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輝く翼・纏いし風

輝く翼・纏いし風

(纏いし運命と交差する心 優しき風)

  ~第1話「紡がれた運命の糸」~

暖かな陽光が窓から差し込んできて
そこに眠る少女の顔を照らしだした。
少女はうっすらと目を開けると周りを見るかのように軽く見回した。
そして起き上がろうと力を入れると体中に激痛が走りそのまま布団に埋もれた
少女を見ていた者がそっと近くによって少女を見ると
少女と眼が合い微笑んだ。

「あなたは誰ですか? …………」

少女に微笑んだ者が答える

「目を覚ましたのですね……」

たった一言こう言うだけで、近くのカーテンに近付いて開けた
少女が眩しそうに眼を細めるとその瞬間ささやくように言った。

「私の名前は、神崎 綾歌……この家に住む少年の叔母です」

綾歌は少女のそばによってそっと呟いた。

「貴女は、雷の事を庇って何かを受けて気を失った所を、雷がおぶって来たんですよ」

少女はそっと首を傾げるが、綾歌に尋ねた。

「ら……い……? 誰ですか? 」

少女の言葉に綾歌は微笑んで、答えた

「聞くよりも逢った方が早いでしょう……百聞は一見にしかずですよ」

綾歌の言葉に少女は驚いて口を噤んだ。
綾歌はそっと部屋から出て一言少し大きめに言った。

「雷! あなたが連れてきた子が目を覚ましたわよ」

綾歌の言葉に反応したかのように足音が聞こえてきた。
そのまま綾歌が少し待っていると普段着を着た少年……
雷が、何かをお盆に載せて歩いてきた。

「…………あの子に食事を用意しといたの? 」

綾歌の言葉に雷は頷いて綾歌のそばに来た。

「確かに用意したんだけどね……食べてくれるかどうかは分からないけど……」

雷がちょっと言ったが、気に止めずに綾歌が扉を開けて雷を促した。
ちょうどその時少女は包帯の巻いてあるのを見て少し落ち着きを取り戻していた。

「(あの時……私をいきなり庇おうとした人の事かな……それとも……今は分からない事を
考えていても答えは出ないですね……今の状態じゃどうしようもないので待ちましょう)」

