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カテゴリ:がちがちハードボイルド
新野剛志のずしんと重いサスペンスを読んだ。
○ストーリー 作家の中谷には姉が誘拐された過去があったことから,深夜に1人でいた若い女性を保護しようとする。保護された女性・亜樹は,捨てられそうになった母親を殺した,というあいまいな記憶があり,精神科に通う。そして2人を知る若者・和幸は,かつての仲間を集め,また〈教授〉と一緒に旅に出たいと思う。家族を失った人々が出会ったとき,そこに生まれるのは救済か?それとも? ----------- 〈スパイ学校〉〈建設中のロケット〉〈殺人の記憶〉〈黄金の里〉と,亜樹の幼少の頃の記憶を元に,書けない小説家・中谷が,ファンタジーのような謎を少しずつ解明していく。それと並行して,どうやら亜樹の幼馴染である若者・和幸が,昔の知り合いを訪ねて,旅の勧誘をする物語が描かれる。 主人公たちはそろって夢見がち,あるいは精神的に不安定なのだが,彼らが接する人々は現実や過去が見えている。小さなほのめかしや類推を重ね合わせて,主人公たちも,読者もゆっくりと謎の真相に近付いていく。 この過程は間違いなくミステリーで,最後のパズルのピースがかみ合わさった瞬間は実にスッキリする。 ----------- 一方で3人の主人公の周りでは人死にが多い。中谷は高校の時に姉を失い,そのトラウマもあり妻子と別居をしている。亜樹は母親が消え,伯父伯母に育てられたが,友人が自殺をして精神を病んでいる。和幸は天涯孤独だが,〈教授〉に育てられていた頃だけが良い思い出だ。 こうした設定は,ハードボイルド的で,中谷が立ち直り小説を書こうとする流れは,ひじょうに盛り上がる。けれどもあまりにもヘビーな設定は,純ブンガク的な領域に近い。 ----------- 中盤は,それぞれの不幸が悲劇の連鎖を起こしており,人間群像劇としてなかなかチカラがある。貫井徳郎や奥田英朗のクライムノベルを感じさせた。 発散して終わるかと思っていたら,かなり強引にまとめて終わらせた,という印象だ。新野剛志としても珍しい終わらせ方だと思う。 途中までの勢いはなかなかのモノだった。個人的には好きだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.07.25 14:55:48
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