BUN(尿素窒素)○BUN[mg/dl]:8.0~20.0 【BUN(尿素窒素)】 これは腎機能を調べる際の有力な指標のひとつである. 尿素は,蛋白代謝の過程での最終産物で,肝臓において,アミノ酸より生じた有害なアンモニアと炭酸ガスから,尿素サイクルの経路で合成される.合成された尿素は,肝臓から血中に放出され,再び利用されることなく,腎臓の糸球体で濾過され,一部は尿細管で再吸収されるが大分は尿に排泄される(一日約30g程度).従って,BUN値は,尿素の産生と尿中への排泄のバランスによって決定される. ただし,BUNの測定値は,いろいろな要因による生理的変動の幅が大きいので注意を要する.例えば,食事内容(蛋白摂取量)による変動がある.摂取蛋白量の約1/6が尿素窒素に変換されるので,蛋白摂取量が多いと,BUNはやや高値となる(30mg/dl程度まで). また,小児では低く,壮年期以降は高くなる.男性は女性よりやや高く(2~3mg),女性の場合,整理直前には高めとなる.さらに,下痢,大量の発汗,嘔吐などによる水分喪失,および水分摂取不良による脱水状態の場合にもBUNは上昇する. ①尿素排泄障害(腎性)による場合 摂取蛋白量が一定で,他に尿素産生の増加をみる疾患(後述の②)がみられない場合には,BUN値は,尿素の尿中への排泄量,すなわち腎機能によって決定される.BUN値と腎機能の指標である糸球体濾過値(クレアチニン・クリアランスで表わす.後述)との間には,ほぼ双曲線の関係がみられるのである. クリアランスが50%あたりまではBUNの上昇はわずかであるが,30%以下となると,BUNは急上昇をみる.すなわち,BUN値の上昇を認める腎臓病はかなり進行した状態にあるといえるのである. BUN値が50mg/dl以上となると腎不全状態であり,100mg/dl以上になると,尿毒症の状態で,人工透析による治療が考慮される. また,尿路(尿管から尿道まで)が,前立腺肥大症,癌(前立腺,膀胱,尿管),結石(尿管,膀胱)などで閉塞し,尿の排泄が障害される(乏尿となる)と,当然ながらBUNは上昇する.この場合,腎不全における乏尿と間違えないよう注意が必要である. ②尿素産生の増加(腎外性)による場合 ○組織蛋白の崩壊・・・組織蛋白が大量に崩壊(異化という)すると,尿素合成が増加する.ちなみに筋肉1kgが崩壊すれば,約40gの尿素が産生される.外科的手術,広範な火傷,悪性腫瘍,糖尿病性アシドーシス,高熱,甲状腺機能亢進症,絶食などの際にみられる. ○消化管出血・・・腸管に出た大量の赤血球,血清蛋白が分解され,アンモニアを生じて尿素合成が増加する.脱水やショックが加わると,BUNは著明に上昇する. ○ショック,心不全・・・必ずしも尿素産生増加を伴わないこともあるが,腎血流量の低下が起こり,腎機能低下=尿素排泄障害をもきたしてBUNは上昇する. BUNの上昇が腎性によるものか否かを知るには,BUNとクレアチニン(後述)の比が用いられる.BUNがクレアチニンの10倍以下なら,腎性すなわち腎臓病による腎不全が考えられ,10倍以上なら腎外性,すなわち腎以外の疾患(前述②)によるBUNの上昇であることが推定される. BUNの低下は,あまり問題になることはない.重傷な肝疾患や多尿をみる状態(尿崩症など)で,BUN値は低下をみるが,その意義は乏しい. [2002.09.29更新] 血液物知り事典へ |