『青春の門』
『青春の門』(筑豊編)五木寛之著を久々に読み返しています。この作品を初めて手にとったのは、まだかわいらしい(笑)少女(中学生)の頃でした。主人公の信介が成長していく過程の表現において思わず飛ばし読みしてしまいたくなるほど恥ずかしい気持ちを多く味わったのを覚えています。この小説を読むと、中学2年生の頃に福岡の田川というところから引っ越してきたある同級生の男の子のことを思い出します。中学生にしてはとても大きい男の子だったと思います。180センチ近くはあったのではないでしょうか?彼の家は私の家のちょうど裏側にあって、その年の2学期からクラスメイトになりました。その頃、「回覧板まわし」は私のお手伝いと決まっていたのですが、私の家は道路沿いに位置していたため、私は必然的に彼の家に回覧板をまわすことになりました。最初は「男の子は玄関に出ないだろう」と思っていたのですが、チャイムを押すと同級生の彼が出てくることが多く、ある時期から回覧板をまわすお手伝いが嫌になりました。理由を告げずに母親に言うと叱られたりしたものです。転校生ということで付き合い方が分からなかったのと、彼はまわりの同級生の男の子より少し大人びて見えたせいか、近所だというのに、私はなかなか彼に話かけることができませんでした。男の子という異性を少し意識しはじめた頃でもあったのでしょう。とある日の夕方、彼の家からワイワイに賑わう声がしました。それも2~3人ではなく、7~8人を超える勢いで声がします。クラスメイトと集まって騒いでいるのかな?と何となく中の様子が少し気になりました。そのまま私はピアノの稽古に出かけました。そして家に戻って来たとき、騒いでいた隣の家のお客さんがちょうど帰るところで、バッタリと出くわしました。彼の周りには同級生くらいの知らない人たちがいました。彼の友人の方が「誰?」と私とも彼ともなしに声をかけました。「今の中学校のクラスの人」と彼が下を向いて答えました。その返答で、彼の周りにいるのは「前の中学の友達なんだな」と私は悟りました。私はなぜかしらショックな気持ちを覚えました。その後、彼は卒業を待たずして引っ越しました。私は実は田川には行ったことがないし、同じ北九州市と言えどなかなか縁のない土地ですが、『青春の門』を読むと懐かしい気持ちになります。