りぶらりだいあり

”館シリーズ”第1期最終巻！というふれ込みで，本の厚みも当社比1.5倍ってカンジの綾辻ミステリーを読んだ。

○ストーリー
雑誌編集者の江南（コナン）は，記事とのタイアップイベントで，”時計館”にこもって交霊術の会に参加する。かつてこの館に住んでいた美少女，参加者たちの少年時代の思い出，そして悲しいまでの父の愛，棺に刻まれた謎の詩，すべてがつながったとき，連続殺人の幕が開ける。

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「そこまでやっちゃいましたか！」という感想の作品だ。”本格ミステリー”とされている綾辻行人だけど，”館シリーズ”はいつもの反則技が半ば公認だし，この作品は幻想小説ばりのロマン派だ。結末はもう映画ばりのスペクタクル。

例の反則技があることを前提にすると，この作品のトリックは1個だけだ。それがまた壮大で，確かに聞いたことがないもの。うーん，色んな意味で桁外れだ。

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交霊術イベントに参加する若者たちの少年時代の思い出が，あるキーになっている。ところが「ああ，思い出したぞ！」って言った途端，ぼかりっ！！って殴り殺されちゃったりで，読者はいらいらする。

でもよみがえる少年時代の夏休み，白い服の美少女の思い出など，なかなかツボを心得た道具立てとなっていて，殺伐としたストーリーに，甘い香りを漂わせることに成功している。

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例によって殺人は矢継ぎばやに行われる。登場人物も少なくないので，あまり感情移入をする間もなく，ばたばたとやられてしまう。毎回ながら，ここら辺がもったいないような気がする。ミステリーを読んでいる以上は，「命を大切に」などと言うつもりはさらさらないが，人物造形をちょっと行うことで読者が「殺させないで！」と思うようにしむけることは可能だと思うのだが・・・

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読む順序と作品発表順が一致しなくなってしまったけど，次は「人形館の殺人」を読む予定だ。パターンが見えてきたけど，どんな驚きが待っているのか？