B型肝炎ウィルス関連抗原・抗体○HBs抗原:陰性(-) ○HBe抗原:陰性(-) ○HBc抗体:陰性(-) ○HBs抗体:陰性(-) ○HBe抗体:陰性(-) ○DNAポリメラーゼ[cpm]:30以下 【肝炎ウィルス】 肝炎をひきおこすウィルスとして,A型(Hepatitis type A ;HA),B型(Hepatitis type B ;HB),さらに非A非B型(Hepatitis non A・ non B type)が知られている. 非A非B型は,輸血後肝炎の原因ウィルスで,長年,その本態が不明であったが,ようやく1988年5月,アメリカのカイロン社によって見つけられ,C型(Hepatitis type C ;HC)と呼ばれるようになった. このなかでB型肝炎は,近年,とくに問題とされることが多いので,以下で少し詳しく説明しておこう. HBウィルスは,急性肝炎,慢性肝炎.肝硬変,さらには肝癌へと進展させる原因となるウィルスである.しかし,HBウィルス感染者すべてが肝炎を発症し,肝硬変に直結するわけではない. HBウィルスは,通常のウィルスと違い,「キャリア」と呼ばれる健康(無症候性ともいう)保菌者が存在する.キャリアとは,ウィルスに感染しているものの,発病していない状態の人をいう. わが国では現在,約200万人のキャリアが存在するといわれている.キャリアの成立要因としては, (1)HBe抗原陽性の母親からの出生児への感染(垂直感染という) (2)乳・幼児期(2~3歳以下)における感染(水平感染という) の二つがあるが,前者が大部分を占めている.幸いにも1986年1月より,ワクチンと免疫グロブリンの注射による予防法が確立し(95%以上に効果あり),遠くない将来,HBウィルスが消滅するであろうとの明るい展望がもてるようになった. HBウィルス・キャリアの約10%が,肝炎を発症し,慢性化(慢性肝炎そして肝硬変)したり,ついには肝癌を合併していくものと考えられている. HBウィルスは,HBs抗原の存在する外被(surface)と,HBc抗原,HBe抗原の存在する内部の芯(core)からなる二重構造をしている.各々の抗原に対して抗体がある.このHBウィルス関連抗原・抗体の意義をみておこう. ①HBs抗原陽性の場合 HBウィルスに感染していることを示す.肝障害がある場合には,キャリアよりの発症であり,肝炎が持続する可能性が大きい. HBs抗原陽性者は,日常生活の注意として,a)自分の血液(生理,けがなど)は自分で処理・処置すること.血液が付着した物は焼却する.b)かみそり,タオル,歯ブラシは貸借しないこと.c)供血しないこと(日赤へ献血した場合,スクリーニングされて輸血用にまわされないシステムになっている).d)乳幼児に対して口移しで食べ物をあげないこと,などに気をつける必要がある. ②HBs抗体陽性の場合 以前,HBウィルスに感染したことを意味している.再感染の心配はない.通常HBs抗原は陰性であるが,まれに陽性のことがある.HBs抗原に亜型があるためである. ③HBc抗体陽性の場合 HBウィルスの感染を意味する.抗体価が高いとキャリアである可能性が大きい. ④HBe抗原陽性の場合 HBウィルスの活動性を示す.ウィルスの増殖がさかんで,感染力は強い.肝障害をみる場合,活動型であることが多い.HBs抗原も陽性である.HBe抗原陽性の母親よりの出生児,HBe抗原陽性者の家族(特に乳幼児や配偶者),HBe抗原陽性血液の被感染者は,HBワクチンの接種対象者である. ⑤HBe抗体陽性の場合 HBs抗原陽性のみならず陰性者にもみられる.HBウィルスの量は少なく,感染力はきわめて弱い.肝障害はみとめても落ちついた状態(非活動型)であることが多い. ⑥DNAポリメラーゼ陽性の場合 多量のHBウィルスの存在を意味する.HBs抗原は陽性で,HBe抗原も陽性のことが多い. [2003.2.8更新] 血液物知り事典へ |