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カテゴリ:日本酒・長野県
小布施ワイナリーが毎年意欲的な試みをしている中で、昨酒造年度は日本醸造協会から特別に提供を受けた1~5号酵母に、頒布酵母の6、7、9号のラインアップをそろえ、すべて同じ酒米(美山錦)で仕込んだ、まさに飲み比べにピッタリのシリーズを発売した。
行きつけの根津の日本酒処で、常連のお客さんが入手したこのシリーズ(除く7号酵母)7本を試飲する機会があり、参加してきた。 利き猪口が10個あるのは、女将が3種類については燗づけもしてくれたため。 ワイナリーがボトリングした酒らしく、一見するとワインかスパークリング。 右の5本が1-5号酵母、左の大型ボトルが6&9号酵母で醸したもの。 いずれも純米酒です。 最初は冷やして提供されたが、面白かったのは時間の経過と共に、多くのボトルで香味の変化が生じたこと。 すなわち、開栓後の空気との接触時間および温度の上昇で微妙に味わいが変わったのは、同時に試飲していた参加者全員の共通認識で興味深いものがあった。 3号酵母のボトルだけアップの写真を掲載しているのに特に意味はない。 一本一本の顔ヅラは同じで、アン、ドゥ、トロワ・・と番号表示が変わるだけ。 <1号酵母> 100年以上前(明治39年)に「桜正宗」から分離され、大正6年から昭和10年まで頒布された文字通り最初の協会頒布酵母。 酸味が特徴的で、同時に泥臭さも感じるが、それが1世紀前の日本酒を彷彿させ、なんとも幸せなタイムスリップ感を与えてくれる。 この酒は、現代でも個性豊かな酒として、それなりに市場で受け入れられるのではないだろうか。 なお、開栓後の時間の経過と共に、酸味が薄れ、甘味と苦味が強くなってくる。 <2号酵母> 明治末期に「月桂冠」から分離された株。 ひと口飲んだ印象は「今風」。やや、老ねっぽさとでも言うような個性的な香りと、フィニッシュ以降に渋味が出てきた。 のちに燗づけしてものを頂戴したが、抜群の燗あがり。参加者皆目を丸くした。 <3号酵母> 大正3年に「酔心」から分離。 酸が強調された、スキッとする切れ味の良い酒。 のちに燗づけしても、燗上がりはしなかった。 <4号酵母> 大正13年に広島県の酒造場(詳細不明)で分離された。 正直なところ、雑味が多く、まとまっていない。荒々しい。 燗上がりもしない。 <5号酵母> 大正末期、「加茂鶴」で分離。 白いフルーツ様の香りが現代風。ただし、全体的に平板で、本醸造酒っぽい。 <6号酵母> ご存知秋田の「新政」酵母。昭和5年に分離。昭和10年より今日に至るまで醸造協会から頒布されているロングセラー。 それまでの1-5号酵母に比べると、その旨味の広がりとふくらみは一目瞭然。さすが、現在でも頒布されいる理由がわかる。 ただし、時間の経過と共にヘタってきた。 (1-5号にも共通したが、これは造りによるものなのか?) 9号酵母は申すまでもないので省略します。 以上、1-5号酵母で醸した酒は当分飲む機会がないだろうが、貴重なチャンスを提供してくれたお店に感謝したい。 これら1-5の中では、1号酵母の酒が個性豊かで面白く、現代でもときどき飲みたくなるような酒だった。 なお、文中の分離年等はお店で配布された資料に準拠しています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013/06/07 04:41:08 PM
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