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★cafe@porin★

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いろいろ読み物(2003)

いろいろ読み物

*一般小説、他ジャンルのわからない本をここに所蔵しました。
(2003年の感想です。)*

♪エコノミカル・パレス♪角田光代(講談社)
34歳フリーター、同居の恋人ヤスオは失業中。そんなどん底生活の中で20歳の男が現れた。今どきの生き方ってこんな感じ?簡単に機械でお金借りたり、携帯使って擬似恋愛?したり。どこか真面目に生きてない。いけないってわかっていてもやめられない生活。何がやりたいの?未来ばかり語り合っても仕方ないよ。現代の若者の迷える1冊です。(2003.1.15読了)
♪聖家族のランチ♪林真理子(角川書店)
料理研究家ユリ子とその家族を描いた作品。幸せな家族にそれぞれ秘められた秘密とは・・・myuみゆさんの以前の日記で感想を読んでから気になっていた作品です。事件とは?何が起こったのか非常に興味がありました。読了後、少し後味の悪いというか気分が悪いというか・・・(ある意味)家庭崩壊ならまだわかるけど、どちらかというと一致団結している感じ。エリートやハイソな生活に憧れるユリ子。美しさを武器にしっかり不倫もしている。エリート銀行員の夫・達也。しかし、現在の日本の経済状況をそのままいっているような感じで銀行の破綻に翻弄される。お嬢様学校に通っていたにもかかわらず女子大生にならずに母親の手伝いをし、おしゃれなど今どきの若い子の興味が全くない娘・美果。進学校に通いながら新興宗教にはまっていく息子・圭児。この息子が結構後々事件を起こしてくれる。そんな息子が命のユリ子は後々の事件後は狂気の沙汰としか思えないような行動をとる。 これは料理研究家だからこそ出来たことだろうか?ネタバレになってしまいそうだが、ホラーに近いと思った。(2003.2.10読了)
♪バースデイ・ストーリーズ♪村上春樹編訳(中央公論新社)
村上春樹が選んだ誕生日をめぐる11の物語。アンソロジーなので「バースデイ・ガール」村上春樹についての感想を。イタリア料理店でウェイトレスのアルバイトをしている彼女は20歳の誕生日に仕事は休みのはずだった、代わりの子が風邪をこじらせて寝込んでしまったために代わりに仕事に出る羽目になる。いつもはマネージャーがオーナーに食事を届けるのだが、マネージャーが突然腹痛になったことから、今までに一度も会ったことのないオーナーに会うことになる。そのオーナーの老人に20歳の誕生日だと告げると「願い事があればひとつだけかなえてあげよう」と言われる。果たして彼女の願い事は何だったのか、そしてその願い事はかなったのだろうか?少し洒落たバースデーのお話です。あなたならどんな願い事をしますか?(2003.2.12読了)
♪下妻物語ヤンキーちゃんとロリータちゃん♪嶽本野ばら(小学館)
これはコメディか?ロリータ大好きな桃子とバリバリヤンキーのイチゴの友情物語です。今までの野ばらさんの小説はっきり言ってロリータファッションの解説書みたいでした。でもこれは笑えます。大体ヤクザの娘がロリータって・・・親父はダメダメ親父だし。両親が離婚してダメダメ親父についてきた桃子。ブランドのバッタもんを売り歩く親父はある時、ユニバーサルスタジオとヴェルサーチのロゴを組み合わせた商品を作り、商標権の問題でやばいことになったことから親父の故郷の茨城の下妻にやってくる。そこでゾッキー(暴走族)兼高校生のイチゴと出会う。もうそこからが珍道中。もちろんロリータブランドも出てくるわよ。今回はBABY,THESTARSSHINEBRIGHT(ベイビーザスターズシャインブライト)。でもヤンキーにも詳しかったりして。大体寅壱のニッカボッカ、超超ロングしかも紫色でキメルあたりは渋いね~しかもワークマンで揃えてるよ。もういろいろありすぎて・・・桃子が個人主義を貫く性格なのが個人的にはよかったです。それに支えられるイチゴ?二人は対照的だけどバッチリあってる。マンガみたいな話だけど、思いっきりヒットですわ。(2003.2.27読了)
