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小説三昧 と たま~に 愚痴話 [全109件]

2012.06.03楽天プロフィール Add to Google XML

  蒼い殺意  ~十七歳の青春~ 一日の過ごし方 三 
[ 文学・小説 ]  

夕食を済ませた後、週一の風呂に行く。

他の日には、濡れタオルで体を拭いてはいるようだ。

できるだけ他人に不快感を与えないようには、努めているらしい。

が、悩みの種は洗濯とのこと。

家主のおばさんの好意に甘えてはいるようだが、下着だけは自分で洗っているらしい。

共同の流し場で、洗濯石鹸を使ってのことである。

家主のおばさんに“持って来い”と言われるらしいが、
さすがにそれだけは自分で洗っていると言っていた。

ま、同年代の私には、十分に理解できることだ。

霧雨の降るせいではないのだろうが、今日の休日は十時に床から離れた。

昨夜、学校の調理室から給食用のパンを十枚ほどもらってきている。

牛乳も買い込んである。

今日一日の食事にするつもりだろう。

出かけるつもりがないのだ。


最終更新日時 2012.06.03 15:53:30
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2012.06.02

  蒼い殺意  ~十七歳の青春~ 一日の過ごし方 二
[ 文学・小説 ]  

失礼した、彼の家族構成をお知らせしていなかった。

五人家族である。

両親と弟・妹の二人がいる。

確か、小三と中一だと聞いた。

長野の山村で、農業を営んでいるとか。

昔で言えば口減らしか、集団就職で一人こちらに来ているということだ。

夜学については、私と同じく淋しさを紛らわせる為だと言う。

同年代とのたわいない会話は、大事である。

だから、勉学についてはまるでだめだ。

彼の過ごし方に戻ろう。

日曜日の過ごし方は、先にお話ししたがもう少し詳しく説明する。

大体、十時半頃に起きる。

モーニングサービスの十一時までに喫茶店に入り込む必要があるせいだ。

もっと寝ていたいのだが、そうもいかない。

喫茶店で一時間ほど費やすと、あてもなく散歩する。

私を訪ねてきたり、他の学友の元に遊びに寄ったりもする。

が、留守の時が多いとこぼしていた。


最終更新日時 2012.06.02 21:56:31
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2012.05.27

  蒼い殺意  ~十七歳の青春~ 一日の過ごし方 一
[ 文学・小説 ]  


少し、暗いお話です。

昭和の御代、何年ぐらいでしょうか…

高度経済成長時代の終わり頃…
ということに、してください。

筆者の、自伝的要素の入った作品です。

といっても、内容の全てが
筆者のそれとは限りませんので、
誤解のなきように。
--------


彼の一日は、朝七時に始まる。
八時始業の仕事に取り組み、午後五時に終了。

午後五時半始業の授業を受け、午後八時五十分に終了。
午後九時半近くにアパートに戻り、大体午後十一時に就寝である。

その間が彼の自由な時間である。
学校の図書館より借り出した本や、好きなラジオ番組等で過ごす。

彼が夜学に通う理由のひとつに、図書館がある。
いつでも無料で本を借り出せることが有り難い。

そう聞かされた。

市や県の図書館も無料ではある。
しかし出向かなければならぬことが、ネックのようだ。

レコード?
まだ購入していないようだ。

雀の涙だが、ボーナスが出たら買う、とは聞いている。

でなければ、何のためのステレオなのか! だ。
然もシングル盤で良しとせず、LP盤にすると言う。

私などは、“贅沢な”と思うのだが。
彼に言わせると、一曲あたりの値段が違うと言う。

おやおや、好きな楽曲だけを聴くのではなかったのか?

一番の問題は、シングル一枚では飽きてしまうということだろう。

彼は、好きな歌手や演奏者の作品は、すべて気に入っていると言う。



最終更新日時 2012.05.27 11:44:22
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2012.05.26

  蒼い殺意  ~十七歳の青春~ 哀しい事実 の 五

夜学の始業時間は、五時半である。

そして、四十分間ずつの授業である。

六時十分が給食時間である。

二十分間という限られた時間で、食べ終えなければならない。

六時半には片づけることになっている。

彼の町工場の終業時間は、五時である。

工場から学校までは、バスで十分ほどかかる。

残業を一時間行ったとして、バスの時間は六時二十分しかない。

お分かりいただけるであろうか、給食時間は終わっている。

その為に三ヶ月の間、給食抜きであった。

これは辛い。

食べ盛りの十七歳だ、猛烈にお腹が空く。

しかもである、翌日の朝食用のパンの問題もある。

クラスの中には必ずパンを残す者がいる。

彼はそれら残り物のパンを持って帰る。

それが遅刻となるが故に、持ち帰ることができない。

空腹を我慢できない彼は、恥を忍んで調理室に赴き残ったパンを貰うことにした。

土下座をせんばかりの懇願に、調理員のおばさんも規則をねじ曲げて応じてくれた。

私も付き合わされたので、これは紛れもない事実である。

まったく哀しい事実である。


最終更新日時 2012.05.26 14:45:15
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2012.05.20

