カテゴリ:ペテルブルクの暮らし
近代ロシアを代表する画家に
イリヤ・レーピンがいます。(詳しい履歴はこちら) 「ボルガ川の船曳人夫たち」(部分) …他にも、「クルスク県の十字架行進」など、下層民を描くことで 社会矛盾をあらわにする作品が多い。 彼が住んだ家が、ペテルブルクから北へ1時間ほど レーピノというところにあります。 (この地名はレーピンの名前から取ったもの。) あたりは静かな真緑の森。 そこにとんがり屋根の、 茶色い一軒家がたたずんでいます。 至るところにガラスの天井や採光窓が設けられて、 屋内はロシアの建物にしては珍しいほど明るい。 おそらく冬は相当寒かったと思いますが (暖房器具がいくつもあった) 描くための心地よい環境を追求したようです。 レーピンはある時期から手を傷め、 パレットを持てない状況に陥ったそうですが、 そのときには腰巻きパレットを考案して 描き続けたとか。 と、ここまでなら偉人レーピン像を イメージするだけで終わったのですが。 この旧居には、それ以上に 彼のキャラを物語るものがありました。 毎週水曜がお客を呼ぶ日だったそうなのですが、 使用人のいないこちらのお宅の原則はともかく 「自分でやれ!」 ということ。 まず玄関を入ると手書きの看板と大きな銅鑼が。 そこに書かれているのは、 「自分でコートと帽子を脱ぎ、 自分でコート掛けに掛けたら、 銅鑼を高らかに楽しげに タンタンタンと鳴らして主人を呼ぶこと」 食堂にあるのは巨大な丸テーブル。 おそらく中華料理屋のを真似て作ったのでしょう、 真ん中がくるりと回るようになっており、 さらに各々のお腹に当たる部分に引き出しが作られています。 なぜかといえば、ここでも「自分でやれ!」だから。 お料理は自分で丸テーブルを回して取るべし! 使い終わった食器はひとまず引き出しの中に 片付けるべし! もしうっかり「塩とって」とでも言ってしまったら、 罰ゲームが待っています。 罰ゲーム、それは、暖炉の上に作られたお立ち台に立って、 「なにかオモシロイ話をすること」 主人のレーピン自身ひっかかったらしく、 一生懸命演説している写真がありました。 その下で座っている女性二人がぜぇんぜん聞いてない風なのが なかなか笑える構図で。 二階では生前のレーピンが 雪の中を散歩する映像も公開されていました。 オモシロいことがあったら見逃さないぞ、とでも言いたげな、 茶目っ気たっぷりの瞳でニコニコ歩いていました。 これまでレーピンについては重い主題の絵を見るばかりで、 「きっと気難しい、暗い人だったんだろう」 と思っていましたが、どうしてどうして。 つらいもの、歪んだものを見つめて描きながら、 生活をユーモアにくるんで生きたその姿勢に、 逆に、重いものを見たような気がした一日でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/09/27 12:11:28 AM
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