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カテゴリ:文学
106 「名画でみる聖書の世界」 <新約篇>
西岡文彦 (にしおか ふみひこ) 講談社 284頁¥1600 2000.10.15 初版第1刷発行 [目次] はじめに 1. 受胎告知 2. 東方三博士の礼拝 3. キリスト洗礼 4. 悪魔と奇跡 5. 山上の説教 6. 最後の晩餐 7. 裏切りと嘲笑 8. ゴルゴタへの道 9. 十字架のイエス 10. ピエタ 11. キリストの復活 12. 最後の審判 おわりに [内容] 西洋の絵画を鑑賞するときには、聖書の世界の世界を欠かせない。 それは、キリストや聖母マリアや洗礼者ヨハネや大天使ガブリエルが 出てくる絵だけでなく、一見ふつうの市民生活を描いたものでも、 聖書の中の約束事が隠されていて、それを知らないと大きな誤解 をする。たとえば画面に赤と青の女性があれば、それは聖母マリアである。 この本は聖書に関連する絵画を説明しながら、絵だけでなく、 画家を語り、聖書の世界を語り、神と人との関係を語っている。 [感想] テレビでよく紹介されるフェルメールの「天秤を持つ婦人」が、単に 女性が宝石の重さを計っているさまを表しているのだと思っていたら、 後ろの壁に「最後の審判」の絵が描かれていて、絵画全体が最後の 審判で人の一生になしたことが秤にかけられていることを示している ということを知り、まさに「目からウロコがおちる(パウロ)」気持ちでした。 この本で紹介されている273の絵画のうち、レンブラント最後の作品と いわれる「放蕩息子の帰還」(122頁)がいちばん好きです。 [頁のかけら] ○ やっと十字架のイエスが描かれるようになったのが六世紀。 九世紀頃からは聖書の記述に従って、聖母や聖ヨハネという 立会人の約束事も成立し始める。が、それでも十二世紀頃まで は、イエスは十字架の上で威厳を保っており、苦痛の表情はいっさい 見せていない。微笑さえ浮かべている。この超然としたイエスに、 苦痛の表情が見え始めるのは十三世紀になってからのことである。 ○ピエタの迫真の描写には、大きな二つの虚構がある。 ひとつは聖母の年齢である。イエスの母親にしては、このマリア は若過ぎる。むしろ妻にしか見えない年齢である。 その聖母の身長が、ミケランジェロのピエタのもうひとつの虚構である。 座った姿勢でこれだけの高さならば、立ち上がった聖母は、ゆうに イエスの二倍はあるだろう。にもかかわらず、頭の大きさはイエスと 同じである。こんな不自然なプロポーションであるにもかかわらず、 作品の見た目はきわめて自然である。 **************************************************** ランダム読書日記 by 行道はるか YUKUMICHI Haruka (2008.12.24 No.106) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.12.24 15:41:01
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