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テーマ:洋楽(3284)
カテゴリ:70年代洋楽
ニック・ロウやブリンズレー・シュウォーツは知らなくても、この曲は知っている、あるいは聴いたことがあるという人もいるかもしれない。 ニック・ロウやイアン・ゴムを擁していたことで知られるブリンズレー・シュウォーツは、70年代前半のイギリスで活動していたバンドである。 その前身はキッピングトン・ロッジというバンドで、60年代から活動していたが、70年代に入ると共にブリンズレー・シュウォーツと名前を変えて再出発する。バンド名は、ギタリストの名前をそのままつけたものだった。 CSN&Y風のコーラスとThe Bandのようなサウンドを合わせた音楽性は"泥臭いカントリー・ロック"とでもいえるもので、初期には「Country Girl」という名曲も生まれている。 その鍵となるのは、ニックのすぐれたポップ・センスである。 ブリンズレーを形容する際には「パブ・ロック」という表現がよく使われる。 それは音楽自体の特徴を指すものではなく、彼らの主な演奏場がパブだったということからそう呼ばれたのだという。 そしてそれは、シンプルで普段着的な親しみやすさを持つ彼らの音楽にはピッタリの呼称だったともいえる。 キャロル・キングの作品であり、ビートルズが取り上げた(ライヴで)ことでも知られる「Don't Ever Change」でのホンワカした演奏は僕も大好きだ。 ただ、メンバーのルックスはお世辞にもいいとはいえなかったし、サウンドにも野暮ったさや散漫さが感じられるのも事実だった。 デビュー当初のプロモーションからして大失敗(そのためいきなり多額の借金を背負ったという)した彼らは、最後まで商業的成功とは無縁のまま解散してしまう。 この当時のニック・ロウは「極貧だった」と、のちのインタビューでも語っている。 後年、"パブ・ロックの名グループ"として再評価されたブリンズレーも、当時は悲運のB級バンドに過ぎなかった。 「(What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding」は、ブリンズレー最後のオリジナル・アルバム『The New Favorites Of Brinsley Schwarz』('74年)の冒頭をかざる一曲。 エルヴィス・コステロのカバーでも知られる名ビート・ポップ・ナンバーだ。 ここでのプロデュースを手掛けるのは、のちにニックと行動を共にするデイヴ・エドモンズである。 デイヴのプロデュースが功を奏したのだろう、ここでのサウンドはそれまでにくらべてかなりシャープなものとなっている。 ギター・リフは明快で力強い。 ポップで切ない響きを持ったメロディも耳にのこる。 ふんだんに取り入れられたメンバーのコーラス、ストレートなビートも聴いてて実に気持ちよい。 ニックの歌声は、コステロのそれにくらべて少し頼りないが、丸みと優しさの感じられるこちらの方が僕は好きだ。 また、その内容はタイトル通り、「平和、愛、理解の何がおかしいんだい?」というもの。 ポップな旋律の中に、ニックらしい毒と深遠さが光る素晴らしい歌詞となっている。 それは、当時の世間には受け入れられず、貧苦にあえいでいた彼の"怒り"が生み出したものだったのかもしれない。 この曲は、のちにカーティス・スタイガーズというシンガーに歌われ、そのヴァージョンは映画『ボディガード』('92年)のサウンド・トラックに収録された。 アメリカだけで1700万枚を売ったというそのサントラは、ニックにも億単位の印税をもたらすこととなった。 同時期、メジャー会社との契約を失っていたニックはそのお金をもとに『The Impossible Bird』('94年)を制作。 以後の彼は、メジャーの音楽シーンとは距離を置いた、シンプルで自然体なアルバムを数年ごとに作り続けている。 彼の人生において重要な一曲となった「(What's So Funny 'Bout...」は、前述のアーティストのほかにも、ブルース・スプリングスティーン、ボン・ジョヴィ、R.E.Mなど様々なアーティストに歌われている。 '03年の映画『ロスト・イン・トラストレーション』(ソフィア・コッポラ監督)でも、この曲が使われていた。 そして現在でも、銀髪のニックがこの曲を歌ってくれるのは嬉しいかぎりだ。 ポップなメロディと力強いメッセージを持った「(What's So Funny 'Bout) Peace, Love And Understanding」はこれからも聴き継がれていくに違いない。 『ただただ素晴らしいポップ・ソング。僕が目指しているのはそれなんだ』-----ニック・ロウ つーコトで、ブリンズレー・シュウォーツのオリジナル・バージョンを聴くにはここをクリック! 邪悪なこの世界を僕は歩く 狂気の闇の中 光をもとめて 僕は自分に問いかける もう希望はどこにもないのだろうか? あるのは苦しみや憎しみ、悲しみだけなのだろうか? こんな気持ちになるたびに知りたくなることがある 平和、愛、理解の何がそんなにおかしいんだい? 平和、愛、理解の何がそんなにおかしいんだい? ※ ポム・スフレのメインHPではブリンズレー・シュウォーツの名盤『『The New Favorites Of Brinsley Schwarz』について取り上げています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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