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カテゴリ:フロン
槌田教授がフロン裁判の弁護士をやるなら私は検事をやろう。またもや
環境問題を考える というページに記載された怪しい内容の批判になりますけど (引用) 科学者の証言1には大きな間違いがある。科学者は、成層圏には極渦(西風)があり、これがエアカーテンのように南極成層圏大気を孤立させている、という。しかし、これは正しくない。それは西風がなぜ存在するのかを考えていないからである。実は、南極成層圏大気は、西風で孤立しているのではなく、逆に、西風の存在によって南極成層圏に低緯度の成層圏大気が流入していることが示される。 西風が存在するメカニズムは、温度風の関係で議論されます。 これは、気象用語集(極渦)の項に記載されている内容の引用を読んでいただければ、 気象学を学んでいる方は理解していただけるでしょう。 どうしてこれが孤立していないことの根拠になるのでしょうか? うーん、わからない。槌田先生は次のような議論を続けています。 地球は、1日に1回、西から東へ回転している。 ~~~~~~~~~~~略~~~~~~~~~~~~~ そこで、任意の地点の大気が赤道から極へ、つまり緯度が高くなる方向へ移動すると、大気の方が移働先の地点よりも早く動く。つまり、地表から大気を見ると西風になっている。 これとは逆に、極側から赤道側へと緯度が低くなる方向へ大気が移働すると東風になる。 ↑どこまで理解しているのかしりませんが例えば極向きに力学的な力が加わって 大気が運動する場合、これに対してコリオリ力が働くのでまっすぐにすすまずに 大気の流れはカーブを描きます。 やがて南北成分の大気の力がつりあって西風になりますね。 北極から赤道にむけてのキャッチボール等も参考サイトとして勉強になると思いますね。 これは気象学の常識であって、たとえば、上空の対流圏大気には、ジェット気流という高速(80メートル程度)の西風があるが、これは大気が赤道側から極側へ移動していることで生じたのである。 したがって、南極成層圏における西風の極渦の存在は、南極大気の孤立を示すのではなく、逆に、南極に低緯度の成層圏大気が流入していることを示している。 恐らくジェット気流に伴って生じる熱の交換過程を よく理解していないから生じた誤解でしょう。 普通次のように考えられています。 地球は低緯度のところと高緯度のところでは日射量が異なります。 そのため地球の南北には大きな温度傾度が存在し、 熱力学的に南北で不安定な状態が続いています。 この温度傾度を解消しようとして、地球のように回転を伴う大気では、 偏西風という巨大なシステムを形成します。 北半球における熱の輸送と偏西風は密接に関係しておりまして、 偏西風の活動の変化に伴って、本当に気象を学んでいる人間は、 熱の交換がどの程度なされているかを議論します。 一般的に偏西風のような巨大なシステムが南北に大きく蛇行したときに、 熱の交換がもっとも大きく行われるようになります。 ここが重要なポイントですが偏西風が強く蛇行する際西風は弱くなります。 従って西風が弱いほど南北の熱の交換は大きく行われるようになり、 西風が強いほど熱の交換が小さくなります。 これらの考え方を導入して北半球の熱のフラックスを考える際 東西指数という考え方がしばしば用いられます。 つまり偏西風が大きく蛇行するから熱の交換が大きく行われるのであり、 西風があることと熱の交換が行われること自体は同じ事柄ではなく、 気象の常識があるならば西風の状態で熱のフラックスを論ずるのが基本ではないでしょうか? 槌田先生の議論に戻りましょう。 西風は存在しているけど、春先に生じる極渦の周辺では極夜ジェットにはじまり非常に西風が強く発達しているわけで、どちらかといえば熱の交換が行われていないことを示す観測事実であり、西風の存在が大気を孤立させているという記述に何一つおかしいところはありません。 成層圏大気の移動では、高度によって大気の熱的性質(温位)が異なり、逆転層と同じ理由で、上下に混ざりあうことはないが、水平面内では南北にも東西にも激しく流れている。 等というのは事実ですが、春先の南極においては適用できない空論でしょう。 この大気の運動の原因は、太陽光の吸収と宇宙への放熱である。夏側半球の成層圏では、O2やO3が太陽光の紫外線を吸収して加熱されて軽くなり、対流園大気を吸い上げて上昇気流となり、夏極から赤道方向へ移動する。したがって、この大気は地球の自転により東風となる。 赤道を越えて冬側へ移動すると、逆に西風となる。冬側成層圏ではCO2による宇宙への遠赤外線の放射で冷却され、成層圏大気は重くなって下降気流となり、対流圏に流れ込むという成層圏大気の循環になっている(●図表.1)。 この図表1は、オクスフォード大学の教授ブリューワー氏の研究ですね。 ブリューワードブソン循環などといわれたりもしますね。 この循環自体は事実ですが、根本的に誤解していることとして、この図からわかることは、 南半球の長期的な傾向だけです。南半球の傾向だけを論じたいのでしたら、その図を用いて問題ないですよ。しかし、その図では南極におけるオゾンの特性は議論できないでしょう。 南半球と北半球というくくりで考えれば、どちらの大気も高緯度ほどオゾン濃度が高くて、どちらも春にオゾンの量が極大になり、秋に極小になるということしか確認できません。 ですが60度より緯度が大きくなると、大気の循環条件ががらりと変わりますし、 そこがオゾンホールというひずみになって現れているのです。 科学者がこのような基礎的な気象学の常識をどうして忘れてしまったのか。誰が最初に言ったのか。どうしてそれを信じ、多数で唱和することになったのか。「フロンがオゾンを壊す」という衝撃的な説こ魅せられて、見逃すことになってしまったのだろうか。 東西指数をご存じないのですか?どうして槌田教授は東西指数という気象学の常識を 忘れてしまったのでしょうか? いずれにせよ、オゾンホール発生前には、成層圏大気は南極に流れこんでいる。したがって、化学反応を考慮しなければならない必然性はなくなってしまった。 化学反応が大気中のオゾン濃度を支配するか、 または物質輸送がオゾン濃度を支配するかは高度によって異なります。 上中部成層圏のように、オゾンが破壊される速度が、比較的速いところでは、 オゾンの密度が反応によって規定されるから、反応を論ずる必要があるでしょうし、 高度や地域によってそんなものはまちまちです。 そのような疑問が残ってたら、誰もフロンがオゾン層を破壊しているという説を 信じたりしません。ノーベル賞受賞者の研究を否定するかには その研究者の努力と功績を十分に理解しなければいけません。 (フロン裁判は続きがあります。お楽しみに) 参考文献 1)気象学のプロムナード 大気の物理化学 新しい大気環境科学入門 2)一般気象学 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.06.03 19:20:33
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