♪7 days in Bali♪田口ランディ(筑摩書房)
マホという女性がバリで過ごした7日間の話。ミツコというマホの友人から3枚の絵葉書が届く。彼女は失踪。ミツコがマホをバリに導いた・・・オダの案内でバリの神秘な世界へと入っていく。もちろん、ランディさんですから、トランス的な状況はたくさん話の中に出てきます。生と死の間ってこんな場所なのかもしれません。それにバリの独特な音楽。これはきっと神に捧げるための音階なのかもしれませんね。(2003.2.28読了)
♪いつでも夢をTokyoオトギバナシ♪辻内智貴(光文社)
最初はヤバイ話かと思いました。だって、いかにも訳ありそうな20代の女性(洋子)が雨降りにポツンとたたずむ。それもカッターナイフを持って。そこへヤクザの龍治が通りかかる。この人は過去に傷を持つ、本当は心優しいヤクザ。まあ後に妹を亡くしたトラウマからか女性への土産は必ずケーキを 持って行くなんてことがわかるんだけど。そして、売れない小説家ジローちゃん登場(40代のおじさん)。何だか複雑~と思いきや、読み終えてみると、人の温かみとか愛情とかすごくストレートな文章で現代のオトギバナシみたいでした。洋子って女は実は精神科に通う少し人生に疲れた女性。ジローちゃんっていうのも貧しくて苦しくてでも何とか生きてるって感じで。このジローちゃんのアパートに洋子は居候することになるんだけど、(雨の日にジローちゃんが拾ったのよね)ここのアパートの大家さん夫婦っていうのがまた昭和時代を生き抜いた人情味あふれる人たち。親父さんは元警視庁勤務。後にたずねてきたヤクザの龍治とは知り合いだったけど。まあここで生活をしていくうちに洋子は人間らしさを取り戻していくのです。最後の公園のシーンは(洋子の夢の実現)かなり読んでいて恥ずかしい(*^_^*)って感じもしたけど、よかったな~(2003.3.7読了)
♪ハッピー・バースディ♪新井素子(角川書店)
「今が人生で最高の時」という新人作家あきら、それとは対照的に「今が人生で最悪の時」を迎えている浪人生裕司。その二人が偶然出会ったことで悲劇が始まる。あきらの愛する旦那様きいちゃんは事故で他界。幸せは終わりなの?あきらと裕司の章が交互に書かれています。新井素子先生=SFと言う概念はなくなりましたね。心理ホラーという感じでしょうか。(2003.3.15読了)
♪空中庭園♪角田光代(文芸春秋)
郊外のダンチで暮らす京橋家のモットーは「何ごともつつみかくさず」。 でも、ひとりひとりが閉ざす透明なドアから見える風景は…。連作短編集。 父・母・娘・息子と、母方の祖母・父の愛人という六人がそれぞれ主人公となって語られる6つのお話。秘密がないなんて嘘っぱちだーって思いました。案の定、誰もが人に言えない秘密のドアを持っている。そうだろう。家族ってそんなに単純なものではない。みんな打算的に生きてるんだ。読んでいて思ったのはどうして楽しく生きられないのだろうと言うこと。父と母は30代。こんなにも30代は苦しいのか?先行き暗くなりそうな感じだけに、私はもっと楽しい家庭の輪の中にいたいと切に願う。(2003.3.20読了)
♪王国(その1)アンドロメダ・ハイツ♪よしもとばなな(新潮社)
「よしもとばなな」と改名した第一弾だそうだ。その1というからには続きがあるのだろう。薬草茶づくりの名手であるおばあちゃんと、小さな山小屋に暮らす女の子・雫石。雫石が18歳になったとき、ふもとでの開発が原因で、山を降りることを余儀なくされる。「いつでも人々を助けなさい。憎しみは、無差別に雫石の細胞までも傷つけてしまう」というおばあちゃんの助言を胸に、山を降りた雫石は、不思議な力をもつ占い師・楓のもとでアシスタントとして働くことになるが…。超能力をもつ楓。そのパトロンで恋人の片岡さん。雫石の恋人?の真一郎くん、アパートの「ものすごくいやな感じ」の隣人。みんな不思議な人たちだ。雫石はサボテンを愛している。植物は人を裏切らない。どこか不思議だが雫石はいつも暖かい人や植物に守られている。きっと彼女の心が周りを包んでいるのかもしれない。(2003.3.26読了)
