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カテゴリ:小説の本棚
ある日、主人公のリョウは、 自分が生まれていなかった世界へとスリップする。 そこには、自分の代わりに陽気な姉が暮らしていた。 内面は自分と同じでも、精一杯生きる姉がいる世界は、 ネガティブで無気力な自分がいた世界よりも、 少しだけ周りの人々にとって幸せな世界だった ... 描き方はちょっとこじつけっぽいが、 集団と個人の関係は、まさにこんな感じだと思う。 他人は自分を映す鏡 ・・・・ 自分に不平不満が多かったり、愚痴っぽかったり、 人の成功を素直に喜んであげられなかったら、 自分にとってそうあって欲しい世界に、 自分の周りを変えることはできない。 「朱に交われば赤くなる」 が真理なら、その逆も真理なのだ。 会社でのリーダーシップ、家庭での親の役割 ... 自分の周りがそうあってほしいと思うのなら、 周囲に左右されず、自分がそのように振る舞うことだ。 それにしてもこの物語 ...救いがない。 リョウは思う。 自分こそがこの世界の 『ボトルネック』 だったんだと。 ボトルネック ... 瓶の狭い口が中身の出入りを窮屈にすることから、 物事の支障となるような取り除かれるべき事柄を現す。 ネガティブなリョウは最後までネガティブ。 自分を消し去ろうとするリョウの背中を押すような 着信メールが母から届き、物語は終わる。 後味の悪い終わり方だった。 自己の殻を打ち破って前向きに生きようというテーマを伝えるのに、 描き方自体が極めてネガティブな 「リョウ」 的だ。 読者層の若い人たちに、救いと望みを残してほしかった。 『犬はどこだ』 がよかっただけに、今回は残念だった。 満足度は今一の ☆ (★~★★★の下) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/03/07 09:22:01 AM
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