|
カテゴリ:どきどきミステリー
またまた『王様のブランチ』で紹介していた本を読んでみた。
○ストーリー 娘を1人で育てる女性刑事の啓子は,怒り出すと口をきかなくなる癖のある小学校6年生の娘・葉月の性格に悩んでいた。そんなおり,かつて啓子が検挙した男が出所し,ホームレスとして彼女たちの住む街に流れてくる。果たして男の目的は・・・ ------------ 更生保護施設,消防署,警察,救急隊と,少しだけ変わった職業の主人公が登場する4つの短編で構成されているのが目新しい。 ただ残念なことに,それ以外に特徴が見当たらない。 読んでいて,「これってミステリー?」と疑問を抱いてしまった。沼田まほかるの作品が,純ブンガク的なテンションの高い心理描写に走っているのに比べて,この作品はあまにりも淡々と小市民の日常を描いていて,NHKのドラマのような優等生っぽい作品だった。 ------------ 一応はミステリーなんだけど,善意,親切,心遣い,男気にあふれている。またそうした感動的な結末への伏線が,かなり見え見えなので,逆に「まさかね」と思っていることが結末だったりすることが多い。 きっと作者は本当にまじめな人なんだと思う。ただそのために,作者,作品,主人公のいずれも印象に残らない結果となっている。 なんで21世紀の今に,こうした作品が書かれ,ミステリーとして売られているのかがよく分からない。 そうした驚きだけはある。 ------------ 各編について簡単に感想を述べる。 「迷い箱」:出所者の更生支援施設を経営する結子は,更生させたはずの碓井の自殺未遂を知り動揺する。だが碓井が自殺を図った日付の真相を知ったとき彼女は・・・出来すぎと言うか,分かりやすいと言うか,昭和のドラマだよなあ。 「899」:消防隊の諸上は火事の報告を聞いて動揺する。それは彼のアパートの隣家で,彼があこがれている女性・初美の家で発生していた。彼らは初美の家に到着するが,逃げ遅れているはずの乳児の姿が見えなかった・・・あの人物は実はスーパー消防士?なんだかキャラがちぐはぐで,リアリティが希薄。 「傍聞き(かたえぎき)」:女性刑事・啓子の隣の老女の家に泥棒が入る。管轄署では複数の案件が発生しており,その捜査はなかなか進まなかった。そんな中,啓子の娘・葉月が取った行動とは?・・・この短編が成立する状況って,ひじょうにレアな条件だよなあ。それにしてもメンドクサイ人たちだ。 「迷走」:暴漢に刺された男は,たまたま彼らと因縁があった。男を乗せた救急車は,なぜか病院に入らずにその周辺を迷走し始める。その謎の行動は?・・・唯一ミステリー,そして小説としてハッとさせられる部分のあった短編だ。でも隊長は高倉健なので,やはり昭和の香り。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.08.28 09:46:28
コメント(0) | コメントを書く
[どきどきミステリー] カテゴリの最新記事
|