ロッシーニ 「弦楽ソナタ」/秋明菊
「今日のクラシック音楽」 ロッシーニ作曲 弦楽のためのソナタジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)といえばオペラ。 彼の書き残した傑作オペラの数々がすぐに思い浮かびます。 「セビリアの理髪師」「ウイリアム・テル」「アルジェのイタリア女」「シンデレラ」等々。両親は音楽で生計を立てていましたが、ジプシーのように色々な土地を転々とした生活だったそうで、息子ロッシーニは充分な音楽教育を受けていなかったそうです。 彼自身はチェンバロを演奏したり、教会で歌ったり、合唱の指揮を行なったりして生計を助けていたそうです。「弦楽のためのソナタ」が作曲されたのは、彼が12歳の時です。 このソナタは事実上ロッシーニの最初のまとまった曲で、オペラはそれから5年近く経って書き始めたそうです。 W.A.モーツアルトが、父レオポルドによって幼いころから音楽の英才教育を受けて、「神童」と呼ばれていたの対して、ろくな教育も受けていないロッシーニが12歳で書いたこの曲は、とても12歳の子供が書いたとは思えない美しいソナタ集です。CD解説によりますと、この作品の自筆譜はアメリカ合衆国国会図書館(ワシントン)に所蔵されており、そこには自筆で「まだまったくの子供で、ただの一度の伴奏法のレッスンを受けたことがない頃に作曲された」と記されているそうです。 いやはや、この記述を知って作品を聴けば、ロッシーニの天才的な音楽才能をまさに驚きでもって頷かざるを得ない、美しい弦の響きが心を打つ作品です。弦楽4部編成の曲で(ヴィオラ部がありません)、 ソナタは1番から6番まで6曲書かれています。 少年ロッシーニの瑞々しい才気と明るさと美しい旋律に溢れた名品です。 特に素晴らしいのは第1番と第5番で、 今までに一番好んで聴いてきた作品です。 流麗・豊麗な旋律がどの作品にも溢れており、しかもイタリア的な伸びやかさがあって、ロッシーニのオペラ音楽とは一味違う弦楽の響きです。朝のクラシック音楽として、或いは午後のテイータイム音楽として、はたまた夜のおやすみ前のセレナードとして聴くのもいい、一日中どの時間帯にでもぴったりと合う普遍的な美しさの曲です。ところでロッシーニは40曲ものオペラを書き残したのですが、最後の作品はオペラ「ウイリアム・テル」なんですが、この作品は彼の37歳に時に書きあげられています。 その後39年間はオペラの作曲から引退をして、悠々自適の生活を送っています。 自分の才能の枯渇に気付いての引退なのか理由は現代でも謎とされています。 40曲のオペラを書いていても現代でも上演されるのは「セビリアの理髪師」「シンデレラ」「アルジェのイタリア女」「ウイリアム・テル」「タンク・レディ」など10指にも満たないほどの作品で、「絹のはしご」「どろぼうかささぎ」「セミラーミデ」などはコンサートや録音などで序曲だけが演奏されるくらいなのですが、台本のまづさなどが指摘されており文字通り書きまくったという感じなのでしょうか?その後ロッシーニの名前が音楽以外で残っているのは、料理本にも出てくるほど有名なロッシーニ・レシピで悠々自適の生活の中で料理三昧の日々を送ったのでしょう。そのロッシーニは1868年の今日(11月13日)、フランス・パリで76歳の生涯を閉じています。愛聴盤 イタリア合奏団(DENON レーベル COCO70512 1987年 イタリア録音)レナート・ファザーノ主宰の「ローマ合奏団」が解散後に同メンバー有志で出来た「イタリア合奏団」の演奏はファザーノ時代の、豊穣で美しい響きと、まさに「磨き上げられた」カンタービレの美しさを継承しており、学生の頃に聴いていたあの「ローマ合奏団」が帰ってきたかに思える旋律の美しさを堪能できる演奏で、DENONチームがイタリアで行なったPCM録音の超優秀さと兼ね合せ、しかも発売当時2枚組み\6,000だったのが、CREST1000シリーズで\1,500という廉価盤になっているのが魅力です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「今日の音楽カレンダー」1868年 没 ジョアッキーノ・ロッシーニ(作曲家)1893年 初演 シベリウス 「カレリア」組曲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「今日の一花」 秋明菊撮影地 大阪市立長居植物園