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おもいでばなし…4…


ふわふわり4

『おてがらりっこ』 …泥棒を捕まえる…

もう、おわかりのように・・・
りっこは幼少の頃から「しっかり者」でした。(自分でいうか~)
そんなりっこが、何と、泥棒を捕まえた!!!お話です。

りっこの家は小さな旅館。いろんな旅人がやってきます。

ある日のこと、りっこは朝から風邪っぴきでこたつの中でウトウトしていました。
子どもにありがちな・・・・目やにで目がガチガチになり開けられなくなっていて
うっすらぼやぁ~としか見えない視界。
すると・・・・
部屋の開き戸が、すーーーっと開いて
ひとりの若い女の人が足を忍ばせて入ってきました。
りっこに気付きましたが、りっこが眠っていると思ったのでしょう・・・
(だって目を開けたくても開けられない状態だったもの)
声をかけることもなく、何やら、引き出しやら戸棚の中やらをゴソゴソと探している・・・

その時、りっこの心の中はといえば・・・
(あら・・・従姉のお姉ちゃんが遊びに来たのかな?
よおし、りっこに気付くまで寝たふりしとこ)
でも、お姉ちゃんはとうとう何も言わず、部屋を出ていってしまいました。
何やら手には封筒を持って・・・
なんだか・・・無性にさっきのお姉さんのことが気になったりっこは、パジャマのまま起き出して、
りっこ母さんがいる帳場へいき、さっき見たことを話しました。
りっこはその時まで(従姉のお姉ちゃんが遊びに来てる。やったぁ~)と思っていたから、
りっこ母さんが不思議な顔をして
「来てないよ。・・・・あぁ、昨日から泊まってるあの若い女の人かな。そういえば似てるかも・・・」と
言うやさっと顔色を変えりっこが寝ていた部屋へ飛んでいくと
「お金がない」と言った時には
幼心にも大変なことが起きたのだと心臓がドクンドクンしました。
りっこに「お姉さんが本当に持っていった?」と確認するりっこ母さん。
りっこは「うん。」とうなずく・・・
母さんは父さんに報告して、話し合った末に・・・・
りっこはお姉さんの泊まっている部屋へと連れて行かれました。

りっこ母さんは、りっこを連れて二階の客室に向かい、
部屋の引き戸を開け
「失礼します」と落ち着いて言いました。

部屋の真ん中には炬燵がひとつ・・・
確かにさっきのお姉さんがそこにいます。
母さんは静かに話し始めました。
「先ほど、下の部屋に入りお金を持って行かれましたね。
この子が見ていましたよ。」
お姉さんの視線がりっこを見下します。
お姉さんはくすっと笑い「知りません」という・・・でも母さんは負けません。
「この子は嘘はつきません。封筒を持っていきましたね。返してください。」

今思えば、相手は大切なお客様。万が一間違いだったら・・・・と思うとぞっとします。

母さんは続けて言いました。
「もう、警察に連絡しています。もうすぐやってくるでしょう。今返してくれたら許してあげます。」
母さんの気迫に負けたのか、お姉さんは炬燵の中からお金を取り出しました。
そして、炬燵の上にパンッと投げる・・・・
母さんは「まだあるでしょう。」と更に言います。
ふと見ると、母さんの手は小刻みに震えています。

残りのお金はバックの中から・・・

母さんはすべてのお金を確認すると
「りっちゃん、下におりていいよ」と優しく言ってくれて
そのあとのやりとりのことはりっこは知りません。

が、それから・・・
少し大きくなった時、この時の話を母さんが話してくれました。

お姉さんは家出をしていてお金が一銭もなく泊まっていたこと。
本当は警察には連絡なんてしていなかったこと。
父さんが出ていかなかったのはお姉さんを怖がらせたくなかったということ。

そして、結局お姉さんの家に連絡を取り、両親に迎えに来てもらったということです。


今でもはっきり覚えています・・・・あの日のこと。
そして次の日、出入りの八百屋のおじちゃんが
「りっちゃんすごいなぁ~」と褒めてくれたことも・・・・

あの時のお姉さん・・・
どんな人生を歩いているのでしょうか。


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