サント・ステファノ・ロトンド教会のガイド・ツアーに参加しました。
ロトンドとはイタリア語で「円い」という意味ですが、
本当に円形の教会です。円形の建物というのは、
4世紀前後のローマ建築によく見られたものでした。
よって現存しているものは少なく、珍しいのです。
サンタンジェロ城(ハドリアヌス帝の廟)やパンテオン、
それからこの間行ったペルージャのサンタンジェロ教会などが円形です。
友人のF氏が教えてくれたばかりです。サント・ステファノ・ロトンド教会が完成したのは5世紀後半、
ローマ教皇シンプリキウスの時代のことでした。
名前のとおり、聖ステファノに捧げられたものです。
サンタ・マリア・マッジョーレ教会、サンタ・サビーナ教会などと
同時期の建築ですので、
同じ大理石が使われているのだそうです。
もともとは三重構造でしたが、
修復によってキュッと縮められて
現在は二重円形の構造になっています。
何度も修復されていますが、
一番有名なのは、
16世紀にグレゴリウス13世によって手が加えられたことです。
ポマランチョ(ニッコロ・チルチニャーニ)のフレスコ画が
円形教会の壁をぐるっと飾ることになったのです。
えーっとこれは実におっそろしいもので、見ているのもこわいです。
なんと題材がキリスト教迫害時代の、
殉教の様子が描かれているんです。
聖女アガタさんなんか両胸を切り落とされているんだから!
その他には腕を切り落とされていたり、犬に食われていたり、
舌を引っこ抜かれていたり。
そんな色々な仕打ちに耐えて、
それでも笑みをたたえている殉教者たちのフレスコ画、
一見の価値あります。
ところでここの地下遺跡というのが17世紀に発見されているのですが、
なんと、もともとカストロ・ペレグリーナといって
古代ローマ帝国時代に補助部隊兵の兵舎だったところなのだそうです。
それが2~3世紀にミトラ教の集会場として使われていました。
ミトラ教は今となっておどろおどろしい密儀宗教的なイメージがありますが、
それはたまたまローマ皇帝テオドシウス一世によって
4世紀に完全に滅ぼされてしまったからであって、
そうでなければきっと今も残っており、
あるいはキリスト教に変わって世界宗教になっていたかもしれないのです。
そうであったら、決して密儀宗教であったはずはないのです。
というのはガイドのマッシミリアーノくんの受け売りですけど。
ミトラ教は勉強したらとても奥が深いと思います。
ローマ帝国に及ぼした影響も大きいです。
さてさて、このあとわたしは
テルミニ駅から電車に乗ってイタリア北部のヴェローナに向かいました。
わたしは友人F氏と異なり、
国内を旅する、という機会がとても少なく、
電車の旅は久々の経験でした。
それにしても一人で電車に長距離乗るってのはわくわくします。
本当は乗り換えなしで行きたかったのですが、ちょうどいいのが無くて
16時50分ローマ・テルミニ駅発、
ボローニャ乗り換え、ヴェローナ行きのユーロスターに乗りました。
約4時間半かかります。
長距離電車に乗ると景色を見るのが楽しいのですが、
もう一つ楽しみなのが、本を読めること!
今回読んだのはいずれも絶版みたいです。
水上勉『五番町夕霧楼』(角川文庫)、
井上靖『白い風赤い雲』(角川文庫)。
両方ともとっても読み応えがあっておもしろかったです。
『白い風赤い雲』は確かアサカちゃんにもらったものです。
なんとどなたかが1969年4月23日に
この本を購入した時のレシートが挟まっていて、
この日がたまたま4月25日だったので運命を感じてしまいました。
ちょうど40年前に誰かがこの本を買ったのね…。
ちなみに定価130円でした。
『五番町夕霧楼』は戦後間もない京都の郭の姿が目に浮かぶ、
とても美しい作品です。
読んでいるうちに乗り換え駅のボローニャに着きましたが、
イタリアの地理に明るくないもので、
どこ行きの電車に乗ったらヴェローナへ行けるのかが分からず、
乗り換え時間も少なかったのであわてて駅員さんに聞きました。
結局余裕で間に合ったのですけれど。
定刻にヴェローナの駅(けっこう小さかった!)に着いたら
近郊のペスキエラ・デル・ガルダに一日先に滞在していた
マッテオとロッセッラ一行が車で迎えに来てくれていました。
ガルダ湖畔のペスキエラ・デル・ガルダまでは車で20分ほど。
Bed & Breakfast、AL DUGALEに泊まりました。