♪銀の鍵♪角田光代(平凡社)
一切の記憶をなくしたまま、見知らぬ町で、我にかえった「わたし」。アキ・カウリスマキ監督の最新作「過去のない男」にインスパイアされて生まれた、もうひとつの物語。あとがきには感想って書いてあった。そうかー そんなの全然知らずに読んでしまった。映画はどういうものかはわからないけど、この本は不思議な話です。記憶がなく、異国の地で人にやさしくされて流れていく時間。お祭りに遭遇するところも幻想的。挿画が100%ORANGEなんですよ。可愛いです。(2003.4.21読了)
♪おいしい水♪盛田隆二(光文社)
結婚に対して何を望むのか?同じマンションに住む数組の家族。夫がいて子どもがいて、普通の暮らしに満足できますか?女性は家庭を守るために何かをあきらめなけらばならないのか。男性作家なのに女性の心理がよく出ててとてもリアルな感じがしました。セックスレスや不倫などの問題もこの小説には出てきます。やはり夫婦の問題は当人同士で一歩ずつ歩み寄って解決していくしかないのかもしれません。結婚生活に少し疲れたあなたへお薦めします。(2003.5.1読了)
♪ハゴロモ♪よしもとばなな(新潮社)
失恋の痛手と都会暮らしの疲れを癒しに帰郷したほたる。川の流れる町で人と人との不思議なふれあいを通してほたるは静かに自分を取り戻していく。毎日あくせくと過ごしていると心が疲れます。でも時には立ち止まって周りの景色を見て、深呼吸して、ゆっくりと心を回復させることも大事ではないのかな。私自身、少し疲れたときに読んだのでとても癒されました。(2003.5.8読了)
♪ユーモレスク♪長野まゆみ(マガジンハウス)
弟は隣の家から流れてくるユーモレスクが好きだった。6年前に湖に行って行方不明になった弟。隣家のピアノの持ち主のすみれさんが亡くなったことから隣家の家との付き合いが始まる。忘れられない弟のこと。少しせつないお話です。(2003.5.9読了)
♪女學校♪岩井志麻子(マガジンハウス)
洋館の一室で若いマダムたちが女学校時代の思い出に花を咲かせる。が、次第に話は思わぬ方向へ。本当に女学校に通っていたのか?そこは華やかな世界だったのか?最後まで何が現実か夢か私にはわかりませんでした。特別怖くもないし、ホラーを書いている作家さんなのですが、ジャンルがイマイチわかりません。時代は大正か昭和初期あたり。花代子さんの女学校時代の華やかで優美な思い出話に月絵さんは意地悪な棘とばかりに「女学校には通ったことがない」と言い出す。そして恐ろしい話をしだす。人形に例えたり(そのものに本人たちがなってしまったり)死をみつめたり、貧しかったり。どうも最後の一行まで読んでもどれが現実の世界かわかりませんでした。(2003.6.8読了)
♪永遠の途中♪唯川恵(光文社)
「どうしてもっと、自分の生き方に自信を持って来なかったのだろう」「人生はひとつしか生きられないのに」多分、試行錯誤して生きてるからこんな風のなってしまうのかな。このお話は二人の女性の27歳から60歳までのそれぞれ違う生き方について書いてあります。薫と乃梨子。同じ会社の二人は、 同僚の郁夫を同時に好きになるが、薫は強引に結婚してしまう。結婚を境に二人の人生は、大きく異なっていく…。仕事に生きる乃梨子。バリバリとやってきた20代。自分のミスではなくて左遷されてしまい、そこで大失敗。39歳で会社を辞めて由樹という女性と出会う。後に彼女とは縁を切ってしまったが、トラベルアドバイザーとして独立。華やかな女性起業家の誕生。恋もそこそこに仕事はバリバリと。でも全てがうまくいくわけではない。一方、薫は念願の郁夫の妻になり、子供にも恵まれるが、普通の主婦ということに悲観している。乃梨子の成功が疎ましい。でも彼女が手に入れられなかった家族という幸せが自分にはある。いろいろあった人生の60歳の再会でやっと二人はお互いを受け入れられる。隣の芝生は青く見える。そうなのかもしれない。人生って七転び八起き。いい時ばかりではないし、後悔ばかりかもしれない。自分はこの先、どんな人生になるのだろう?彼女達のようにもっと自信を持って生きたかったと後悔しつつもそれも悪くもないと思えるのだろうか。自分のこの先の人生が楽しみだ。(2003.6.21読了)
