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千夜の本棚 ネット小説創作&紹介

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2012.07.13
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カテゴリ:本棚  ギレイ
◎護衛、倒してどうする。

<1>

「言ってくれるな。いくらSランクとは言え、ばかにされては敵わない。俺達は冒険者ランクBだぞ。新人のDランクに負けるだと?」

戦う気まんまんの三人組。同じマークの入った古びたバンダナを腕に巻いている。

「なんかよくわかんないけど、売られたけんかなら買うぜ?」

獅子がソファーの背もたれを跳び越し三人の武人に対峙する。

ランクによる強さがどの程度なのかまだよくわからない獅子だが、力試しは大好きだった。

「けんか売ってんのはそっちでしょう」

睨むように女が言う。

「言っておくけど。私達、遺跡専門の冒険者でね。管理局ランクは全員Aよ」

 (↑うん。ほんと、言ってくれて説明が楽w)

もう一人の女が不敵に笑う。

「それって強いのか、儀礼?」

考えるのを諦めたのか儀礼を振り返る獅子。

儀礼はソファーに座ったまま硬直しているので獅子からは頭の後ろしか見えない。

「遺跡専門で冒険者ランクBなら、僕の父さんと同じ位」

声は普通に返ってくる。

「団居(まどい)先生ランクB?」

「冒険者ランクはね」

獅子が聞き返し、儀礼が答える。

ふぅ~ん、と何かを納得したように獅子はうなずく。

「世間知らずの坊や達は少し痛い目に合わないとわからないみたいね」

もう一人の女が細い鎖のついたハンマーのような物を回し始める。

「管理局内、武器の使用は禁止ですよ」

初歩的な事を儀礼に指摘され女はハンマーを落とす。

着地する前に男が飛び出した。

一対一で体術を交わす。手加減していた男が段々と余裕をなくしていくのがわかる。


<2>

「獅子、来る」

「ああ」

短い言葉で意思を交わす。

直後に二人の女が獅子へと襲い掛かる。

一人、二人、三人、また一人目。

代わる代わるに繰り出される攻撃に獅子は休む間もない。

「六」

儀礼が一言だけ。

瞬時に背後にいた相手の腹に獅子の後ろ蹴りが決まり、女が一人吹き飛ぶ。

壁にぶつかった女は大きく息を吐かされ、動けない。

動揺する残りの二人。

「四と十」

その隙に儀礼がまた口を開く。

右後方にいた女が獅子の低い回し蹴りに足をすくわれ、バランスを崩す。

突っ込んできた男を上方に高く飛んでかわすと、男は勢いを殺せず前のめりになる。

その背中を獅子が強く押してやれば転んでいた女に足を取られごろりとソファーの方へと倒れた。

その男の目の前に儀礼は手の中に隠れるサイズのスプレーを構える。

「チェックメイト」

シュッ と音がしたかと思うと、男の頭がガクリと垂れ下がる。

「ああ、ただの睡眠薬なんで心配ないですよ」

にこりと笑って儀礼は立ち上がる。

その場にもう怒気はない。

「この通り、ランクDに倒されるような護衛ならいりません。それに、獅子は黒鬼の息子ですよ」

『黒鬼』の言葉に室内の全員が目を見開く。

「なるほど、そうか。マドイ。ははっ、聞いたことのある名だと思えば。親子2代で見張り合いか」

皮肉った笑いで責任者は言い放つ。

その言葉が何か引っかかるが、今はのんびりしたくない。

「依頼完了だし、行こうか、獅子」

二人は管理局を後にした。

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千夜 作2012年9月27日(木)





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最終更新日  2013.05.06 21:39:36
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