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・ウクライナの民衆は「平和とは壊れやすく長続きしないもので、社会と政治の絶え間ない混乱を前にすれば持ちこたえられない」と考えている。彼らは歴史から教訓を学び、社会的緊張を引き起こす原因を取り除こうと努力してきた。状況を放置すれば戦争が平和にとってかわり、権力者が自由を踏みにじることになると考えたからだ。
・EUの目的は、ヨーロッパ諸国と近隣諸国がともに重視する平和と繁栄のための永続的な枠組みを導入し、不安定と混乱を取り除くことにある。 ・ソビエト崩壊後の旧東側地域は、ウェストファリア条約やベルサイユ条約締結後の状況と同様に、強国と一連の無防備な新興小国との対立によって特徴づけられていた。ソビエト時代に構築された経済的・制度的つながりが体制崩壊後も温存されていたために、この地域でロシアが大きな影響力を持つのは避けられなかった。 ・国際的なエネルギー価格の高騰を追い風に、ロシアが移行期のトラウマから立ち直っている以上、ヨーロッパは、復活したロシアを前にした安全保障の詳細を明確に定義する必要がある。ロシアの(膨張主義という)長期的でシステマティックな問題に対して、自制を求めて圧力をかけるだけでは、ロシアが短期的に覇権を確立するのを阻止できない。 ・ロシアからのエネルギー供給へのヨーロッパの依存状況は今後ますます高まっていくと考えられる以上、柔軟な対応をとる必要がある。実際、戦略国際問題研究所(CSIS)の最近のリポートによると、すでに輸入天然ガスの44%をロシアからの供給に依存しているドイツは、北欧ガスパイプラインが完成すれば、輸入天然ガスの供給の80%をロシアに依存するようになる。 ・外交でものをいうのはパワーであって、パワーを形づくる者の動機ではない。この15年、アメリカとヨーロッパの政治家は、ロシアの行動にどう対応するかの基準を、クレムリンが改革路線を進めているかどうかに求めてきた。民主主義と市場経済の発展に取り組めば、ロシアは平和的な発展を遂げるという認識を政策の基盤としてきた。こうして欧米は、パワーバランスを重視する伝統的な外交への配慮よりも、マーシャルプランの経験を重視して、ロシアの改革路線の強化を最優先にしてきた。しかし、ロシアにとってもっとも重要だったのは、改革を進めることではなく、かつての支配地域における覇権を再確立することだった。 ・旧帝国地域での政治的影響力の強化に取り組みつつ、ロシアは東方へも目を向け、中国の台頭がつくりだしたアジアの新しいダイナミクスにもより積極的に関与するようになった。平和維持という名目で、ロシアはアブハジア、南オセチア、沿ドニエストルなどの旧ソビエトの不安定地域に軍事的に介入して事実上の間接統治を試み、欧米もこの動きに目くじらを立てることもなかった。実際、欧米はエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国を例外とすれば、旧ソビエト諸国が国際的地位を確立する手助けをほとんどしてこなかった。ベラルーシ、グルジア、モルドバ、ウクライナ、そして中央アジアの旧ソビエト諸国におけるロシア軍の活動もほとんど問題にされていない。モスクワは事実上帝国の中枢として扱われ、モスクワもそうモスクワもそう自負している。 ・現状で外部から政治的圧力をかければ、ロシアは行動を改めるどころか、むしろ現在の乱暴な路線をエスカレートさせていくだろう。クレムリンが権力を再確立している以上、ロシアは内部から変化するか、あるいは全く変化しないままだろう。 ・欧米がロシアに対する影響力を何も持っていないわけではない。プーチンも、従来のソビエト・ロシアのリーダー同様に、外部からの批判には敏感だ。諸外国はプーチン以上に攻撃的な指導者が登場しないように配慮しつつ、プーチンの間違った行動をもっと批判する必要がある。だが、そのバランスをとるのはむずかしい。 ・欧米の指導者たちは、民主主義からの逸脱、チェチェン政策、エネルギー資源を盾にした近隣諸国への嫌がらせに対してもっと明確にロシアを批判すべきだ。 ・エリツィンの改革政権さえも、ほとんどの旧ソビエト地域に、相手国の意向を無視してロシア軍を駐留させてきたわけで、現実的なロシア政策はこの点を踏まえたものでなければならない。 ・歴代のロシア外相は、旧ソビエト地域への介入を「近い外国」における平和維持活動と表現してきたが、こうした介入は実質的にロシアによる支配を意味し、現にロシア軍は、介入した地域で内戦を戦う勢力の一方に加担してきた。ロシアが近隣諸国における安全保障利益を持っているのは事実だ。しかし、ヨーロッパの平和と国際的な安定からみれば、そうしたロシアの利益が軍事的圧力や経済的圧力、あるいは一方的介入という形で満たされるのは好ましくないはずだ。 ・例えば、コソボがセルビアから独立するとして、ロシアがこれを先例として引き合いに出して、グルジアのアブハジア、南オセチア、アゼルバイジャンのナゴルノカラバフ、モルドバの沿ドニエストル、そしてウクライナのクリミアにおける分離運動を支援する口実とするのを許してはならない。そうしたロシアの支援は、(クレムリンに敵対的な)現地政府を不安定化させることが狙いだ。 ・これらの地域が短期的に平和を実現できるかどうかは、駐留ロシア軍を撤退させ、国内でおとなしくしているようにクレムリンを説得できるかどうかにかかっている。 ・ロシアと旧ソビエト諸国との関係を国際問題として捉えるべきだろう。何らかの状況の改善を期待するのであれば、対処を求めてクレムリンの善意に働きかけるしかない。ロシア内部の問題として捉えるのではなく、確立した外交政策のルールを適用すべき国際問題とみなすべきだ。 ・欧米は、ロシアの国内改革にばかり目を向けるのをやめ、ロシアの膨張主義への対抗バランスの形成を模索すべきだ。対抗バランスを形成する路線をとれば、ロシアによるエネルギー供給の停止というリスクをヨーロッパ各国で分散することができる。そうしない限り、ヨーロッパ各国は、エネルギー供給をめぐる合意をロシアと個別に取り付けようとし、結果的に他のヨーロッパ諸国の脆弱性を高めてしまう。もちろん、国益からみてロシアの攻撃的なエネルギー供給路線に対抗する必要性をどう捉えるかについては、各国に温度差がある以上、ロシアの攻撃的路線に対していつどのように反対するかについて、ヨーロッパが常にコンセンサスを形成できるわけではない。自国にとっては差し迫った問題ではない案件について行動を起こすことに抵抗する国も出てくるかもしれない。だが1945年以降、ヨーロッパに平和と繁栄をもたらしてきた集団安全保障の原則は今後も維持していくべきだ。メルケルは2006年11月、ポーランド首相との首脳会談で「集団エネルギー市場」の創設を提案したが、これはロシアを含めた全ヨーロッパのエネルギー安全保障体制の確立に向けた第 一歩として評価できる。
Last updated
2008.09.08 11:18:40
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