♪プラネタリウムのふたご♪いしいしんじ(講談社) 
星の見えない村のプラネタリウムに置き去りにされた双子、テンペルとタットル。テンペルは手品師に、タットルは星の語り部になった。「ダ・ヴィンチ」2003.6月号の「今月の絶対はずさないプラチナ本」にて紹介されていました。そうか~絶対はずさない・・・確かにはずしてないね。長編なので時間はかかったが。工場の煙とライトで星の見えない村。そこの人々はプラネタリウムに通うことを楽しみにしている。解説員の泣き男(双子の育ての親)は毎日、星を写し語り続けることを大切にしている。ある日、村に来ていたサーカスの一座に心を奪われたテンペル。その一座と共に旅をし、花形の手品師になるテンペル。事件がいろいろ起きそうな内容だけど、ラストを除いては特に衝撃的なことはない。ただ、日常に忘れかけていた優しさや正直さ、そして何故だか懐かしさを思い出させてくれる。プラネタリウム、手品=だます。プラネタリウムは本物の星ではないし、手品は人をだますもの。うそをつくのがいいのではない。相手を信じることが大切なのかも。それとこのお話のキーポイントは闇。星の見えない村。つまり夜は闇の中ってこと。サーカス一座のテントも真っ黒な闇。闇の中から何かが始まるってことなのかな。(2003.7.21読了)
♪4teen♪石田衣良(新潮社) 
第129回直木賞受賞作。14歳。最近の犯罪やニュースなどで取り上げられる子供の年齢にピタリと当てはまる。これは偶然かもしれないが。14歳はやれば何だってできるんだ。空だって飛べる。恋だって一丁前にする。性に対してだってそれなりに興味がある。仲間だって大切だ。死ということだって向き合うことが出来る。きっとこれが現実の彼らの姿なのかもしれない。物語の主人公たちは月島に住む14歳。中学生の4人。最後の章で彼らは遠くはないけど旅に出ます。彼らが経験した数々のこと。それは大人への階段を一歩ずつのぼっていると言ってもいいかもしれない。(2003.8.12読了)
♪海辺のカフカ(上・下)♪村上春樹(新潮社) 
*15歳の少年田村カフカは二度と戻らないたびに出かけた。一方、東京中野区に住むナカタさん(老人)は猫と話が出来る。ある事件をきっかけに二人が同じ方向を向いているように思える。下巻でこの二人がどうリンクしていくのかが楽しみだ。(上巻・2003.8.26読了)
*15歳のカフカ。佐伯さん、大島さん。そしてナカタさんとホシノさんの物語。次々と超越した出来事が。入り口の石。これもキーワード。いろいろありすぎて語りつくせないが、少年・田村カフカはこの旅で確実に大きく、強く、そして大人へと成長したと思う。ネタバレになるのでこれ以上書かないが、上巻のスピード感から言うと、下巻は少しゆっくりめだったかも。個人的な意見だが、上下に分けず、まとめてほしかったかも。そしてもう少し、ナカタさんとカフカをリンクさせてほしかったかな。(下巻・2003.9.9読了)
♪オキーフの恋人オズワルドの追憶(上・下)♪辻仁成(小学館) 
*人気ミステリー作家が謎の失踪を遂げた。女流画家ジョージア・オキーフを敬愛する青年編集者は、禁断の恋にのめりこんでいく。作家の代理人をつとめる盲目の美女が鍵を握る。オズワルドの追憶は探偵の出てくる小説編です。この二つがどのようにリンクしてくるかが楽しみです。(上巻・2003.8.29読了)
*マインドコントロール。一昔、よく聞いた感じがする。オズワルドの追憶は意外な展開を見せ、見事にオキーフとリンクした。時々、何が現実か、妄想か記憶もあてにならなくなるような話に惑わされながら、完結までこぎつけました。(下巻・2003.9.3読了)
♪信さん♪辻内智貴(小学館) 
人生という名の野っぱらを全速力で駈け抜けたガキ大将が、いた。その子は「信さん」と呼ばれていた。炭鉱で栄えた町を舞台に信さんと私の思い出が蘇る。他、「遥い町」ヨン君の話収録。 (2003.9.22読了)