少女がこんな事を考えてる時にちょうど雷と綾歌が入ってきた。
雷は少女の顔を見て少し考えたかのように近くの台に持っていた物を置いて言った。

「怪我の状態は大丈夫? それに…………」

雷が何もいえなくなると綾歌が言った。

「……貴女を助けるつもりだったのに逆に助けられた事に少し罪悪感に駆られていたのですよ」

綾歌の言葉で少女は少し考えて言った。

「……私を助けようとしなければあんな目に遭わないで澄んだはずですけど……
何故あの時私を庇おうとしたのですか?」

少女の言葉に雷は少し悩みながら言った。

「……多分君が危ない状態だと思ったから体が咄嗟に反応したんだと思うよ」

雷の意外な言葉に少女は驚きながら紡がれて行く不思議な糸の感覚を感じた。

「そうでしたか……もうあなたは引き返せない所まで手繰りよせられてしまったようですね
出来れば誰もまきこみたくはなかったのですが……どうしようもないです。」

少女のいきなりの発言に雷と綾歌が同時に驚いた。

「「えっ!? 」」

思いもしない発言に二人は同時に声を上げた。
少女はなおも言葉を紡いだ。

「驚くのも無理は無いでしょう……私もこんな事になるとは思いませんでしたから……
らいさまでしたか?」

少女の言葉に驚きながらも雷は言った。

「雷だよ……で、俺が何かあるのか?」

少女は少し躊躇いがちに言った。

「貴女と私の運命の糸が交差し紡がれ始めました……運命(さだめ)から逃れるすべは知りません……」

少女の言葉に雷が困惑していると綾歌が言った。

「それは……螺旋の宿命? それなら貴女は……」

綾歌の言葉に少女が驚きに眼を見張って言った。

「よく知ってますね、驚きました。こんな風に暮らしてる方でも知っているんですね」

少女の言葉に綾歌が返した。

「私は普通の人と違ってそういう知識を受け継いでますからね。仕方が無いでしょう」

綾歌の言葉に少女は目を見張ったがすぐに考えて雷を見た。

「あなたのフルネームを教えて頂けないでしょうか? 雷様……」

少女のいきなりの言葉に雷は少し驚いたが答えた。

「俺の名前は、閃罹 雷……雷と言ってくれてかまわないんだけど……」

雷の言葉を聞いて少女はそっと言った。

「閃罹 雷……とても良い名前ですね。しかしあなたが私のせいで
巻き込まれる事になってしまいました。……ごめんなさい」

少女がいきなり謝ってきた事に雷は驚いたが少し考えて言った。

「巻き込まれる事になった……別に気にしないよ」

雷の言葉に少女は泣きそうになっていた顔を驚きに染めた。

「えっ……気にしない……どうして……」

少女の泣きそうな顔と声にしどろもどろしながら答えた。

「気にしないよ。俺を助けてくれたんだからそれくらいのものがあっても不思議じゃないだろう
それに……人を助けた時点でその人の人生と自分に接点が生まれるのだからね……」

雷の言葉に少女は完全に泣き出して言った。

「だったら……あなたのその手を見せてください」

少女の言葉に雷は素直に従って少女に手をかざすと少女は雷の手を柔らかい手で掴んだ。
雷はその感覚に驚いたがそのままにしておくと少女がそっと手のひらを指でなぞった。
雷は不思議な感覚に意識が飛びそうになるのを抑えて少女にされるがままになっていた。
少女が、手を離すと不思議な感覚が少し残っていたがそれは包み込むような暖かさに変わっていた。

「これで逃れるすべは、あなたが私を殺さない限り絶対にありません」

少女の言葉を聞いた雷は少し考えたが、すぐに言った。

「逃れたいとは思わないよ。それに自分から言った事はちゃんとやり遂げたいから」

雷はそういって少女の顔を見た。
少女の顔はとても真っ白で美しいのにどこか不思議な神秘的な雰囲気を漂わせているが可愛らしかった。
雷は少し考えて言った。

「え~と……お腹空いてないか?」

雷の言葉に少女は答えようとして少し考えて言った。

「少しお腹空いています。……それと私の名前は、哀憐と申します。」

哀憐は雷に言うと雷は微笑んで言った。

「そうか……朝食だったら持って来といたから……呼ぶ時はさん付けの方が良いかな?」

雷の言葉に哀憐はそっと傾いて言った。

「朝食……? 今そんな時間なのですか?」

哀憐の言葉に雷は少し考えて言った。

「今は君が眠ってから2日間経過してるよ……それで今は朝だよ」

雷の言葉に哀憐は驚いていたがそっと笑って自分の髪の毛を切った。
雷は驚いていたが少女の髪は約1cmほど切った程度であった
哀憐が少し口の中で何かを呟いて不思議な物で出来ているようなペンダント(?)に髪の毛を
入れて雷の手に乗せた。
雷は驚いて哀憐を見ると微笑んでいた。
雷は少し戸惑いながらもそのペンダント(?)を首から提げると哀憐は嬉しそうにしていた。
たったそれだけだったが哀憐が普通に腕とかを動かしているのを見て驚いていると言った。

「普通に動かしているのに驚いてるのですか? これはちょっとした影響力が出たんですよ」

哀憐の言葉を不思議に思いながらも雷は時計を見て焦った。

「まずいな……綾歌さん後はお願いします。もう時間だから」

雷の言葉に綾歌は頷いて哀憐のそばに来た。

「? なにがまずいのですか?」

哀憐の言葉に雷は答えられずに鞄を持って家から出て行った。
そして代わりに綾歌が答えた。

「雷は学校ですよ」

「学校?」

「簡単に言えば、勉強する所ですよ」

「勉強する所でしたか……頑張っているのですね」

「そうですね……早く朝食を済ませましょうか」

「はい……」

綾歌の言葉で哀憐は朝食を食べた。
その後はベッドに入ったまま哀憐は考え事をしていたようだったが眠っていた。

この後に何が起こるかを知らないで眠っている。
それはある意味で不幸せであった。


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