サッカークリニッキ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　SOCCER CLINIKKI

一瞬、ボーっと見ていて、スペースが空き、寄せが遅れる。前に転がるボールに敵が突進。
ファールを取られ、FK。予測ができない壁の間を力任せのキックが抜けていく。試合の最後の2分などふとした時に、ぽっかりと空く空洞は、日本代表に限ったことではないのかもしれないが、いまだにドーハを思い出す。

「クリ、おまえのチームに似てた。」
「なにが？」
「昨日の代表。」
「どこが？」
「点の取られ方。ボールから目を離さず、集中して常に素早く寄ることができれば、失点はない。」
「ふん。」
「攻めても、攻めても、決められず、スペースを空けてしまったDFの前や裏にボッカーンと蹴られて、（あらら。）と見ている間に誰かがミスしたり、頭の上を越されたりして、気づいたときには、ゴール前・・・。蹴る選手へのチェック、ルーズボールへの寄せ、ちょっとでも遅れるとフリーで自由にさせてしまうことにいつ気が付くんだろ？」
「んー。」
「どこから、どんなボールが来ても対応するぞっていう覚悟や執念が足りない。頭もかな。算数が・・・。」

「高原のシュートは良かったね。」
（サイド・チェンジはうまいな。）
「おお。今野のクロスも良かったなあ。あれ、右足のアウトで蹴ったろ。左インサイドで蹴ってたら、タイミングが遅れて敵の出した足に当たってたろう。」
「あれ、クリだったら、空振りスルーしてるよ。」
「何でやねん。インサイドでポチッと押すだけやで。」
「そんなことないよ。あんなとこであんな速い球だよ。」
「おお。サッカーの難しさも分かってきたか。けどな、いつも狙って準備してる高原なら当たり前や。」
「難しいよ。」
「代表だぞ。ブンデスリーガのレギュラーだぞ。アジア相手に負けるわけない。」
「ふん。」：
「小さなころから、何度も何度も反復して体に叩き込んであるから、どんなボールにも反応できる。」
「へ？」
「こんどの休みのメニューが決まったな。」
「ごはんの？」
「あまーい。」
「なんのことだか、わからない。」
「練習メニューに、押すトラップが山のように入るってこと。」
「ふーん。それで？」
「生意気な、覚悟しとけよ。」
「いつもいっぱいやってんじゃん。」
「反復練習。とっさのボールにも対応できるくらい体に叩き込むんじゃ。」
「ふーん。」
「毎日、毎日やるのが理想。バリエーションもたくさんあった方が飽きないし。」
「休みも大事だよ。」
「おまえが言うな。最後の最後まで走り抜ける体と気持ちがなけりゃ、昨日の試合の教訓が活かせない。」
「キョークン？」
「神様がくれたありがたい教えのこと。」
「ふーん。」
「気をつけていればわかるし、ボーっとしてれば何にも感じない。おまえの気が付かないことでもいっぱい教訓をくれてるかもね。」
「ふーん。クリ、けっこーちゃんと見てるよ。」
「夢の中でだろ。」
「へへへ。」
「せっかく見るなら、しっかり見てなよ。自分がプレーしてるつもりで。」
「へーい。」
「いいキックとか、点取った場面だけじゃなくて、自分だったら、あそこで受けてこうするとか、こう走るとか、考えることも役に立つぞ。」
「ふん。」
「1対０から最後の最後に同点にされて、おまえどう思った？」
「あなたはどう思うのですか！」
「あほ。監督のマネじゃなくて、タカのマネしろ！」

（好きだし、期待しているオシムだが、子供たちのためには、いいコメントではなかった。気候もアウェイも乗り越えて3連覇を目指す姿に泣き、笑い、心を揺さぶられると思うのです。わけの分からないコメントだけではなく、子供たちのための演技もたまにはしてほしいと思う素人ファンです。）