ギレイ――470名前のリスト
ギレイ 携帯用 目次へ【Aalto,Adil(アーデイル・アールト) Aalto,Daisy(デイジー・アールト) Aalto,Hana(ハナ・アールト) Aalto,Olive(オリバー・アールト) Aalto,Rovert(ロバート・アールト) Aaltonen,Adolf(アドルフ・アールトネン) Aaltonen,Braian(ブライアン・アールトネン) Aaltonen,Diana(ディアナ・アールトネン) Aaltonen,Quincy(クインシー・アールトネン) Aarne,Aimee(エイミー・アールネ) Aarne,Nikola(ニコラ・アールネ) Aaron,Alexej(アレクセイ・アーロン) Aaron,James(ジェームズ・アーロン) Aaron,Jim(ジム・アーロン) Aaron,Leo(レオ・アーロン) Aaron,zoe(ゾーイ・アーロン) Aattela,Angela(アンジェラ・アーテッラ) Aattela,Boris(ボリス・アーテッラ) Aattela,Konstantin(コンスタンティン・アーテッラ) Aattela,Marek(マルク・アーテッラ) Aavikko,Audrey(オードリー・アーヴィッコ) Aavikko,Patrik(パトリク・アーヴィッコ) Aavikko,Simon(サイモン・アーヴィッコ) Aavikko,Xaver(クサヴェル・アーヴィッコ)…………】 Aから始まる人名がずらりと並んだリスト。儀礼の資料の中にあって、4、5日に1回は儀礼がアクセスしている。『これは何の資料だ?』無数に並んだ名前の列に、アーデスは不思議に思って、それらの資料に詳しい『アナザー』へと訊ねる。『儀礼が将来、自分の子供には付けない名前だそうだ。』からかうような調子で、アナザーは答える。 リストはずっと下へスクロールしてもまだまだ先へと続いている。『苗字までもか?』ふざけた態度のアナザーに呆れたようにアーデスは言う。『ギレイに関わって、捕まったり、殺されたり、死んだりした人物の名前だよ。』今度は正直にアナザーは返した。『それは……こんな物、覚えていてもおかしくなるだけだろう。』『全部暗記してるんだってよ。ギレイは。』 儀礼は自分の兵器を管理局に使わせる時、相手の事を徹底的に調べさせる。それが、この名前を知るためでもあったのだろう。『気違いじみてる。』眉をひそめてアーデスは言う。 アーデスはもう、自分が殺した相手のことなどほとんど覚えていない。覚えられないほどの人を殺してきた。それを、儀礼は全てを覚えていると言うのだ。『そういう奴なんだよ。こんな物、作る必要ないって言ったって、聞きやしない。命の重さってものを背負ってるつもりなんだな。きっと。』分かる、とアーデスは眉間のしわを消した。共感したのは儀礼に、ではない。このアナザーという人物にだ。 こんなリストは作る必要などない。毎日、大量にそこに名が増えていくのを、数日置きに儀礼は確認している。そんな深い罪を、その少年一人で、背負う必要などないというのに。それなのに、それを背負おうとする少年だからこそ、アーデス達は心を引き寄せられる。不安定に揺らぎそうに見えながら、いつでも真っ直ぐで、その髪の色のように透き通るように綺麗な少年の心。 精霊たちが引き寄せられるのと同じ様に、多くの人間もまた、彼に引き寄せられる。魅力のある人間。そういうものなのだろう。『それより、カイダルの人身売買の組織のことだが、辿っていったら人体収集家に行き着いた。氷の谷に関わっているかは分からないがな。』アナザーの言葉に、アーデスは面倒そうに溜息を吐く。『そこまで調べろよ。』『データになってないものは専門外なんだよ。』当然というようにアナザーは答える。『仕方ない。こちらで探るか。』『女の方が侵入しやすいぞ。主のティーレマンは女にめっぽう弱い。集めているのも女性の標本ばかりだがな。』『悪趣味だな。』口の端に苦い笑みを浮かべてアーデスは鼻で笑う。世の中、そういう人間ばかりだ。 しかし、とアーデスは考える。アーデスの仲間の女性2人。ヤンは情報収集能力と、潜入などはできるが、いざという場合の攻撃力に欠ける。もう一人の、ワルツは、攻撃力はあるが、あまり情報収集には向かない。2人、ペアで送り込むのが妥当なところか、とアーデスはあごに手を当てる。『カイダル!? 行きたい!』 アーデスの頭の中に、幻聴が聞こえた。「……。」アーデスの護衛対象は随分と無茶苦茶な少年だ。しかし、情報を扱う能力はずば抜けている。 それに、美女にしか見えないという、容姿を持っている。何より、氷の谷に関しては責任者でもある。全権をアーデスに委ねてはいるが。『全権を』。その言葉に、にっこりとアーデスは意味深な笑みを浮かべた。 ***「氷の谷の人が関わってるかの調査? やるよ。」迷う間もなく、儀礼は答えた。アーデスの思惑通りで、思わず浮かびそうになる邪悪な笑みを爽やかな微笑みの下に隠す。「場所はカイダルです。金持ちの収集家、ティーレマン氏の家に客人として紛れ込んでください。ただし、常にヤンとワルツと一緒にいることが条件ですが。」「いいよ。それ位。二人が僕の護衛って事ね。」にっこりと嬉しそうに笑って儀礼は言う。「ええ。絶対に二人と一緒に。ドレスで。」爽やかな微笑みのまま、アーデスは言う。「えーっと、ドレスコードがあるから正装でって事だよね。」笑顔から、冷や汗を流して儀礼はアーデスの言う間違いを正そうとする。「いえ、女性物のドレスです。ティーレマンは女性に特別甘いらしいので。」にっこりとアーデスは微笑んでいる。「僕、やっぱり裏方に回ろうかな――」「やる、と言いましたよね。」 儀礼が断りの言葉を言い終える前に、アーデスが強い語調で確認を取る。「……はい。」仕方なく、儀礼はうなずいた。しかし、ドレスを着る意味がまったく持って分からない。単なる、アーデスの思いつきのいたずら心だとは、さすがの儀礼も考えが及ばなかった。←前へ■ギレイ目次■次へ→小説を読もう!「ギレイの旅」470話この話と同じ内容です。NEWVEL:「ギレイ」に投票ネット小説ランキング「ギレイ」に投票