おもいでばなし…3…『おてがらりっこ』 …火事場のなんとか… その昔・・・・ りっこの家は山の上にある旅館でした。 四季折々、木々の美しい山の奥に・・・ 両親と、住み込みのまかないさんと数人の通いのまかないさんと、 板場の人たちがもてなし・・・お客さんはそう多くなくて、 ゆったりとした時間の毎日だったような気がします。 あの頃の記憶は段々と薄れてきているけれど、 時折こうして思い返すようにしています。私がどんな子だったか・・・とか。 ある日の昼下がり・・・ どこからか白い煙とともに焦げ臭い匂いが立ちこめて。 「火事だっ!!」 悲鳴とともに、騒然として蠢くひとびと。 幸いにお客は1組で・・・ みんな全力で消火作業を始めました。 りっこは・・・ りっこ母さんから託された、まだ数ヶ月の下の妹を胸に抱き、 すぐ下の妹を引き連れて近くにあるもうひとつのレストランまで逃げていったのです。 りっこ、たったの4歳でした。 あの時の道のりは・・・・ 一直線のいつも歩き慣れた道。 どうやって辿り着いたのか覚えていないけれど、 (おかあちゃん、おかあちゃん・・)と呟きながらひたすら歩いた気がします。 火事は小火ですんだけど、たまたま遊びに来ていて、 消火作業に大活躍した母方の祖父が、唯一、足の裏を火傷したみたいでした。 火事で大変だったというのに・・・ 周りのにいた大人たちに褒められて 少~しだけ・・・嬉しかったりっこでした。 |