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千夜の本棚 ネット小説創作&紹介

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2013.06.27
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カテゴリ:本棚  ギレイ
ギレイ 携帯用 目次へ

 安全が確保されたので、儀礼は庭へと出てきていた。
クリームたちはまた裏方へと戻ってしまった。
たまには楽しんでもいいと思うのだが、いろいろとやることがあるらしい。
例えば、先程の不審者の処理など。
獅子は気になる気配がなくなり、思う存分食事に集中しているようだ。

 日差しは出ているが、外は段々と寒さが増していっていた。
それでも、儀礼は庭の空気を吸い込む。
それから、何かを思いついたようににやりと笑って儀礼はディセードを見た。

「ねえ、ディセード。僕の手を見て。」
そう言って儀礼は右手を横に伸ばし、手のひらを上に向ける。
「ここに在る物、見える?」
何かを試すように、口の端を上げて儀礼は問う。

 言われたディセードは警戒したように眉を寄せる。
「わかんねえ。空気とかって落ちじゃないだろうな。」
ディセードが言えば、儀礼は笑う。我が意を得たりと言いたげに。
「この手の上にはかの有名なバカには見えないと言う布が……。」
儀礼が言い切る前にディセードが、その頭をはたいた。
「いてっ。」

「痛いわけないだろ、黒獅子に殴られて平気な奴が。」
楽しそうにディセードが笑う。
「それとこれとは別! 痛いものは痛いの。」
怒って、ディセードに食らい付くように儀礼は言う。
「こら、儀礼。お前、また人に突っかかって。迷惑かけてんじゃないだろうな。」
獅子が、儀礼に言った。

 怒っているわけではない。ディセードに警戒してるようだ。
儀礼にとってはやっと会えた友達だが、獅子にとっては突然現れた怪しい男だ。
間違ってはないと儀礼は思う。ディセードの正体はネットの超人、通称『アナザー』。
ただ、やはり儀礼にとっては恩人で、友人で兄のような存在。

「そんなことしてないよ。ディーが僕に迷惑を……。」
「かけるかっ。」
また、儀礼が言い切る前にディセードが儀礼の頭をはたく。
「やっぱお前が……。」
獅子が何かを言おうとするので、儀礼は遮って、さっきのように右の手のひらを上に向ける。

「ねえ、獅子。ここに何が見える?」
手のひらの上の空間を見るようにして儀礼は言う。
「右手だろ。」
そう言って、利香に呼ばれて獅子は歩いていく。
「ふふっ、ね。あれが獅子。」
儀礼は楽しそうに笑う。

「なるほどな。本当に素直な奴なんだな。あんまりからかうなよ。」
ディセードが笑うように儀礼に言う。
「だって、面白いんだ。」
くるくると、儀礼は離れていった獅子の小さな背中に指で落書きをする。

「ギレイ君、ここにいたの?」
リーシャンが知り合いと話し込んでいる。
一人になって不安だったのか、元気に儀礼に駆け寄ってくる白。

「白、これ見て。ここにあるもの、見える?」
儀礼はまた、右の手のひらを上に向ける。
その上に何かがあるように儀礼は見つめる。
「あ、火の精霊だね。ギレイ君の手に座って機嫌よさそうに笑ってるよ。」
にっこりと、嬉しそうに白が笑う。

儀礼はその笑顔から、次に自分の手のひらへ視線を移す。
「いるの?」
驚いたように言う儀礼。
「うん。」
大きく頷く白。

「始めまして、いつもお世話になっています。」
自分の手のひらに向かい、丁寧に挨拶を始める儀礼に白が笑う。
「ギレイ君が生まれる前からずっと一緒にいるって言って、笑ってるよ。」
おかしそうに白が笑う。
「本当? じゃ、いつもありがとう。僕を守ってくれてる精霊だね。」
「えっと……。」
白が困ったように少し言い淀む。

「お風呂の時もシャワーの時も一緒だから今さらだって。」
白は言いながら照れたように顔を赤くする。
「ああ、ありがとうね。助かってるよ。」
儀礼がそう言って笑った瞬間に、火の精霊の力が強くなったと、白は言う。
儀礼にはまったくわからない。

「いいの? ギレイ君、男の子の精霊だよ……。」
儀礼がいつも他人と風呂に入るの嫌がっているからだろう。
「いつもお湯を温めてくれるんだ。精霊に男とか女ってあるの?」
首を傾げて儀礼が聞いた。
言われて白の方が驚いたようにまたたく。

「そう言えば、あるのかな? 私は今まで見た目で判断しちゃってたけど……。」
そう言って、白は儀礼の手のひらを見る。
「人間みたいには決まってないって。何かに影響されて姿が変わってくことが多いんだって。周りにいる人とか。」
火の精霊に聞いたのか、そう説明する。
「え? あの……。」
何を聞いたのか、白が首を傾げてディセードに向き直る。

「世話になったなって、伝えて欲しいって言ってます。火の精霊が。」
言っている白自身、意味がわかっていないようで首を傾げている。
その姿がまたかわいらしい。

「そうか。お前か。」
そう言って、ディセードは儀礼の手のひらを見て、納得したように頷く。
「お互い、こいつの面倒見るのは大変だよな。」
ディセードが言えば、白が小さく笑った。
「その子も頷いてる。」
白も儀礼の手のひらを見て言う。

「悪かったな、大変で。」
口を尖らせて儀礼は膨れる。
《本当に、いつまでも子供みたいな奴だな。》
火の精霊、フィオが言い、
「ホント、その態度がガキだって言ってんだよ。」
ディセードが笑った。
二人の声が重なったようで、おかしくて、白もまた笑っていた。

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小説を読もう!「ギレイの旅」
350話この話と同じ内容です。


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最終更新日  2013.07.01 00:30:24
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