考えている人々がいる。これ、終末思想に近い考えで、自分たちだけが助かって地上を楽園になるのでカルトがよく好む思考パターンに発展しやすい。もちろん、異教徒は全て死ぬのよ。日本の場合にはオウムの地下鉄サリン事件を経験しているので、ハルマゲドンを現出させようと待望する人々が蔓延る可能性を想像してしまい、恐怖を感じますな。キリスト教の中でも一部の熱狂的カルトの中には、イスラエルを支援するための戦争どころか、核戦争を起こしたがる人もいるというのは、確実なことなのでね。 ま、間違いなくクリスマスにかこつけて、ちちくりあっているような日本人を、神様は救ってくださらないだろうから、ご心配なく(笑)。 「人間消失」の映画自体は、日本においては「アクション」に分類されているので、アクションとして観ると不評。あまりにも稚拙な出来で、人気が出るわけがない。しかし、これがウケる土壌がアメリカ国内にあるという視点においては面白い。「インディペンデンス・デイ」と、「デイ・アフター・トゥモロー」を対比するように、「ダ・ヴィンチ・コード」のお供に「人間消失」はいかが? え~っと、まぁ私はアンチ・キリストでも共産主義者でもございません(笑)。 キリストさんよりも500年ほど前に生まれた孔子の教えが好きなだけの仏教徒であります。 樊遅「知」を問う。 子曰く「民の義を努め、鬼神を敬して之を遠ざく、知と謂うべし」(「論語」雍也篇より)。 樊遅が孔子に「知」について問うた。 孔子がおっしゃるには「自分自身の立場にとって必要なことを努力して、鬼や神を畏れ敬いつつも距離をおく(敬遠)。これを知と言うのだ。」 日本人が「地動説」や「進化論」を受け入れる所以でございます。 そろそろ今年も、日本ではジョンのこの歌が延々と流れますな。キリストの誕生を祝う日に流れるジョン・レノンの真意を理解しようとする人間は、幾人いることか。 毎年思うけど、それで良いんだろうか。 はい、長くなったのでこの辺で。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.11.22 13:58:22
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