おもいでばなし…1…
『おてんばの流したなみだ』
りっこ小学1年生のときの話です。
「りっちゃん、あそぼっ!」
近所の友だちさっちゃんが遊びに来ました。
ひとしきり、野原で花を摘んだり虫と戯れたあと・・・
「お母さんごっこしよう」ということになり、さっちゃんのうちへ。
さっちゃんの住む家は、工場の上にありました。
さっき摘んだ花をごはんにして、りっこはお母さん。
さっちゃんはお姉ちゃん。
「お母さんは、ちょっとお買い物に行ってくるね」と、
窓から、すとんと工場の屋根の上に下りると・・・
おそるおそる歩き始めたりっこ。
それは初めてではありませんでした。
ときおり、こうして工場の屋根に下りては
散歩を楽しんでいたふたりです。
ところが、その日は、いつもより少し遠くへ・・・
次の瞬間、ばりっ!!!
りっこは危うく転落するところ、
破れて穴の空いた屋根に
かろうじて腰で止まっていたのです。
突然のことに、ただ呆然とするりっこ。
それを見ていたさっちゃんが、恐怖のあまり大声で泣き出しました。
声を聞き、駆けつけた工場の人たち。
りっこは大人たちに助け出され、そのまま家に送られていきました。
その間の記憶は残念ながら、ないのです。
すぐさま、りっこ父さんが職場から呼び出されました。
男の人たち何人かで相談をして、りっこ父さんは屋根の修理を始めたようでした。
りっこは、家でひとり・・・
父さんが帰ってきた時、どんな風に怒られるのか、
どういって謝ったらいいのか…
子ども心にも、自分がしたことの事の大きさに、ただただ後悔するばかり。
夕暮れ近くになって帰ってきたりっこ父さん。
父さんはりっこの前に座り、恐い顔。
でも・・・・
「りっこ、落ちなくてよかったなぁ。
屋根はちゃんと直してきたからな。」
りっこ父さんは、そう言うと頭をそっと撫でてくれました。
りっこは、その時初めて泣きました。
涙が、次から次にこぼれて落ちました。
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【後日談】
当時のりっこもこの出来事を作文に書きました。
タイトルはこの「おてんばの流した涙」そのままです。
小学生のりっこらしく、あの時の気持ちを正直に書きました。
父を目の前にしたとき→「まるで手術をする時みたいな気持ちです」とか。
確か…「おかやまっこ」という岡山県の文集の佳作に
ノミネートされたところまでは記憶していますが
その後の結果などの記憶は…残念ながらありません。
そしてこの出来事の副産物がもうひとつ…
その後りっこは極度の高所恐怖症になりました。
このことがあったからだと確信しているのです。