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カテゴリ:びしびし本格推理
綾辻行人の「囁きシリーズ」の第3巻を読んだ。
○ストーリー 兄が死んだ--その報せで帰郷した翔二が知ったのは,兄の死が事故死,自殺,他殺いずれとも判別つかないということだった。兄がかつて通っていた塾の講師だという人物の手を借りて,翔二は,兄の友人たちを訪ね歩く。しかしそれと時期を同じくして,その友人たちが次々と同じような手口で殺され始める。この連続殺人犯の目的は,かつて事故で死んだ少年の復讐なのか?15年ぶりに町を訪れたサーカス団の謎とは? -------------------- 「囁きシリーズ」は,封印された記憶をキーとした,ホラー風味付けの推理小説のシリーズだと言えよう。「緋色の囁き」は女子高が舞台で,ゴシックホラー的な色合いが強く,「暗闇の囁き」は別荘地が舞台で,モダンホラー的な色合いが強い。この「黄昏の囁き」は,日本の地方都市を舞台にしており,町には定期的にサーカス団が訪れ,とやたら昭和の匂いがする。そのため,どうしても江戸川乱歩の「少年探偵団」のイメージが重なる。 そうした色合い,イメージの差のためだろうか,この作品は,シリーズの前2作と比べると,全体的にチープな雰囲気がつきまとう。厳格な父親,優秀な弟に反発して医大を中退する兄,わずか15年前の事故をすっかりと忘れている町の人々,20代半ばの青年たちを次々と(楽々と)殺害する犯人,そしてサーカス団。 もう少しひねれば,セピア色の物語にできたと思うのだが,あっさりと現代の物語にしているために,多くの道具立ての粗っぽさが,不自然さとして表面に出てしまっている。 -------------------- 綾辻作品の主人公たちの特徴として,事件に巻き込まれてしまって,あがいているだけで役に立たない,というものがある。焦燥感や,支配への反発を描く分には有効な設定だろうけど,あまりに主人公たちの能力が低いので,現代の小説としては,ちょっとなんとかしてもらいたい,と思う。 いまさら神の代理人たる”名探偵”に登場してもらおうとは思わないけど,ただの人だって,それなりにできる範囲でできること,ってあると思うんだよな。 もう少し,人のチカラを信じてくれてもいいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.11.13 13:39:38
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