風呂敷の様にふと思った。物に合わせてどの様にも形を変え包み込んでしまうしなやかさ。 正に包容力的柔軟性。 風呂敷って案外いいなと。 人は知らず知らずの内に、がんじがらめに守り固執するような、 そのような人生に囚われていないだろうか。 手に入れるごとに地位や名誉や物質に囚われ翻弄され、山の様に積み上げているのは、黄金色に輝く金銀財宝ではなく、観るによっては瓦礫の山の光景かもしれない。 大切と思うものを分厚い鉄の塊の金庫で守り、それをまた、失わないように更に強固な壁で囲っていくような、内に向いた際限のない欲望。 鉄の金庫的なものなど、やっかいなものだ。 簡単にどこへでも持ち歩くこともできない。 周りに身内に、取り合いってこともまた起こる。 空っぽに捨てられて鉄の塊など、傍迷惑に場所を占領してしまうただの廃棄物に過ぎない。 そして、例えば金庫に物質を鉄壁な守りでしたとしても、人の心までは捕えておくことはできないのだ。 国家もまたそうだ。 失う恐れに幾重にも防御を施していこうと、がんじがらめに永遠に、人心を籠の鳥の如く捕えておくことはできない。 心不在にして物質に囚われると、失う恐れに苛まれ続けることになるのだ。 形を変え場所を変え、優しく包み込んでいく風呂敷。 必要以上に囚われず持たず、そして邪魔にならず、触りの優しさは、決して人を傷つけることもない。 必要に応じて取り出し、そうでない時には、そっと懐に仕舞っておくことができる。 魂もまたしかり。 この上なく自由な魂というものは、金銀財宝、名誉地位の比にならない価値を持つ。 時々に形変えながら、風呂敷の変遷こそが、その人の人生。 人生の終わりには、振り返る道すがらに想いを馳せて、その人が知る人生をそっと丁寧に折りたためばよい。 ジャンル別一覧
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