♪愛と永遠の青い空They rest in peace♪辻仁成(幻冬舎) 
かつて真珠湾攻撃にかかわった老人たちがハワイで青春の日々と戦争といろんなものの本当の意味を問いただす。75歳の周作、今は亡き妻、小枝。小枝の残した日記。じっと耐える妻だった小枝。愛するということはどういうことだろう?彼女の日記は苦悩に満ちていた気がした。戦友だった三人の老。 懐かしい再会の後、ハワイへと旅立つ。そこでは一緒に来た早瀬の死が。彼の死が九七式艦上攻撃機を蘇らせたのかもしれない。そしてやっと世界が 和解できたのかも・・・。 (2003.9.26読了)
♪少年H(上・下)♪妹尾河童(新潮文庫) 
*少年Hの見た戦争がそこにあった。母親は熱心なクリスチャン。宗教だけでも弾圧を受けそうなのに、父親はスパイ容疑で逮捕されたり、Hが好きだったオトコ姉ちゃんは赤紙が来たことにより自殺してしまう。戦争に兵隊として命を捧げるよりも自らの命を絶ったほうがマシと思っていたのだろうか? 上巻ではまだ戦火は全国に広がってはいない。だが、真珠湾攻撃や遠く異国の地で戦死する人々が増えてきている。学校も兵学校のようだし・・・おおっぴらに自分の意見など言えない時代だったようだ。(2003.10.8上巻読了)
* 中学生になったH。学校へ行けば軍事教官から目をつけられ、戦争自体は毎日のように空襲警報が鳴り響くようになる。米軍機の猛撃で町中が火の海になりながらもHの母は消火訓練のごとく火を消す。もはや危機一髪なのか戦火を逃げ惑うHと母親。よくも生き延びてくれたと思う。これは作り物の小説ではなく現実なのだ。大体、教練射撃部で銃を扱うなんて今ではとても考えられない。明らかに戦うことを前提としているかのようだ。戦争が終わり、その銃を埋葬するシーンは印象的だった。戦争が終わっても人々の暮しは過酷を増すばかり。物資が足りなくて住居もない。戦災者住宅に移り住んだHは毎日イライラが増し、精神的におかしくなりかけていた。今まで何のために戦ってきたのだろう?天皇を神とあがめ、お国のために命を捧げ・・・サバイバルで戦いを繰り広げる小説をいくつも読んできたが、これほど怖いと思った本はない。何回も言うようだが、これが現実に繰り広げられていたことなのだ。もし自分だったら・・・今ここで同じことが起こったら・・・この本は私に本当の戦争の怖さを教えてくれた。(2003.10.25下巻読了)
♪人形を捨てる♪藤堂志津子(新潮社) 
短編集なのだけど、どうもエッセイのような香りがする。藤堂志津子さんといえば男と女の恋愛や結婚をめぐる小説が定番なのだけど、これは少し違う。「私」の幼少の頃から50代の私までのエピソードが綴られている。女癖の悪い父親のこと、しかも結婚五十年目に離婚。そんな両親をどうみてきたのだろうか?この本の「私」も結婚に失敗している。どうも男運が悪いのだろうか?段々暗くなる話で、人とはあまり交わりたくないな・・・という感じにさえなる。そんな「私」が欠陥住宅だった我が家を犬のために住みよくリフォームしたり、47歳にして車の免許を取ったり、結構突拍子もない感じもする。(2003.10.27読了)
♪フライ,ダディ,フライ♪金城一紀(講談社) 
鈴木一、47歳。平凡なサラリーマン。破綻した世界を取り戻すための、ひと夏の冒険譚。娘が暴行を受けた相手を倒すためにとある高校生たちに鍛えられ、強くなるという話。世のおやじ諸君にエールをおくりたい一冊だ。大体、ふにゃふにゃして、老後を待っているような平凡なおやじが娘に暴行を加えたボクシング高校生チャンピオンを倒そうなんてすごすぎる!おやじだってやれば出来るんだ!おやじだってまだまだ戦えるんだ!テンポがよくてスカッとする話だった。全く関連性を無視して読んだけど、「レボ3」も 読むとこの朴君率いる高校生たちのことがわかるらしい。(2003.10.28読了)

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