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カテゴリ:御蔵島・つげ
大宮市の廣島つげ櫛店へ行ってきました!廣島つげ櫛店は大宮駅の東口を出て、右の繁華街を抜け、線路沿いの道に出た辺りにあるトヨタレンタリースの隣にあります。トヨタレンタカーとマンションに挟まれて、昭和初期のような木造長屋が取り残されたようなお宅です。手書きの『廣島つげ櫛店』と言う看板が無ければ、櫛店には見えない普通のお宅です。 こちらは 日本職人名工会の廣島政夫さんの紹介ページです。 今日は、つげ櫛を買いたいと言う横浜のMちゃんと大宮駅でお昼に待ち合わせました。電話で「午後1時頃伺います」と伝えてあったので、まずは駅ビルで軽くランチ。その後小雨の降る中、駅から5~6分程歩いて着きました。呼び鈴を鳴らすと、ニコニコしたおじいさんが出迎えてくれました。この人が日本一のつげ櫛職人の廣島政夫さんです。奥様も後ろでにこやかに向かえてくれました。とてもホッとする暖かい雰囲気です。 『遠くから良く来たね。』 と、まるで孫でも遊びに来たかのように、玄関を入ってすぐの畳のお部屋に通されました。なにか、江戸時代を感じさせる様なお部屋でした。掘炬燵に腰を落ち着けると、早速、櫛が次々と出てきました。ここは、色々な櫛を試し梳きさせてくれて、その人に合った密度の櫛を薦めてくれます。櫛の歯は細かい程高級なのかと思いましたが、そうではないようです。その人の髪質に合った櫛歯の密度があるようです。 私は去年6月にも廣島つげ櫛店におじゃまして、長さ10cm、歯の密度8本/1cm の一番安い携帯用の櫛を5千円位で買いました。その時は11本/1cm、1万円位の櫛を薦められました。でも私は繊細な性格では無いので櫛歯を折らないか心配だったのと、粗歯の櫛から試し梳きしたのでいきなり11本/1cmの櫛で髪が梳けるか自信がありませんでした。その日は結局、予算の都合もあり、一番安い櫛を買って帰ったのでした。 ところが、帰って髮を梳いていると8本では、ちょっと物足りなかったんです。夏に海で塩焼けした上に、南の島の太陽にも焼かれて痛んだ髮を梳いても、気持ち良~く通るんです。そして痛んだ髪がツヤツヤしてきます。広がってバサバサだった髪がまとまって行くんです。鏡を見ると小顔になったみたい。手で髮を撫でるとツルツルします。つまり、とても痛んだ髪でも、櫛通りが良く、8本/cmの櫛では物足りない位、スカスカ梳かせるんです~。 髮を梳くのが、こよなく気持ち良~い あまり髪の手入れに豆じゃない私でしたが、この日から寝る前にこの櫛で髮を梳き、ゆったりした時間を過ごすのが常となりました。また、まったく関心のなかった浮世絵にも興味が湧き、那珂川町馬頭広重美術館にも行ってきました。 しかし、携帯用のつげ櫛では、寝る前のゆったりした時間を過ごすに物足りなくなってしまったんです。旅行に携帯するには十二分ですけどね。今日はもっと良い櫛を見て、良かったら買ってしまおうとやってきました。前回はケチって物足りなくなってしまったので、今回の予算は3万5千円。浮世絵の女性が使ってるような長い櫛が欲しいです 話は、畳の間の掘炬燵に戻ります。 江戸時代にタイムスリップしたようなお部屋で、様々な櫛を試着させて頂きました。櫛の話はもちろん、つげの美しい杢目の話、御蔵島の話などで盛り上がりました。櫛の試着は至福の時でもありました。自分の髪の手触りがどんどんサラサラになっていきます。髮を梳くこと自体が気持ち良く、頭皮も刺激されているのか頭がポカポカしてきました。自分の髪が美しくなっていくのを実感しながら、櫛にまつわる色々なお話もお聞きしました。櫛が毛先の痛んだ髪に引っかかった時は、ゆっくり梳くと絡まった毛先が解ける。現代人にこそ、1日の終りに髮梳くようなゆっくりした時を過ごして欲しい。優しく気さくな語り口は耳にも心地良いです。 櫛は1cmに8本、10本、11本、13本の歯の物がありました。中には平安復元櫛なんて櫛もありました。去年来た時は16本と18本の櫛も試させてもらえましたが今回はありませんでした。最近、廣島さんは13本の櫛を引くと縞模様の残像が見え、作るのが辛くなってきたんだそうです。それで名工会からの13本の注文はお断りし ているそうです。 短い櫛を何本か試着させて頂いた最後に長さ18cmの櫛が出てきました。深川利久。 これです浮世絵の女性が使ってる櫛っ お値段は4万8千円。1万円以上の予算オーバー。う~ん、どうしよう~。前に来た時に見せてもらった2万円台3万円台の櫛は出てこな~い。今日の予算を告げても、出て来な~い。前回見た櫛は売れちゃったのかなぁ。。。深川利久で髮を梳くと、 やはり長い櫛の方が、ず~っと梳き易いです。特に頭の後ろ側の梳き易さが全然違います。それに良い物は、出会った時に買わないと無くなってしまいます。考えては梳き、梳いては考え、悩みに悩みました。その櫛を友達に渡すと、彼女も「うわぁ~、、、」って絶句しています。私が財布を広げたり、へそくりポッケをのぞいたりして悩んでいると、 『作りたての櫛を試させてあげましょう。』って。 買ってしまいました。 買ってからもしばらくお話をしていました。御蔵島のこと、御蔵島のつげでブラシを作ってもらったこと。ブラシを作ってくれたのが、廣島さんのお弟子さんだったこと。御蔵島のつげは島つげと言って特別であること。島つげの、木とは思えない光沢は廣島さんも好きであること。でもその光沢は暴れる杢目から出来ており櫛にすると歯が欠けてしまうこと。それでもその光沢ある杢目が好きで、ご自分で将棋の駒を作ったこと。その作った将棋の駒も見せていただきました。 私も持ってきていた御蔵島のつげブラシをお見せしました。廣島さんは手にとり、『これは綺麗な虎杢ですね。安藤さん(ブラシを作っていただいた別府つげ工芸の4代目)は、良い仕事をしましたね。こんなブラシなら私も欲しい。』と言って下さいました。そして『これは一生の宝物ですね。大切に使ってください。』とも。 気が付くとお邪魔してから2時間が経っていました。あっと言う間に時間が過ぎていました。また来ます、とご挨拶をして帰路につきました。楽しいひとときを過ごすことが出来ました。御蔵島をきっかけの出会いに感謝です。 追記 何種類かの櫛は名工会でも通販できますが、可能ならぜひ大宮駅近くの広島つげ櫛店に足を運んでみて下さい。櫛の試着をさせてもらってから、ご自分に合った櫛を選ぶ事をお勧めします。ごく普通のお住まいなので電話してから訪問しましょう。 〒330-0843 さいたま市大宮吉敷町1-13 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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