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輝く翼・纏いし風

輝く翼・纏いし風

(纏いし運命と交差する心 優しき風)

 
 ~第2話「交わりし心」~

朝の靄の中
アスファルトの続く道を少し急ぎ足で、歩いていた。
時間的に急ぐ必要がないのに、急いでいる

「お~い!」

聞こえて来た声に雷は、ギョッとして走り出した。

「なんで、いきなり走るのよ!!」

その声の主は走って追いかけて来た 雷は後ろを振り返らずに、
全力疾走して学校の校門を潜り木の陰に隠れて呼吸を整えていると
後ろから来ていた声の主が、立ち止まり呼吸を整えていた。
その声の主はとても可愛らしい少女であった。
雷は呼吸を整えると少女の背後に回り込み言った。

「結羽華!あんな大声で呼ぶな!危ないだろう」

結羽華と呼ばれた少女は胸を押さえて驚いた。

「後ろから声かけないでよ」

結羽華は泣きそうな顔になってたが、雷が一言言った。

「それは俺が言いたかった事だ!普通なら俺が言うべき事だろう」

雷はそう言って昇降口に歩き出した 。
雷が歩き出すと少し遅れて結羽華がついて来たが、雷は気にせずに靴を履き替え
て教室に向かうと結羽華は反対の道を通って 教室に向かった。
教室の入口をくぐるとクラスの人達の顔触れを確認して自分の席として
割り当てられている場所に座った。

「(今日は始業式だな……まあ大丈夫だろう……)」

雷は少し時計を見て首を振った。

「(ちょっと早く来過ぎたな……)」

雷がこう思っていると小さな音が、どこからともなく響いて来た。

「(なんだろう? 嫌な予感がするな……何も起こらなければ良いが……)」

雷が内心思っているが、口に出さないで頭を振ってその考えを自分の内にしまい
こんでいるうちに時間になり始業式が始まって20分で終わり
自己紹介や色々な決め事等を振り分けて今日一日の日程は終了した。

……下校
たくさんの生徒達が、昇降口から校門を抜けて帰っている中
雷は辺りを警戒して少し離れた位置を歩いていると
突然空を焼くような音が聞こえてきた
雷は脊椎反射で、飛び込み前転の要領で避けて
すぐに立ち上がり周りの人が巻き込まれないように広い所に逃げた。
雷が避けた所には小さなクレーターが出来ていた。
しかし雷が逃げるとその動きに合わせて何かが飛んできた。

「くっ……この暑さは……炎……」

雷は地面に転がっていた少し大きめの石を拾って
振り返りざまに投げた。
石は炎の弾に当たり砕け散り炎も四散した。

ちょうどその頃……
哀憐は起き上がってただならぬものを感じていた。

「(この気配、私の所じゃない場所……!!!まさか雷様の所!?
助けに行かないと殺されてしまう)」
哀憐はベッドから降りてすぐに玄関を抜けて裸足で走り出した。
その様子を見ていた綾歌はそっと微笑んでいた。
哀憐は力や気配の流れから場所を感知して走っていた。

その頃学校では……
雷は相変わらず避けていたが、少しずつ息が上がっていく

「はぁはぁ……ッ痛(くそ、避けるので精一杯だ、どうすれば良い
……どうすれば)」

雷は一瞬油断していて足が縺れて前のめりに倒れた。
その瞬間雷の足は一瞬にして凍りついた。

「(足が凍った!? まさか)」

雷が上を見ると浮いている者が居た。
それは雷を見たまま手を上に掲げて炎の玉を形成した。
雷は近くに落ちている石を何とか3個取った。
炎の弾丸が雷目掛けて振り落とされる
雷は炎の弾丸に石を投げて四散させた。
浮いている者は、炎の弾丸をさらに飛ばしてきたが
雷は石を投げて防いだ。
しかし残りの石は1個相手は三つの炎の弾丸
雷は駄目だと思いながらも石を密集している時に投げると
すべての弾丸が爆ぜた。
浮いていた者はその爆風で少し吹っ飛んだが、すぐに体勢を立て直し
炎の弾丸を5個出現させて飛ばしてきた。

「(!? 駄目だ、もう避けられない)」

雷は観念して目を閉じてその時を待った。

「炎障壁」

しかし熱いと感じる事もなく痛いとも感じなかった。
恐る恐る雷は目を開けると信じられない現象が発生していた。
目の前に不思議な壁が生じて炎の弾丸を防いだからである
「な……なんだ?」
雷が周りを見ると校門の支柱の上に立っている人の姿が見えた。
それは裸足のまま走って学校まで来た哀憐であった。
哀憐はそのまま支柱から飛び降りて走った。
浮いている者の攻撃をすべて避けながら雷の所まで哀憐はきた。