  蒼い殺意  ~十七歳の青春~ 哀しい事実 の 四
[ 文学・小説 ]  



兎にも角にも社長の保証人で、彼はステレオを手に入れたのである。

しかしその為に、多大の労苦を味わった。

休日の出勤を三ヶ月続け、その手当を頭金としたのである。


彼の給料は、手取りで17,600円である。

同年代の平均は、新聞紙上によれば23,000円である。

確かに安い。

しかし彼は、社長が好きである。

彼はいつも私に言う。

高給取りだから幸せだとは限らない。

毎日が充実していればそれでいい、と。

やせ我慢かもしれない。

しかし彼は、己の分を知っていると言う。

彼の生活費の明細はこうである。

家賃、4,800円。

半端な額であるが、200円は家主の好意だと言う。

そして、3,000円を昼食代として弁当屋に支払う。

2,000円の夜学の学費を払い、月賦の3,000円を払う。

すると、4,800円が残る。

ここで問題だ。

“も”ととるか、“しか”ととるかだ。

日曜日ごとの食費が重くのしかかる。

朝と昼兼用の食事を、喫茶店でのモーニングサービスですませる。

250円である。

月に4回として、1,000円。

そして夜の食事、これが大問題だ。

弁当屋に交渉してみたが、だめであった。

仕方なく電気ポットを購入し、インスタントラーメンを2袋食べている。

後、電気・水道代が、大体1,200円ほど。

その上にまだ、風呂代もある。

そんな彼では、貯金に回るお金は皆無である。

そもそも銀行とは、まるで無縁な彼なのだ。

そうなのだ、銀行に彼の口座がない。


最終更新日時 2012.05.20 12:54:35
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2012.05.19

  蒼い殺意  ~十七歳の青春~ 哀しい事実の 三
[ 文学・小説 ]  



彼は、銀行が嫌いだ。

彼の勤める町工場の社長を悩ませる銀行に、良い感情を持ってはいなかった。

本来ならば、腰を低くすべきは銀行なのである、と彼は言う。

威圧的な銀行に対して嫌悪感を抱いている。

裏を返せば、エリートに対するコンプレックスかもしれない。

彼の言を紹介しよう。

成る程銀行に対して預金を積めば、行員は腰を曲げるかもしれない。

しかし少額の預金者に対して、心底からのそれをする行員がいるとは、どうしても思えないと言う。

そして又、これが肝心なのだ。

預金者は仕入れの業者であり、貸付先がお得意先になるはずだと、と言う。

言われてみれば成る程とも思える。

だから彼は、銀行を介するクレジットを嫌った。

銀行に負い目を感じることを嫌ったのだ。


止む無く彼は、社長に保証人の依頼をしたと言う。

その折り、一笑に付されたとも。

頭を下げることを惜しむな。

土下座してもいい。

自分にプラスになることならば、プライドはいらない。

利用することに負い目を感じることはない。

銀行での借金は、信用だ。

変に意固地になるな。

成る程と、納得していた。

従業員十人足らずの町工場だが、裸一貫から起ち上げた社長である。

わずか三人の家族だけでスタートした社長に、彼は多大の尊敬の念を抱いている。


最終更新日時 2012.05.19 19:36:13
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2012.05.15

  蒼い殺意  ~十七歳の青春~ 哀しい事実の 二
[ 文学・小説 ]  

しかし、ラジオからの押しつけのレコード曲。
それにも増して、独りよがりのDJの語りに反発を感じるらしい。

聞きたい楽曲を聞きたい時に聞くという自由がいかに大事かと、私に陶々と語る。

一理あると、思える。
が、それでは視野が狭くなると思うのだが。

それを告げれば、延々と屁理屈を並べられるのが落ちだ。

だから、頷くだけにしている。
言葉で肯定はしない。

私には私の理屈がある。
だから、卑怯かもしれないが言葉にしない。

彼のステレオは高価なものである。
廉価な物もあるにはあったのだが、生涯唯一の贅沢として購入した。

理由は、至ってシンプルだ。
良い音で聞きたい、ということだ。

もっとも、彼の耳がどれ程のものかは疑問だが。

支払いは、月賦である。

販売店は、しつこい程にクレジットの利用を勧めた。
だが、彼は月賦を押し通した。

販売店員は集金の手間を切々と訴える。
しかし彼は持参するから、と譲らない。

更には、彼は値引きなしの定価で買うからとまで言った。

当然、販売店は警戒する。
自明の理である。

今どき、定価で買う客が居るわけが無い。
新手の詐欺? と疑われても仕方が無い。

すると付き添いの私を保証人に立てる、などと言い出した。

冗談じゃないぞ、それは。
急にそんな話をふるなんて、どうかしてる。

しかし杞憂に終わった。
未成年は保証人にできない、と宣告された。


最終更新日時 2012.05.15 12:20:33
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