「大丈夫ですか? あの……怪我は」

「大丈夫だよ そんなに気にしなくて良い」

「気にしますよ。……私のせいで巻き込まれたのですから」

「そんな風に考えなくて良い 俺が自分から選んだんだから」

「……っ……でも……巻き込まれたくはなかったはずです」

「泣かなくて良いから それに巻き込まれたとは思ってないよ
それより今は……」

「……っ……はい」

雷の言葉と共に哀憐は相手を見た。
相手は炎の弾丸を半端じゃない数形成していた。
哀憐はそれを見て愕然と仕掛けたが、雷の足の氷を溶かし
毅然とした態度で相手を見ていた。
雷は哀憐の横に立っていた。
哀憐は雷の方を見て驚いていた。
しかし敵はどんどん炎の弾を増やしていく

「この数だとこの辺り一面吹き飛ぶんじゃ」

雷が哀憐の方を見て言うと

「あの数だと確実にこの場所に大きなクレーターが出来ると思います」

哀憐は少し考えて言った

「でも、雷様の力があれば何とかできるかもしれません」

「俺の力?」

「私の心と雷様の心は常に影響を受けあっています」

「心か……」

「だから雷様の思いを私に流し込んでください」

「思い……みんなを助けたいとかか?」

「はい、強く強く念じ思う事が助かるために鍵です」

「……分かった。やってみる」

雷がそう言うと哀憐は精神を集中し始めた。
雷は頭の中にこの場所に居る全員を巻き込みたくない、
傷つけたくない、平和を壊させたくない
と強く強く思っていた。
哀憐は力の流れを形成し始めた。
雷は目を閉じていた
心はこの場所に居る人たちを助けたいと思っていた。
頭の中に不思議な糸のような物が具現化してきた。
その糸は哀憐の言っていた運命の糸の形成された姿であった
糸が重なり交わった。
哀憐は雷の力が感じられるようになってきた。
運命の糸がお互いに紡がれ始めた。
哀憐の中に爆発しそうな強さの力が流れ込んできた。

「(……っ!? 凄く強い力……これが人の思いなんだ……)」

哀憐の体から魔力があふれ出し始める。
魔力は意思があるように形を形成していく
雷はもう周りの事を感じ取れないくらい集中していた。
哀憐から溢れ出る魔力はこの学校の敷地すべてを包み込んでいく
哀憐が描いたイメージと魔力の形が一致しその瞬間微笑を含んだ唇から言葉が紡がれた。

「白障壁」

魔力は白い霧状の壁へと変化して覆い尽くした。
浮いている者は炎の弾丸をすべて振り落とすとやっと気づいて
壁に当たった炎の弾丸はすべて消滅して
浮いている者は驚いたが少し考えてニヤリと笑って消えた。

壁が消えると同時に雷も目を開けると哀憐が倒れてきた。
雷は哀憐が倒れないように支えると
哀憐が言った。

「今使った障壁は……力が凄く……必要なんです……だから……とても……疲れました。」

哀憐はそう言ってそのまま目を閉じた。
雷は哀憐を支えていた手はそのままで、空いている方の手で
上着を地面に敷いてその上に哀憐をそっと寝かせた。
それと同時に雷も力が抜けて倒れそうになった。

「(なんだ、力が入らなくなってきた)」

雷達の様子を見て人垣の中から結羽華が飛び出してきた。

「雷!! 大丈夫?」

「俺はまあかなり疲れてるが大丈夫だ……それよりも綾歌さんに連絡入れて迎えに来てもらおう」

「分かったわ 私が連絡入れるからちょっと待ってて」

「頼む……さすがにそんなに余力ないからな」

結羽華は不思議な形の無線機(携帯のような物)を取り出して
連絡を入れて何かを話した後に切った。

「2分で車に乗ってくるって、あと数人、人を連れて来るって言ってたよ」

「分かった……とりあえず校門まで移動するか……」

「そうした方が良いわね」

雷はそう言って哀憐をおぶって歩き出したがかなりフラフラしていた。

「雷大丈夫なの? きついんだったら私も手伝うけど」

「大……丈……夫……だ」

「大丈夫そうには見えないけど」

「いきなり力が抜けてな……体が崩れてしまいそうなのをどうにかしてるんだ」

「相当な疲労ね……学校が疲れたの?」

「そんな訳は無い……そこのクレーターの痕を作ったものとか避け続けてたらな」

「大変だったね」

「まあ、仕方ない事だ」

「まあそう言う事は後で話して、疲れてるんでしょう」

「悪いな、綾歌さんに聞けば分かるよ」

「お母さんに? 何で?」

「それも綾歌さんに聞け」

「そう、分かりました。」

「敬語似合わないな」

「いつもの話し方の方が良い?」

「さあな……さっさと行くぞ」

そう言いながらも雷は笑っていた。
校門に着くまでの間雷が、前のめりにならなかった所は凄かった。
校門に着くとちょうど綾歌さんが車から降りてきて哀憐を後ろの席に運んだ
雷はそのまま倒れそうになったが、連れて来ていた人の手によって車に乗せられた。
連れて来ていた人達は学校の校庭の後処理をしていた。
車は真っ直ぐに家に向かい3分後に着いた。
雷は結羽華によって部屋まで連れて行かれてベッドに入れられた。
その後結羽華は自分の部屋に荷物を置いて
綾歌さんは哀憐を部屋に寝かせて少し色々と確認した後に
居間に行って椅子に座っていた。
結羽華も居間に来て親子で話をしていた。


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